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月刊The Lawyers 2016年6月号(第199回)

2. MAG Aerospace Industries, Inc. 対 B/E Aerospace, Inc. 事件

Nos. 2015-1370, 2015-1426 (Fed. Cir. March 23, 2016)

- 他社特許の発明者を雇用すると譲渡人禁反言により特許無効の抗弁が
認められなくなる可能性があることを示した判決 -

MAG(MAG Aerospace Industries, Inc.)は、民間航空機において一般的に使用されているバキューム式トイレの迅速な修理に関する幾つかの特許権の侵害でB/E(B/E Aerospace, Inc.)を提訴した。

係争対象特許は、バキューム式トイレのメンテナンス及びサービスを促進し、ダウンタイムを最小化する技術である。

係争対象特許の発明者のうちの一名のマーク・ポンデリック氏(Mark Pondelick)は、現在のところ被告B/Eで働いており、係争対象特許に関する自己の権利を、以前の雇用主に譲渡しており、その雇用主はこれを更にMAGに譲渡している。

クレーム解釈の後、MAGは、譲渡人禁反言に基づいて特許有効の略式判決を要求し、B/Eは、非侵害の略式判決を要求した。地方裁判所は、譲渡人禁反言を理由に、MAGによる特許有効の略式判決の要求を認容した。

地方裁判所は、ポンデリック氏がB/Eと関係を有しており、それゆえ、譲渡人禁反言が適用されてB/Eが特許の有効性を攻撃することが禁じられると結論付けた。地方裁判所はまた、B/Eによる非侵害の略式判決の要求も認容した。両当事者は、それぞれの判決について控訴した。

B/Eは、譲渡人禁反言が適用されるとした下級裁判所の判断について控訴した。譲渡人禁反言は、衡平法上の救済であり、特許権の譲渡人(本件では、譲渡人と関係を有する者)が、譲受人から侵害で訴えられた場合にその特許の有効性を攻撃することを禁じるものである。

ここで、ポンデリック氏は、特許権を以前の雇用主に譲渡しており、その雇用主はこれを更にMAGに譲渡している。下級裁判所は、次に挙げる要素を分析した。(1)新たな雇用主の下での、譲渡人の指導的役割。(2)被告企業における譲渡人の持ち株。(3)被告企業が、発明者を雇用した後に、非侵害の物品を製造することから侵害行為へと方針転換を行ったか否か。(4)侵害行為における譲渡人の役割。(5)侵害行為を開始するために発明者が雇用されたか否か。(6)侵害の物品を製造する決定が部分的に発明者によってなされたか否か。(7)被告企業が、譲渡人を雇用した直後に侵害被疑品の製造を開始したか否か。(8)発明者が、侵害行為を担当しているか否か。

地方裁判所は、これらの要素の分析に基づき、ポンデリック氏がB/Eと関係を有しており、譲渡人禁反言が適用されると判断した。

B/Eは、これらの要素のうちの多くが、譲渡人禁反言を適用すべきでないとする立場をサポートしていると主張した。例えば、ポンデリック氏がB/Eに参加したのは、侵害被疑トイレを開発する決定の後であり、B/Eは侵害を意図した訳ではない。実際、B/Eは、侵害回避を支援するためにポンデリック氏を雇用した。

CAFCは、B/Eの主張を認めたが、下級裁判所の判決を支持し、譲渡人禁反言の適用をサポートするのに十分な証拠があると判断した。

例えば、B/Eが現在侵害の主張が行われている行為を実行するためにポンデリック氏の知識を使用したこと、特に侵害が主張されているトイレを開発するためにポンデリック氏が雇用されたこと、及び、ポンデリック氏がコンサルタントであった時代はB/Eのエンジニアリングディレクターに就いており、後にB/Eのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーになったことに、CAFCは注目し、これらの各要素が、譲渡人禁反言の判断をサポートしていると判断した。

MAGの控訴は、下級裁判所によるクレーム解釈を争うものではなかったが、代わりに、下級裁判所が事実の適用を誤ったと主張し、真正かつ重要な争点を生じさせるとMAGが考える事実を提示するものであった。

CAFCは、下級裁判所がB/Eによる非侵害の略式判決の要求を認容したことについて、下級裁判所がクレーム解釈に対して事実を適切に適用したと判断した。

この判決は、一定の状況下では譲渡人禁反言が特許無効の申し立てに対する強力な反論になり得ることを示すものである。MAGの判決は、発明者を雇用する当事者の意図が侵害を回避することであった場合でさえも、譲渡人禁反言が適用され得ることを示している。

過去に競合他社に雇われていたことがあって特許技術の発明者であった特定の従業員を雇用するか否かを検討する際には、雇用主は譲渡人禁反言の可能性を考慮すべきである。

この判決のポイント

この判決は、他社特許の発明者を雇用した場合に、譲渡人禁反言により特許無効の抗弁が認められなくなる可能性があることを示した。特に、この判決では、被告が侵害回避を目的として発明者を雇用したことが認められたにも関わらず、譲渡人禁反言が適用されたことは注目に値する。

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