1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2016年
  4. 3. Scott Clare 対 Chrysler Group LLC 事件

月刊The Lawyers 2016年6月号(第199回)

3. Scott Clare 対 Chrysler Group LLC 事件

No. 2015-1199 (Fed. Cir. March 21, 2016)

- クレーム差異の原則の適用基準を明らかにした事件 -

スコットクレア(Scott Clare)、ニールロング(Neil Long)、およびイノベート・トラック・ストレージ(Innovative Storage, Inc.)(以下合わせて「クレア」)は、ピックアップトラックのサイドに設置された隠れた収納庫に関する複数の特許の特許権者である。

これらの特許権によると、特許権を付与された収納部品により、ピックアップトラックは普通のトラックのように見える。収納庫を追加して改良したように見えるトラックは「窃盗を誘引する」ことから、特許の収納部品は有益であると主張している。

控訴審では、特許の以下の2つのクレーム限定が争点となった。(1)「ヒンジ部は従来のピックアップトラックの外観(external appearance)上に備わっているような形で設計されている」(2)「ピックアップトラックの外観が実質的にビルトイン収納なしのピックアップトラックの外観となるように、ベッドが設計されている」。

地方裁判所はこれらの2つの限定に対し、「ピックアップトラックの外見(outward appearance)から収納ボックスがわからないようにヒンジ部が設計されている」という同じ解釈をした。

クレーム解釈の後、クライスラー(Chrysler Group LLC)は非侵害の略式判決の申し立てをした。

地方裁判所はクライスラーの申し立てを認め、分別ある判事ならば提訴されたRamBox製品がピックアップトラックの外見からわからないとは判断しないと説明した。裁判所は、外見には外部のヒンジパネル、大きなRamBoxラベル、対照的な色の収納蓋、そして収納蓋とサイドパネルとの継ぎ目が含まれると述べた。

控訴審においてクレアは、地方裁判所がこれらの2つの異なる限定を同じ意味に解釈したことは誤りであると主張した。まずクレアは、「外部の(external)」および「容姿(appearance)」という文言は一般人にとって容易に明らかであることから、地方裁判所はこれらの文言の解釈をすべきではなかったと主張した。

CAFCはこの主張を却下し、訴訟において2つ以上の意味を持つ場合には、クレーム文言が「平易で一般的な」意味を持つ文言であってもクレーム解釈は必要であると述べた。

第二に、クレアはクレーム差異の原則(Claim Differentiation)として知られるクレーム解釈の基準に基づき、「ヒンジ部が従来のピックアップトラックの外観を持つように設計されている」を「実質的にビルトイン収納なしのピックアップトラックの外観であるようにベッドが設計されている」とは異なると裁判所は解釈すべきであったと主張した。

クレーム差異の原則に基づき、裁判所は、別々のクレーム限定における異なるクレーム文言は異なる意味を持つと推定する。

より具体的には、クレアは、他の文言が「実質的に」似た(substantially similar)外観を要求しているにすぎない一方で、「トラックが従来のピックアップトラックの外観を持つように設計されたと主張するところのヒンジ部」という文言は、従来のピックアップトラックと同じ(identical to)に見えるように改良されることを要求していると解釈すべきであると主張した。CAFCはクレアの2つ目の主張を却下した。

CAFCが明細書を分析したところ、明細書には、改良が実施された後ではトラックはサイドパネルに切欠きと小さなスペースを有することになる、と明瞭に記述されており、それは従来のトラックと同じには見えないと考えられることから、明細書には従来のトラックと同じ外観という解釈のサポートがないと認定した。

したがって、CAFCは、下級裁判所の解釈は妥当であり、クレームは明細書の記載と矛盾することから、クレーム差異の原則は適用されないと判断したのである。

この判決のポイント

この判決は、裁判所がクレームを解釈するさいに、クレーム差異の原則のようなクレーム解釈に関する基準を適用することを示した。スコットクレア判決は、明細書の文言と矛盾することになるようなクレーム解釈の基準を裁判所が採用しないことを明らかにした。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2016年
  4. 3. Scott Clare 対 Chrysler Group LLC 事件

ページ上部へ