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月刊The Lawyers 2016年9月号(第201回)

2. Warsaw Orthopedic, Inc. 対 .NuVasive, Inc., 事件

Nos. 2013-1576, 2013-1577 (Fed. Cir. June 3, 2016)

- Commil最高裁判決に鑑み、CAFCに再検討が命じられた事件で、
誘引侵害を認めた以前の判断を支持したCAFC判決 -

ワルソー(Warsaw Orthopedic)及びその関連会社であるMSD(Medtronic Sofamor Danek)は、ニューベイシブ(NuVasive)を特許権侵害で訴えた。これに対してニューベイシブは、手術中に神経の存在を検知し、神経への距離を測定する方法に関する特許に基づき反訴した。

陪審員は、MSDのデバイスのユーザがニューベイシブの特許権を直接侵害し、MSDがその侵害を誘引したと判断し、控訴審においてCAFCはその判断を支持した。

その少し後に、誘引侵害を争点とするCommil USA, LLC対Cisco Systems, Inc.事件, 135 S. Ct. 1920 (2015)について最高裁判決が出された。

MSDは、最高裁に対して、CAFCの判決を破棄して事件を差戻すよう求める裁量上訴の申立てを提出し、MSDが誘引侵害に必要な知識を有していたことを、ニューベイシブが立証していないと申立書で主張した。

最高裁はMSDの申立てを認め、CAFCにて差戻審が行なわれた。しかし、CAFCはCommil最高裁判決に鑑みて以前の判決を支持し、地方裁判所の判決を再確認した。

CAFCは、Commil最高裁判決は、35U.S.C.§271(b)に基づく誘引侵害の判断を支持し明確にしたが、法律を変えたわけではないと述べた。すなわち、誘引侵害を証明するには、被告人が(1)特許権の存在を知っていたこと、および(2)誘引行為が特許権を侵害することを知っていたことが必要であるとした。

(1)に対しては、「故意に目をつぶること(wilfull blindness)」は実際の認識の代わりになり得る。CAFCは、全体の状況から侵害を誘引させる意図が推測できると判断する過去の判例を最高裁が確認したと説明した。

ニューベイシブの特許発明は、神経反応を引き出すために十分な強度に至るまで徐々に強くなる一連の電気パルスを送信することによって、神経への距離を測定するものであった。神経筋反応が検知される際に刺激信号を停止する。CAFCは、誘引侵害の基準、侵害に関する立証責任、及び関連するクレーム限定については陪審員が正確に説示を受けていると述べた。

CAFCは、Commil判決に鑑み、唯一の問題は、MSDが医師に対してニューベイシブの特許権を侵害するように指示していた事実について、MSDは認識していたか、故意に目をつぶっていたかの実質的証拠が陪審員に提示されたかの問題であると判断した。

MSDのデバイスは、神経が検知されると、全ての電気信号を停止せず、より低いエネルギーでパルスを送信するため、MSDは、自身のデバイスは侵害しないと考えていたと主張した。

しかし、CAFCは、特許クレームの「停止する」といった限定は、「前記刺激信号」を停止することを必要としているため、神経反応を引き出せる信号を停止することを意味すると説明した。また、CAFCは、クレームの文言は、「前記刺激信号」における「前記」により、明らかに神経反応を引き出せる信号を差しているものであり、全ての電気信号を指していないと説明した。

MSDは、神経から反応を引き出した後に、MSDのデバイスは、神経から反応を引き出さないところまで刺激信号の強度を低下させたと認めた。よって、クレーム文言により必要とされているように、神経から反応を引き出す信号は、反応が検知された直後に停止されていた。

CAFCは、この証拠に基づいて、MSDは自身の製品で誘引侵害を引き起こし、MSDの非侵害主張は客観的に不合理的であり、そしてMSDは侵害被疑デバイスがニューベイシブの特許発明の要素をすべて満たすことを知っていたと、陪審員は合理的に結論付け得たと判断した。

よって、Commil判決に鑑みて再検討した結果、CAFCは、直接侵害及び間接侵害を認定し、MSDがニューベイシブに、判決後の販売に関して継続的な使用料の損害賠償の裁定を下した地裁判決を再確認した。

この判決から、被告の製品が直接侵害すると判断された場合に、必然的に誘引侵害が成立することを示唆しないことに注意すべきである。CAFCは、誘引侵害の故意を立証するために、原告は、被告の非侵害の主張が不合理であることを立証すれば十分であると述べた。

この判決のポイント

この判決は、Commil最高裁判決後の、誘引侵害に関するCAFCの考え方を示す。この判決は、根拠のない非侵害抗弁で誘引侵害の基準となっている認識要件を否定できなかった状況の一例を示している。

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