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月刊The Lawyers 2016年5月号(第198回)

1. Ohio Willow Wood Company 対 Alps South, LLC 事件

Nos. 2015-1132, 2015-1133 (Fed. Cir. February 19, 2016)

- 地裁の判断基準を批判しながらも不公正行為を認めたCAFC判決 -

OWW(Ohio Willow Wood Company)は、米国特許第5,380,237号(237特許)の特許侵害でアルプス(Alps South, LLC)を提訴した。侵害被疑製品は、ストレッチ可能な布であり、人間の身体に接触する側面のみがゲルで覆われている合成繊維の布により構成された、切断肢にフィットするクッションデバイスである。製品は皮膚への刺激性を低下させるゲルの側面と、人工補綴と自由な相互作用を可能とするドライな側面とを含む。

地方裁判所がクレーム解釈命令を下した後、アルプスは237特許の有効性をUSPTOで連続的に2回の査定系再審査で争った。2度目の再審査において、USPTOは、先行技術に基づいてクレームは自明であったことを理由に、237特許のクレームを拒絶した。この拒絶は、主に先行技術製品の開発に取り組んだコムテッシー(Jean-Paul Comtesse)氏の証言に基づいた。

コムテッシー氏は、先行技術は、ライナーの皮膚側におけるゲルの人工補綴側への滲みぬけを防ぐ布のゲルライナーを開示していると証言した。

OWWは、この拒絶に対して当時の特許審判部(BPAI)に審判請求し、コムテッシー氏の証言には裏付けがなく、コムテッシー氏は強い利害関係を有する証人であるために信頼できないと主張した。

BPAIは、コムテッシー氏の証言の裏付けがない点、及びコムテッシー氏は利害関係を有する第三者である点についてOWWに同意し、拒絶を取消した。

2度目の再審査の後、地方裁判所は訴訟の停止を解除し、アルプスの無効略式判決申立を認め、OWWの行為に対して公判に付することができる不公正行為の問題は存在しないとの略式判決申立も認めた。

控訴を受理したCAFCは、地裁の有効性に関する判決を支持し、不公正行為に関する略式判決を破棄し、事件を差戻した。

差戻し審での地方裁判所は、OWWは不公正行為を冒したと判断した。不公正行為は、OWWの研究開発ディレクターであり、アルプスの訴訟を管理する責任を持つコルビン(James Colvin)氏の行為に起因すると判断した。

地方裁判所は、OWWの訴訟弁護士や再審査の弁護士との仲介役のコルビン氏が、コムテッシー氏の証言を裏付けるレターを開示せず、アルプスの略式判決申立と共に提出された書類をUSPTOに対して秘匿していたことで不公正行為を働いたと判断した。

控訴審においてCAFCは、レターを開示しなかったことに基づく不公正行為の地方裁判所の判断を支持した。問題のレターは、コムテッシー氏の証言を裏付けるものであり、これはBPAIの審判請求における主要な問題であった。

コルビン氏は、レターの存在について認識していたが、既知の情報を全てOWWの再審査弁護士に提供しなかったと証言した。その代わりとして、コルビン氏は、「要求されたものまたは自分が適切だと考えたもの」のみをOWWの再審査を担当した弁護士に提供したと説明した。

地方裁判所は、コルビン氏は2度目の再審査に関するBPAIへの審判請求は、補強証拠が重要問題点となっていることを理解していたと判断した。コルビン氏が何の説明もなくレターを保留したという証拠から、コルビン氏の行為には欺く意思があったと推定するのが最も合理的であると理由を述べた。

しかし、CAFCは、保留された書類に基づく地裁の不公正行為の判断には同意しなかった。地裁は、コルビン氏は保留された書類の存在を知っていた明確かつ説得力のある証拠が存在すると判断し、USPTOにそれを開示しなかった点について不公正行為をしたと結論付けた。

OWWは、この書類は、署名捺印入り(under-seal)で提出された地裁事件における略式判決申立に含まれたものであり、秘密保持命令がかかったものであったため、コルビン氏はそれらの存在を認識していなかったと主張した。

地裁は、コルビン氏を含むOWW従業員は、秘密保持命令によって署名捺印入りで提出された資料の閲覧が禁止されていなかったわけではないため、この点についてコルビン氏の証言は信用できないと判断した。

地裁は、237特許に係る訴訟について責任を負うOWWの代理人が、アルプスの略式判決申立に関するこの証拠を検討しなかったとは信じがたいと判断した。

CAFCは、この争点に関する地方裁判所の推論には同意せず、不公正行為の意図要件を立証するに必要な証拠基準によれば、訴訟の管理に関するコルビン氏の役割を示す証拠は、書類の存在を認識していただけでは不十分だと判断したのである。

この判決のポイント

OWW事件は、地方裁判所による不公正行為の判断を、CAFCが支持した最新判例である。 この判決は、地方裁判所とUSPTOが並行して手続をする際の特許権者に対するリスクを示し、継続するUSPTO手続において訴訟資料を開示する重要性を示している。

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