1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2016年
  4. 3. In Re TLI Communications LLC Patent Litigation,

月刊The Lawyers 2016年9月号(第201回)

3. In Re TLI Communications LLC Patent Litigation,

Nos. 2015-1372, 1376, 1377, 1378, 1382, 1383, 1384, 1385, 1417, 1419, 1421 (Fed.Cir.May 17, 2016)

- アリス判決の下で、一般的な物理的コンポーネントの記載だけでは
特許適格性が満たされないことを示した判決 -

TLI(TLI Communications)は、デジタル画像を取得し、送信し、整理する方法及びシステムに関する特許権を、被告が侵害していると主張した。

被告は、携帯電話のような携帯デバイスからデジタル写真をアップロードすることを可能にする製品及びサービスを、生産、販売、または使用している。

地方裁判所は、特許が35U.S.C.§101に従って特許適格性のある主題をクレームしてはおらず、一部のクレームについては35U.S.C.§112に従って十分な構造を記載していないために無効であると判断し、訴えを棄却した。

CAFCは、特許がデジタル画像を整理して格納するという抽象的アイデアを超えるものをクレームしていないということについて、地方裁判所に同意し、§112の争点には踏み込まずに地方裁判所による無効判断を支持した。

係争対象特許発明は、デジタルデータに対して日付やタイムスタンプのような分類を手動または自動で割り当てることによって、サーバ上でデジタルデータを整理することを教示している。

一部のクレームはこれと同じコンセプトを規定しているが、「分析部」や「制御部」のような装置またはシステムを含んでいる。被告は、請求原因の主張不足を理由とする棄却の申し立てを行い、特許が特許適格性のない主題に関するものであると主張した。

地方裁判所は、クレームが「写真を取得し、整理し、分類し、格納するという抽象的アイデア」に関するものであることに同意し、棄却の申し立てを認めた。

控訴審で、CAFCは、特許は新規かつ有用な発明について取得可能なものであるが、抽象的アイデアは特許可能でないというかねてからの例外があると説明した。

最高裁判所のアリス判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int'l, 134 S. Ct. 2347 (2014))によるテストの下では、裁判所は第1に、係争対象クレームが抽象的アイデアのような特許適格性のないものに関するか否かを判定しなければならない。次に、裁判所は、クレームの追加エレメントが、個別的であれ順序づけられた組み合わせでも、クレームの性質を特許適格性のあるものに変形しているか否かを判定する。

CAFCは、クレームが抽象的アイデアを記載しており、クレームを特許適格性のある主題に変形する発明的コンセプトを、この特許は記載していないと判断した。

アリス判決の枠組みの下で、CAFCは第1に、係争対象クレームが特許適格性のない抽象的アイデアに関するものであるか否かを検討した。係争対象クレームは、画像を分類してそれを指定された分類により格納するというコンセプトに関するものである。

クレームは電話やサーバのような物理的コンポーネントを有しているものの、CAFCは、これらのコンポーネントは単に、デジタル画像を格納して整理するという抽象的アイデアを実行するための一般的な環境を構成するだけであると説明した。

CAFCは、コンピュータ機能に対する改良と、周知のビジネス実務に対して単純に従来のコンピュータコンポーネントを追加することとの間のコントラストに焦点を合わせた。

ここで、特許クレームは、新しい電話も、新しいサーバも、これらふたつの新しい物理的組み合わせも記載しておらず、迅速に実行可能かつ容易に追跡可能な既知の方法に関するものであった。それゆえ、CAFCは、特許クレームの方法が、アリス判決のテストの第1ステップの下での抽象的アイデアに該当すると判断した。

アリス判決の第2ステップに関して、CAFCは、特許クレームは、デジタル画像を格納して整理するという抽象的アイデアを、そのアイデアの特許適格性のある応用に変形するものではないと判断した。

CAFCは、有形コンポーネントの単なる追加は十分ではないと判断し、コンポーネントが、業界において周知かつ日常的に理解されているものを超えるものを伴わなければならないと述べた。

地方裁判所は、電話部、サーバ、画像分析部、及び制御部というクレームコンポーネントについて検討し、CAFCは、これらのコンポーネントが周知であって抽象的アイデアを特許適格性のある主題に変形するものではないことについて、地方裁判所に同意した。

CAFCは、明細書がこれらのコンポーネントを基本的かつ既知のものとして記載していることを指摘し、また、抽象的アイデアがどのように実行されるかを特許クレームが記載していないことを指摘した。

それゆえ、TLIは電話ネットワークに適用される抽象的アイデアについて特許を受けることができないと判断して、被告による棄却の申し立てを地方裁判所が認めたことを、CAFCは支持した。

この判決は、物理的コンポーネントの一般的な記載では、抽象的アイデアを特許可能な主題に変形するのに十分ではないということを再確認するものである。この判決は、CAFCによるアリス判決の枠組みの適用に関して、特許が特許適格性のある主題をクレームしていないと判断した例となるものである。

この判決のポイント

この判決は、アリス判決の枠組みの下で、物理的コンポーネントの一般的な記載では、抽象的アイデアを特許可能な主題に変形するのに十分ではないということを確認した。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2016年
  4. 3. In Re TLI Communications LLC Patent Litigation,

ページ上部へ