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Natural Alternatives International, Inc. 対 Creative Compounds, LLC 事件

CAFC No. 2018-1295 (March 15, 2019)

−天然の化合物を用いた治療の特許適格性を明確にしたCAFC判決−

Natural Alternatives International, Inc. 対 Creative Compounds, LLC事件で、CAFCは、特定の用量の天然成分(ベータアラニン)を含む栄養補助食品をカバーする特許クレームが米国特許法第101条に基づく特許適格性を有する主題であるかについての問題を扱った。米国連邦地裁を覆して、CAFCは、ベータアラニンは天然物であるが、クレームは「天然物を含有する特定の治療製剤」であり、自然のままのベータアラニンでは不可能な方法においてこのような天然物を使用できると判断した。特に、CAFCは、治療のクレームに対する適格性の重要な要素は、「特定の生理的利益」につながる方法で「恒常性が克服される」か否かであると説明した。栄養補助食品の生理的利益によって、治療クレームとしてNatural Alternativesの発明が特許適格性を備えることが示された。

争点の特許はNatural Alternatives International, Inc.(以下、「Natural Alternatives」)が所有し、ベータアラニンを含む栄養補助食品に関する。ベータアラニンはアミノ酸であり、アミノ酸ヒスチジンと結合して筋肉中に見られるジペプチドを形成でき、形成されたジペプチドは筋肉収縮中の細胞内pHの調節及び疲労の発生に関与する。このようなジペプチドは筋肉の収縮と無酸素性作業能力の変動を調節する。本件特許は、「筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を増大させる」ことを目的とした、栄養補助食品中のベータアラニンの使用を記載している。

Natural Alternativesは、カリフォルニア州南部地区でCreative Compounds, LLC(以下、「Creative Compounds」)に対して特許権を行使した。Creative Compoundsは、訴答に基づく判決を請求し、地裁はこれを受理した。Creative Compoundsは、Alice Corp. Party Ltd.対CLS Bank International事件(573 US 208,217、2014年)に記載されたtwo-part testを適用し、主張されたクレームのすべてが米国特許法第101条の下で特許不適格性である主題に向けられ、且つ特許適格性を付与するのに十分な進歩性コンセプトを欠いていると主張した。米国連邦地裁はCreative Compoundに有利な判決を下し、Natural AlternativesはCAFCに控訴した。CAFCの多数意見は、(1)ベータアラニンを使用した治療方法(「方法クレーム」)、(2)栄養補助食品(「プロダクトクレーム」)、及び(3)人間の栄養補助食品の製造におけるベータアラニンの使用(「製造クレーム」)の3種類のクレームを扱った。

前述の方法クレームが特許適格性を備える治療クレームであるという判決の裏付けとして、合議体の過半数はVanda Pharmaceuticals Inc.対West-Ward Pharmaceuticals International Ltd.事件(887 F.3d 1117、CAFC 2018年)の判決を引用した。Vandaの判決では、特定の治療方法に関するクレームは特許適格性を備えるという見解が示されている。特に、Vandaのクレームは統合失調症患者を治療する方法で、最初に遺伝子検査を実施して患者がCYPD2D6のパフォーマーであるか否かを判断する方法を含んでいると、CAFCは説明する。その検査の結果に基づいて、特定の用量のイロペリドンが選択され、そして内部投与され、その結果として危険な副作用の危険性が減少する。Vandaの法廷は、当該クレームが特定の結果を達成するために特定の化合物を特定の用量で使用する特定の患者のための特定の治療方法に関するので、当該クレームはイロペリドンCYP2D6代謝と副作用との自然の関係に関するものでないと判断した。

CAFCは、Vanda事件をMayo Collaborative Servs. 対Prometheus Labs., Inc.事件(566 US 66、2012年)での最高裁判所の判決と区別している。CAFCは、自然法則の観察のみを要求したMayo事件で不適格とされているクレームとは異なり、Vanda事件のクレームは患者の状態を自然な状態から変えるために医師が薬物を積極的に投与することを要求していると説明する。Mayo事件のクレームは、測定された代謝産物レベルに基づいて実際の行動をとることを要求していなかったので、治療のクレームではなかった。Natural Alternatives事件における方法クレームに関して、CAFCは、これらのクレームは「既存成分であるベータアラニンを使用するための特許適格性を備える新規の方法に関するものである」から、「新規且つ有用なプロセスの特許を許可する米国特許法第101条の要件に明らかに該当する」、と述べた。

次に、CAFCはプロダクトクレームを取り上げ、プロダクトクレームが「天然物を組み込んだ特定の治療製剤に関すること」及び「異なった特性を持ち、自然のままのベータアラニンでは不可能である方法において使用できること」を理由として、特許適格性を有すると判断した。特に、これらのクレームは特定の投与量及び形態を記載している。この分析において、CAFCはFunk Brothers Seed Co.対Kalo Inoculant Co.事件(333 US 127、1948年)における最高裁判決と区別した。Funk Brothers事件では、クレームされた2種類の天然化学物質の組み合わせは、この組み合わせが常に持っていた効果と同じ効果を持ち、この種類の組み合わせはそれらの有用性の範囲の拡大をもたらさなかった。CAFCは、プロダクトクレームにベータアラニンとグリシンの両方を含めることによる相乗的な利益を示唆する証拠があるから、Funk Brothers事件はNatural Alternatives事件とは異なると結論付けた。

最後に、CAFCは製造クレームを取り上げた。CAFCは、ベータアラニンが「栄養補助食品」を作ることに使用されるというクレーム中の記載は、「自然法則もしくは自然の産物に関するのではなく、自然法則及び特定の特徴を備える人間の栄養補助食品の製造に関するプロダクトの新規な使用の適用である」と述べている。そして、該栄養補助食品は自然の産物ではなく、結果を達成するための補助食品の使用は自然法則に関するものではないと結論づけた。したがって、非天然栄養補助食品の製造に関するクレームは、自然法則または天然物に関するものではない。

Reyna裁判官は、部分的に同意し且つ部分的に反対しながらも、多数意見がとりわけ「栄養補助食品」という用語を使用して広範囲なクレーム解釈をしていること、そして明細書から「時間をかけて人間に投与すると、組織の機能を効果的に高める」等のクレーム限定を導入していることに疑問を唱えた。Reyna裁判官は、差し戻し裁判では、米国連邦地裁が正式なクレーム解釈を行い、101条問題を再検討することができると意見を述べた。

この判決は、天然の化合物を用いた治療にもかかわらず、米国特許法第101条の下でこのような治療についての特許適格性を備える可能性がある場合を明確にするのに役立つ。CAFCが説明したように、「我々は自然界に住んでおり、すべての発明は自然の法則によって制約されている」ので、我々は自然法則の禁止を過度に採用するべきではない。

この判決のポイント

CAFCはこの判決で、特定の用量の天然成分(ベータアラニン)を含む栄養補助食品をカバーする特許クレームが米国特許法第101条に基づく特許適格性を有する主題であるかについての問題を扱った。米国連邦地裁を覆して、CAFCは、ベータアラニンは天然物であるが、クレームは「天然物を含有する特定の治療製剤」であり、自然のままのベータアラニンでは不可能な方法においてこのような天然物を使用できると判断した。特に、CAFCは、治療のクレームに対する適格性の重要な要素は、「特定の生理的利益」につながる方法で「恒常性が克服される」か否かであると説明し、栄養補助食品の生理的利益によって、治療クレームとして特許適格性を備えることが示された。この判決は、天然の化合物を用いた治療にもかかわらず、米国特許法第101条の下でこのような治療についての特許適格性を備える可能性がある場合を明確にするのに役立つであろう。

報告者紹介

Michael Sandonato

Michael Sandonato is a partner resident in the New York office of Venable Fitzpatrick, and co-chair of the firm’s IP Litigation practice. An experienced trial lawyer, he has served as lead counsel in patent litigations in district courts across the country, the U.S. International Trade Commission (ITC) and arbitrations. Michael has been praised by clients as a “brilliant” and “strategic” lawyer and for his “excellent demeanor in front of judge and jury” (Chambers, 2018). He has lectured on patent law at conferences around the globe, and has spoken on panels along-side the Chief Judge of the Court of Appeals for the Federal Circuit and the Chief Administrative Law Judge of the ITC, as well as Judges from the Intellectual Property High Court in Japan and the IPR Tribunal of the Supreme People’s Court of China.

Brian Klock

Brian Klock is resident in Venable Fitzpatrick’s Washington, D.C. office, and is chair of the firm’s Patent Prosecution practice group. With extensive experience in all aspects of patent law, Brian has often defended clients in district court litigation involving patents alleged to have industry-wide impact, has negotiated numerous license agreements, and has more than 25 years of experience in patent prosecution, including USPTO contested proceedings. He has been recognized as a leading individual by IAM Patent 1000 for many consecutive years, and he was the recipient of a Burton Award for Legal Writing in 2011.

弁理士 大塚康弘

弁理士 大塚康弘
大塚国際特許事務所 パートナー副所長。平成11年弁理士登録。東京大学大学院・工学系研究科・電子情報工学専攻・博士課程修了(工学博士)。大塚特許事務所における実務チームのリーダーとして、知財高裁大合議事件を含む数々の訴訟においてクライアントを勝利に導いてきた。特許がわかる本(オーム社)等著書多数。画像処理、符号化技術、通信分野の特許、訴訟を得意とする。

弁理士 大塚和佳子

弁理士 大塚和佳子
大塚国際特許事務所 平成29年弁理士登録。千葉大学大学院・自然科学研究科・生物資源科学専攻・修士課程修了。医療機器メーカーにおいて製品開発及び臨床研究に従事。化学、バイオ分野、意匠、商標を担当する。

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