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AATRIX SOFTWARE, INC 対 GREEN SHADES SOFTWARE, INC 事件

CARC No. 2017-1452 (February 14, 2018)

−連邦民事訴訟規則12条(b)(6)の下での却下をCAFCが破棄した判決−

CAFCはこの判決で、米国特許法101条の下での特許適格性に関する追加の事実の主張を含む第2修正訴状の提出の許可を求める申立てを地裁が拒否したことを破棄した。CAFCは、地裁が拒否のための十分な理由を提示せず、記録自体が拒の根拠を含んでいないので、地裁による拒否は誤りであると判断した。また、CAFCは、米国特許法101条の下で、その発明が適格な主題を欠くことを理由とする連邦民事訴訟規則12条(b)(6)での訴えの却下の申立てを地裁が許可したことは誤りであると判断した。何故ならば、誤って拒否された第2修正訴状が、規則12条(b)(6)による却下を阻止しうる事実の主張を含んでいたからである。

Aatrix Software, Inc. (以下、Aatrix)は、ユーザがフォームデータを操作して可視フォーム及びレポートを生成できるように、データを設計し、生成し、コンピュータ上の可視フォームにインポートするシステム及び方法を対象とした米国特許第7,171,615号及び第8,984,393号を保有する。Aatrixは、615特許及び393特許を侵害するとしてGreen Shades Software, Inc. (以下、Green Shades)を訴えた。Green Shadesは、連邦民事訴訟規則12条(b)(6)の下で、請求原因を述べていないことを理由として訴状を却下するように申し立てた。具体的に、Green Shadesは、対象の特許のすべてのクレームが米国特許法101条の下で不適格であると主張した。これに対して、Aatrixは、却下の申立ては拒否され、クレーム解釈へ進むべきであると主張した。地裁は、Green Shadesの申立てを認め、クレーム1は無形(形を持たない)の実施形態の発明を対象としているので101条の下で特許適格性を欠く発明であると判断し、残りのクレームはAlice/Mayo事件の2ステップ分析を適用することにより発明的概念のない抽象アイデアを対象としているとの結論で、101条の下ですべてのクレームが不適格であると判断した。Aatrixは、地裁による有形実施形態の分析の再考と、規則12条(b)(6)の段階における101条の下での却下を阻止しうる補足の追加主張及び証拠を主張する第2修正訴状の提出の許可を求めて、決定を修正し破棄するよう申立てを行った。地裁はこれらの申立てを却下した。

控訴審の判決において、CAFCは、適格性の問題を法律問題として解決することを妨げる事実の主張(それが真実であることを前提とすれば)が存在しない場合にのみ規則12条(b)(6)の段階で特許適格性を判定することができると述べた。クレーム1に関して、CAFCは、無形実施形態を対象としているためにクレーム1が特許不適格であると地裁が誤って結論付けたと判断した。CAFCは、純粋データ及びデータが埋め込まれた一時的な信号に関するクレームは101条の下で不適格な主題を対象とするとこれまで判断してきたが、これらの判断の根拠は、クレームの主題が4つの法定のカテゴリ、すなわちプロセス、機械、生産物又は組成物の何れにも当たらないということであったと述べた。ここで、クレーム1はデータファイルを要件に含むもののデータ処理システムを対象としているので、有形システムに関連する。それゆえ、CAFCは、他のクレームと同様にクレーム1に対してもAlice/Mayo事件の2ステップ分析を地裁が適用すべきであったと判断した。

地裁がAlice/Mayo分析を実施した他のクレームに関して、CAFCは、第2修正訴状(上述のように地裁によって誤って提出を拒否された)が規則12条(b)(6)の下での却下を阻止しうる事実の主張を含むと判定した。

Aatrixの修正訴状に関しCAFCは、第2修正訴状の提出の許可を求めるAatrixの申立てを地裁が説明なしに拒否したと判断した。CAFCは、「正義がそれを要求するならば」裁判所は訴状の修正の許可を進んで与えるべきであるが、「不当な遅延、被告への不当な不利益及び無益な修正」のような根拠で修正の申立てを拒否してもよいと述べて、地裁による拒否が裁量権の乱用であると判断した。さらに、CAFCは、修正の許可を拒否することを正当化する根拠は、言明されてもよいし、記録から明らかにされてもよいと述べた。控訴審で、Green Shadesは、「争点のクレームは文面上無効であり、より注意深くドラフトされた訴状でもこの無効性を何ら変えない」ので、修正は無益であると主張した。CAFCは同意せず、提案された第2修正訴状は、地裁の特許適格性分析に直接影響しうる主張(それが真実であることを前提とすれば)を含むと判断した。特に、第2修正訴状は、特許発明の開発及び先行技術に存在する課題を記載して、クレームのフォームファイル技術に存在する発明的概念に関する主張を展開している。「Aatrixの特許発明による改良及び解決される課題」を対象とする特定の主張と、クレームされた発明がコンピュータ技術自体の改良に関するものであって従来の動作を実行する汎用コンポーネントを対象とするものでないという主張を第2修正訴状が提示するので、CAFCは、第2修正訴状が地裁による特許不適格性の結論に矛盾し、これらの主張を拒絶するための適切な根拠は存在しないと判断した。

また、CAFCは、完全に正式なものではないにしてもクレーム解釈を必要とするであろう101条の分析を行うために必要な限りは、地裁はクレーム解釈の争点を解決しなければならないと述べた。しかし、本件についてCAFCはクレーム解釈なしに規則12条(b)(6)の申立てを決定することの妥当性について疑義を呈したが、地裁の上述の他の誤りが地裁の判決を破棄する理由として十分であったため、この争点を扱う必要がなかった。

レイナ判事は、却下の申立てに関して判決を破棄し事件を差し戻す多数派の決定に賛同した。しかし、Aatrixが提案した第2修正訴状で提示された事実問題に関する多数派の議論に対して反対意見を出した。特に、多数意見が101条の審理の特性を法律的なものから事実が主要素となるものへシフトしようとしており、アリス審理の両方のステップで外的証拠の無尽蔵の導入の「ドアを開ける」リスクがあるとの懸念を表明した。さらに、多数意見が12条(b)(6)の手続きを本格的な事実的手続きに変換し、手続きの有用性を妨げると判断した。最後に、第2修正訴状の証拠が地裁によって考慮されなかったので、多数派が101条の分析において第2修正訴状で説明された主張を使用したことに反対した。

CAFCの判決は、101条の判定の基礎をなす事実的審理が存在し得ることを強調し、適格性の問題を法律問題として解決することを妨げると共に却下の申立てで適切に考慮される材料(訴状、特許及び法的着目の資料)に基づく反論ができない、説得力のある主張がある場合には適格な主題の欠如を理由とする規則12条(b)(6)の却下の申立てが拒否されるべきであることを結論付けた点で重要である。さらに、判決は、記録から理由が明らかでない限り、地裁は修正の許可の申立てを拒否する理由を示さなければならないと述べて、修正の許可を許すリベラルポリシーを強調した。判決はまた、却下の申立てを分析する際に、提案された第2修正訴状の主張にはっきりと目を向けた。その際に、判決は、適格な主題の欠如を理由とする却下の申立てに直面した特許権者は、アリス分析に影響を与える詳細な事実の主張を含むように訴状を修正することによって申立を退けられることを示唆した。これは、レイナ判事が反対意見で懸念を強調したように、不適格な主題を対象としたクレームを伴う訴訟を迅速に解決するための規則12条(b)(6)の却下申立ての有用性を著しく低下させる可能性がある。

この判決のポイント

CAFCはこの判決で、連邦民事訴訟規則12条(b)(6)の下で、訴状の却下の申立て理由が発明の適格な主題の欠如であっても、訴状に説得力のある事実に関する主張があれば、この申立てが拒否されることを判示した。特許権者は、アリス分析に沿って詳細な主張を含むように訴状を修正することで、適格な主題の欠如による訴状却下の申立てに対して反論しうる。

報告者紹介

Michael Sandonato

Michael Sandonato is a partner resident in the New York office of Fitzpatrick, Cella, Harper & Scinto, where he chairs the firm’s Electronic and Computer Technologies practice group and sits on the Management Committee. An experienced trial lawyer, he has served as lead counsel in patent litigations in district courts across the country, the U.S. International Trade Commission (ITC) and arbitrations. Michael has been praised by clients as a "terrific" lawyer (Chambers 2016) and a "winner" who “puts his clients’ needs first” (Best Lawyers, 2015). He has lectured on patent law at conferences around the globe, and has spoken on panels along-side the Chief Judge of the Court of Appeals for the Federal Circuit and the Chief Administrative Law Judge of the ITC, as well as Judges from the Intellectual Property High Court in Japan and the IPR Tribunal of the Supreme People’s Court of China.

Brian Klock

Brian Klock is resident in Fitzpatrick’s Washington, D.C. office, where he serves as the Administrative Partner. He also chairs the firm’s Licensing & Transactions practice group and co-chairs the firm’s Patent Prosecution practice group. With extensive experience in all aspects of patent law, Brian has often defended clients in district court litigation involving patents alleged to have industry-wide impact, has negotiated numerous license agreements, and has more than 25 years of experience in patent prosecution, including USPTO contested proceedings. He has been recognized as a leading individual by IAM Patent 1000 for many consecutive years, and he was the recipient of a Burton Award for Legal Writing in 2011.

弁理士 大塚康弘

弁理士 大塚康弘
大塚国際特許事務所 パートナー副所長。平成11年弁理士登録。東京大学大学院・工学系研究科・電子情報工学専攻・博士課程修了(工学博士)。大塚特許事務所における実務チームのリーダーとして、知財高裁大合議事件を含む数々の訴訟においてクライアントを勝利に導いてきた。特許がわかる本(オーム社)等著書多数。画像処理、符号化技術、通信分野の特許、訴訟を得意とする。

弁理士 大戸隆広

弁理士 大戸隆広
大塚国際特許事務所 弁理士。平成21年弁理士登録。東京大学大学院・情報理工学系研究科・数理情報学専攻・修士課程修了。システムエンジニアとしての経験を活かし、通信ネットワーク、情報処理、人工知能などのIT分野を得意とするとともに、半導体装置や自動車等の分野の経験も豊富である。数々の特許訴訟の経験を実務に活用している。

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