1. トップページ
  2. 米国連邦控訴裁判所(CAFC)判決
  3. 2017年
  4. General Plastic Industrial Co., Ltd. 対 Canon Kabushiki Kaisha 事件

General Plastic Industrial Co., Ltd.
     対 Canon Kabushiki Kaisha 事件

PTAB IPR2016-01357 et seq. (Sep 6, 2017)

−同一特許に対する追加のIPR申請を制限したPTAB拡大合議体の決定−

General Plastic事件において、David P. Ruschke審判部長を含んだ特許審判部(PTAB)の拡大合議体は、PTABが追加の当事者系レビュー(IPR)の申請を検討する際に考慮する要素に関する判断を行った。当初のPTAB合議体は、キヤノン株式会社(以下、「キヤノン」)の特許の無効を主張するGeneral Plastic Industrial Co., Ltd(以下、「General Plastic」)の追加のIPR申請を検討した際に、7要素のバランスがIPRの開始に否定的であると判断して、裁量による却下を行った。「特別な重要性」があると拡大合議体が評価した決定において、拡大合議体は、米国特許法314条(a)及び米国特許規則42.108(a)の下でPTABが裁量により追加のIPR申請を却下できる状況を7要素が(それが全てという訳ではないが)示していると判断して、申請の却下を支持した。

係争対象特許である米国特許第8,909,094号及び第9,046,820号は、キヤノンが特許権者であり、複写機で用いるトナーボトルに関するものである。キヤノンは、2015年に提起された米国国際貿易委員会(ITC)の手続において、General Plasticが’820特許及び’094特許を侵害したと主張した。General Plasticは、将来の侵害を禁止する自発的同意命令に基づいてITCの調査を終結するように申し入れ、2015年9月に同意命令が下された。General Plasticは、ITCでは特許の有効性について争わなかった。

ITCが同意命令を下したすぐ後に、General Plasticは、ITCの手続において権利行使された’820特許及び’094特許のクレームに対する最初のIPR申請群をPTABに提出した。PTABは、General Plasticの無効主張には実体的事項が不足しているという理由により、IPRの開始を拒絶した。その数ヶ月後に、General Plasticは同じ特許に対して5つの追加のIPR申請を提出した。これらのIPR申請は主として、最初のIPR申請群をPTABが却下した後に発見したとGeneral Plasticが主張する、異なる先行技術に基づいていた。

PTABは、米国特許法314条(a)及び米国特許規則42.108(a)の下で、追加のIPR申請を裁量により却下した。その際に、PTABは、次の7要素を考慮し、7要素がIPRを開始しない方向に大きく偏っていると結論付けた。

1.同一申請者が同一特許の同一クレームに対して以前にIPR申請を提出していたか否か。

2.2番目のIPR申請において利用されている先行技術について、最初のIPR申請の提出時に申請者が知っていた又は知っているべきであったか否か。

3.2番目のIPR申請の提出時に、申請者が、最初のIPR申請に対する特許権者の予備応答を既に受け取って又は最初のIPR申請における審理を開始するか否かに関する審判部の決定を既に受け取っていたか否か。

4.2番目のIPR申請において利用されている先行技術について申請者が知った時から2番目のIPR申請の提出までに経過した時間の長さ。

5.同一特許の同一クレームに対する複数回のIPR申請の提出間に経過した時間について申請者が妥当な説明を行っているか否か。

6.審判部の有限のリソース。

7.長官が審理の開始を通知した日から1年以内に最終決定を行うという、米国特許法316条(a)(11)に基づく要件。

PTABは、General Plasticが以前に無効を主張した同一特許の同一クレームに対して無効を主張しており、PTABが以前のIPR申請において指摘した欠陥を修復するためにGeneral Plasticが追加のIPR申請において無効主張を修正しており、新しい先行技術を以前に発見できなかった理由をGeneral Plasticが説明できていないと述べた。

その後、General Plasticは再審理を請求した。General Plasticは、米国特許法314条(a)の下でのIPRの開始を拒絶するPTABの理由付けによれば、事実上全てのケースにおいて、最初のIPR申請が却下された後に2回目のIPR申請を提出することが禁止されることになると主張した。General Plasticはまた、追加のIPR申請がUSPTOに対して以前に提示されたものと同一又は実質的に同一の先行技術や主張を提示している場合を別とすれば(この場合は米国特許法325条(d)によりIPR申請を却下する裁量がPTABに与えられる)、特許権者にとっての潜在的不利益は2回目以降のIPR申請を検討する際に考慮すべき要素ではないと主張した。

Ruschke審判部長は、「提示された争点の特別な性質を理由に」、再審理において合議体を拡大した。特に、PTABは、これまでに複数のケースで追加のIPR申請が争点になっていると述べ、審判部長は、「米国特許法314条(a)及び米国特許規則42.108(a)の下で審判部の裁量を行使する際に考慮される要素に関する検討を行うために」拡大合議体を設けることが正当化されると判断した。

拡大合議体は、2017年9月6日の決定において、General Plasticの請求を棄却し、本件において提示されたような適切な状況においてPTABが連続的なIPR申請を裁量により却下することができるということを確認した。拡大合議体の説明によれば、同一特許について最初に提出された1以上のIPR申請が却下された後に追加のIPR申請を提出することを当然に妨げる規則が存在する訳ではないが、拡大合議体は、そのような追加のIPR申請を裁量により却下する際に、上で概説した7要素を考慮することができる。拡大合議体はまた、連続的なIPR申請に起因する特許権者にとっての潜在的不利益は妥当な懸念事項であるということを確認し、「PTABによる複数の決定をロードマップとして利用することにより、レビューの認容につながる理由付けを発見するまで先行技術及び主張を戦略的に複数のIPR申請に分散する機会」を申請者に与えることについて注意を促した。

2017年10月18日、PTABは再審理を拒絶した上記決定を、先例になるものとして指定した。この指定は、審判部の見解に与えられることのある4種類の指定の中で最高ランクのものである。上記決定は、今年これまでにPTABが先例になるものとして指定した唯一のIPR決定であり、過去20年にわたりPTAB又はその前身が先例になるものとして指定した40に満たない決定のうちの1つである。

この決定が意味するところは、IPR申請者は、同一特許に対する連続的なIPR申請に関してPTABが実体的事項を検討することを当然に期待することはできないということである。IPR申請者は、同時期に又は兎にも角にも最先のIPR申請に対するPTABの開始決定の前に提出するIPR申請において、審理を希望する全ての無効理由を提示することを考慮すべきである。特許権者は、連続的なIPR申請がなされた場合、予備応答において、新たな無効主張を組み立てるために以前の手続における特許権者の応答やPTABの決定をロードマップとして利用して追加のIPR申請を行うことは不公平であると主張することを検討すべきである。

この判決のポイント

この決定において、PTABの拡大合議体は、同一申請者が同一特許の同一クレームに対して行った追加のIPR申請(無効理由を構成する先行技術は最初のIPR申請と異なる)について、裁量によりIPRを開始せずに却下した。拡大合議体によれば、追加のIPR申請を提出することを当然に妨げる規則が存在する訳ではないが、所定の7要素を考慮することによりIPR申請を裁量により却下することができる。本事件のIPR申請者は、拡大合議体の理由付けによれば事実上全てのケースにおいて追加のIPR申請を提出することが禁止されることになると主張したが、受け入れられなかった。この決定は、PTABにより先例になるものとして指定された。したがって、今後は同一特許の同一クレームに対して追加のIPR申請を行った場合、IPRが開始されることはあまり期待できないものと思われる。

報告者紹介

Michael Sandonato

Michael Sandonato is a partner resident in the New York office of Fitzpatrick, Cella, Harper & Scinto, where he chairs the firm’s Electronic and Computer Technologies practice group and sits on the Management Committee. An experienced trial lawyer, he has served as lead counsel in patent litigations in district courts across the country, the U.S. International Trade Commission (ITC) and arbitrations. Michael has been praised by clients as a "terrific" lawyer (Chambers 2016) and a "winner" who “puts his clients’ needs first” (Best Lawyers, 2015). He has lectured on patent law at conferences around the globe, and has spoken on panels along-side the Chief Judge of the Court of Appeals for the Federal Circuit and the Chief Administrative Law Judge of the ITC, as well as Judges from the Intellectual Property High Court in Japan and the IPR Tribunal of the Supreme People’s Court of China.

Brian Klock

Brian Klock is resident in Fitzpatrick’s Washington, D.C. office, where he serves as the Administrative Partner. He also chairs the firm’s Licensing & Transactions practice group and co-chairs the firm’s Patent Prosecution practice group. With extensive experience in all aspects of patent law, Brian has often defended clients in district court litigation involving patents alleged to have industry-wide impact, has negotiated numerous license agreements, and has more than 25 years of experience in patent prosecution, including USPTO contested proceedings. He has been recognized as a leading individual by IAM Patent 1000 for many consecutive years, and he was the recipient of a Burton Award for Legal Writing in 2011.

弁理士 大塚康弘

弁理士 大塚康弘
大塚国際特許事務所 パートナー副所長。平成11年弁理士登録。東京大学大学院・工学系研究科・電子情報工学専攻・博士課程修了(工学博士)。大塚特許事務所における実務チームのリーダーとして、知財高裁大合議事件を含む数々の訴訟においてクライアントを勝利に導いてきた。特許がわかる本(オーム社)等著書多数。画像処理、符号化技術、通信分野の特許、訴訟を得意とする。

弁理士 坂田恭弘

弁理士 坂田恭弘
大塚国際特許事務所 弁理士。平成16年弁理士登録。東京大学大学院・工学系研究科・電子工学専攻・修士課程修了。当事務所において13年以上にわたり、様々な技術分野での権利化及び訴訟を担当。特に情報通信(ICT)、移動通信、画像処理などの分野を得意とする。

  1. トップページ
  2. 米国連邦控訴裁判所(CAFC)判決
  3. 2017年
  4. General Plastic Industrial Co., Ltd. 対 Canon Kabushiki Kaisha 事件

ページ上部へ