月刊The Lawyers 2016年7月号(第200回)
1. Sport Dimension, Inc. 対 The Coleman Company, Inc. 事件
No. 2015-1553 (Fed. Cir. April 19, 2016)
- 意匠特許の保護対象について判示した判決 -
コールマン(Coleman Company, Inc.)は、救命胴衣を含むアウトドア・スポーツおよびキャンプ用品を販売している。コールマンは米国意匠特許D623,714号(D'714特許)を所有する。D'714特許は図1に示す救命胴衣の装飾的デザインをクレームしている。
スポーツディメンジョン(Sport Dimension Inc.)は、ウォータースポーツ関連器具およびウェアの製造業者である。その製品のなかの一つとして、スポーツディメンジョンはBody Glove® Model 325 という救命胴衣を販売している(写真参照)。
2013年8月、コールマンはスポーツディメンジョンに対しBody Glove® Model 325の製造および販売の中止を要求するレターを送付した。2014年1月、スポーツディメンジョンは、D'714の特許権を侵害しておらず、D'714特許は無効であることの確認判決を求めて、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所へ提訴した。
地方裁判所はCAFCによって審理されることになる2つの主要な判断を示した。第一に、裁判所はコールマンの専門家、ピーター・ブレスラー氏の宣誓証言を証拠方法から除外した。地方裁判所は、ブレスラー氏は救命胴衣デザインの分野での経験が無かったことから専門家として証言することはできなかったと説明した。
第二に、地方裁判所は、D'714特許の図に示したアームバンドと、先細形状の胴側面を除外したクレーム解釈を採用した。地方裁判所はこれらの要素は本質的に機能的であり、特許と異なり、意匠特許では機能的要素はクレームすることができないと判断した。
地方裁判所はこのようなクレーム解釈に基づき非侵害の判決を下し、コールマンはこれら2つの判断についてCAFCへ控訴した。
第一の争点に関し、CAFCは、ブレスラー氏を専門家証人から除外した地方裁判所の判断を裁判記録は裏付けていると判断した。ブレスラー氏は40年の経験を持つ工業デザインコンサルタントであるが、「救命胴衣の専門家ではない」と公に述べていた。
さらに、他のアームバンドデザインについて尋ねた際、どのように救命胴衣がデザインされたかについて、実際の知識ではなく「想像」で供述していた。したがってCAFCは、ブレスラー氏を専門家証人から除外した地方裁判所の判決を支持した。
第二の争点に関し、CAFCは、地方裁判所では通常、陪審員が装飾的デザイン(意匠特許によって保護される)と機能的デザイン(意匠特許による保護対象外)とを識別する助けとなるように、意匠特許の解釈をすることが認められている、と説明した。
しかしながら、地方裁判所の解釈はクレームされたデザインのある一部を完全に除外していたと認定した。CAFCによると、地方裁判所が先細形状の胴側面およびアームバンドを機能的要素とする判断は正しかったと述べたが、それらの特徴全体を除外した地方裁判所の解釈は否定した。
CAFCは、それらの機能は無視しても、アームバンドと先細の胴側面の形状については、なお意匠特許の一部であると判断し、意匠特許は分離した要素の集合ではなく、デザインの装飾全体を保護するものであると強調した。
こうしてCAFCは裁判を差し戻し、地方裁判所に対し「デザインの装飾全体」に焦点を当てた審理をするように指示した。
この判決は、米国意匠特許はデザインの装飾全体をカバーすることを明示している。意匠特許は機能的要素を保護しないが、この判決は、機能的要素のデザイン(例えば形状など)は保護されることを明らかにした。さらに、特許訴訟において専門家証人はその技術分野での経験が必須なことを再確認した。