月刊The Lawyers 2016年4月号(第197回)
3. TransWeb, LLC 対 3M Innovative Properties Co. 事件
No. 2014-1646 (Fed. Cir. February 10, 2016)
- 不公正行為の抗弁及びウォーカープロセス・
アンチトラストクレームの双方で侵害被疑者が勝利した判決 -
3M(3M Innovative Proper-ties Co.及び3M Co.)は、レスピレーター用プラズマフッ素化フィルタに関する3Mの幾つかの特許のクレームが侵害されたとして、トランスウェブ(TransWeb, LLC)に対して訴訟を提起した。
トランスウェブは、非侵害及び特許無効の確認判決を求めて、3Mに対して訴訟を提起した。
陪審団は、トランスウェブによる特許方法の先行する公用に基づき、3Mの特許は無効であると判断した。この公用は、トランスウェブのCEOが特許方法により生成された製品のサンプルを展示会で配布したことにより立証されたものである。
地方裁判所はまた、3Mの特許は不公正行為が原因で権利行使不可能であるとも判断した。陪審団は更に、3Mがフロード(fraud)により取得した特許について独占目的で権利行使したことに基づき、3Mがウォーカープロセス・アンチトラスト違反を行ったと判断し、アンチトラストの損害賠償としてトランスウェブに対する約2600万ドル(3Mの代理人費用である2300万ドルを含む)を認定した。
審査過程において、3Mはトランスウェブのサンプルの存在を開示し、PTOはこれらのサンプルに基づいて出願を拒絶した。拒絶を解消するために、3Mは、トランスウェブのサンプルが当事者間の秘密保持契約の対象であり、先行技術には該当しないと主張した。
地方裁判所は、サンプルはそのような秘密保持契約の対象ではなかったと結論付けた、また、3Mの社内弁護士がトランスウェブのサンプルの潜在的な先行技術としての性質を隠蔽するための意図的なスキームを企てたと判断した。
控訴審において、CAFCは、不公正行為の認定を支持し、サンプルが先行技術として適切に開示されていれば特許は許可されなかったはずなのでサンプルは重要性の要件であると説明した。CAFCはまた、PTOを欺こうとする具体的な意図に関して、地方裁判所の認定を支持した。
ウォーカープロセス事件の判決において、最高裁判所は、アンチトラストの原告は次の点を示すことにより勝利することができると判断した。
(1)特許権者が、特許庁に対する故意のフロードにより取得した特許であることを知りながら、その特許について権利行使したこと。 (2)シャーマン法2条に基づく独占又は独占未遂クレームの要件。独占未遂クレームの要件は、(1)独占を行う具体的な意図と、(2)独占力を達成する危険な蓋然性とを伴って、(3)被告が侵略的行為又は競争制限的行為を行ったことである。
ここで、3Mは、独占力を達成する危険な蓋然性を判定要素の市場を地方裁判所が適切に画定したか否かということ、及び、トランスウェブの代理人費用の認定が適切であるか否かということについてのみ争った。
CAFCは、独占力を達成する危険な蓋然性の要件は満たされていると判断した。その理由は、標準的な陪審団にとって、関係する製品市場をトランスウェブが適切に特定したと判断し、関係する地理的市場が合衆国であると結論付けるのに十分な証拠が存在したからである。
最後に、CAFCは、3Mによる法的手続の濫用により生じたトランスウェブの代理人費用は、アンチトラストの損害に該当すると判断した。CAFCの判示によれば、3Mの不法行為は、フロードにより取得したと知っている特許に基づいて訴訟を提起したことであり、トランスウェブの代理人費用は、この不法行為から生じたものである。
この判決は、不公正行為の抗弁及びウォーカープロセス・アンチトラストクレームの両方について侵害被疑者が勝利を収めた、最近の例となるものである。
CAFCによるテラセンス事件の判決下では不公正行為の立証基準が引き上げられているので、トランスウェブ事件の判決は、不公正行為の判断がアンチトラストクレームの可能性を一層サポートする可能性を示唆するものである。
この判決では、不公正行為の抗弁及びウォーカープロセス・アンチトラストクレームの双方で侵害被疑者が勝利を収めた。テラセンス事件のCAFC判決により不公正行為の立証基準が引き上げられていることも考えると、不公正行為の抗弁が認められれば、アンチトラストクレームも認められる可能性が高まると考えられる。