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月刊The Lawyers 2016年3月号(第196回)

3. Redline Detection, LLC 対 Star Envirotech, Inc. 事件

No. 2015-1047 (Fed. Cir. December 31, 2015)

- 付与後レビューの請求と同時に無効証拠の全てを提出する必要性を示した判決 -

レッドライン(Redline Detection, LLC)は、当事者系レビュー(IPR:Inter Partes Review)において、37 C.F.R. §42.123(a)の規定に基づき補足情報の提出申請を却下した審判部の決定に対し控訴した。また、レッドラインは当事者系レビューの対象となったクレームが自明であることを立証していないと認定した審判部の判断についても控訴した。

スター(Star Envirotech, Inc.)は、揮発性かつ爆発性の環境で使用する発煙方法に関する米国特許第6,526,808号(808特許)の特許権者である。808特許は、流体システムにおける漏洩の存在及び位置を検知するための煙を発生させる方法を開示している。

レッドラインは、当事者系レビューの請求書において、808特許のクレーム9及び10の無効性を主張した。この請求書の提出時において、レッドラインは専門家の鑑定書を提出していなかった。

2013年7月1日に、審判部は、請求書に記載された12個の理由のうち2つについて、当事者系レビューを開始した。そして、2013年7月30日に、レッドラインは60頁に及ぶ専門家の鑑定書と、レッドライン側の専門家の履歴書と、2つの追加先行文献を提出するため補足情報の提出を申請した。

2013年8月に、審判部はレッドラインの補足情報の提出申請を却下した。その理由として、審判部は、関連規則を挙げ必ず申請を許可する必要はないと述べた。さらに、レッドラインが、この証拠について合理的に請求書と同時に提出できなかったものと主張していないことに留意した。

また、審判部は、申請をする当事者が、請求する救済を受ける権利があることを立証する責任を負うことにも留意した。2014年6月30日に、審判部は、レッドラインは証拠の優越によって、808特許のクレーム9及び10の自明性を立証していないと判断する審決を下した。

控訴審において、レッドラインは、対象の規制である37 C.F.R. §42.123(a)は、その規則に記載の要件以外のさらなる要件を課すことを除外しているため、補足情報の提出申請を却下した審判部は誤っていると主張した。

37 C.F.R. §42.123(a)は、「…トライアルが一旦開始されると、当事者は…トライアルが開始された日から1月内になされた場合[に補足情報の申請を提出することができる]…補足情報はトライアルが開始されたクレームに関係していなければならない」と記載する。

37 C.F.R. §42.123(a)に加え、(b)はトライアル開始から一月後に補足情報の提出を可能とし、(C)はトライアルが開始されたクレームとは関係のない補足情報の提出を可能とする。

(b)と(C)は、申請する当事者に対して、「補足情報を合理的に早期に得ることができなかった理由を示さなければならず、かつ補足情報の考慮が司法手続き上必要であることを示さなければならない」と規定している。

レッドラインは、(b)と(C)でいう補足情報の提出の追加的規則要件は、37 C.F.R. §42.123(a)においては省かれていると主張し、レッドラインの申請の検討の際に、審判部はその要件を考慮すべきではなかったと主張した。

CAFCは、PTOの規定には「各審理について、正当、迅速かつ安価な解決を確保するように解すべき」37 C.F.R. §42.1(b)と記載されていると述べ、レッドラインの主張を却下した。

CAFCは、補足情報が時機に即して提出され、かつ審理に関する場合であっても、その情報の認定を必要とすることは、この義務に反すると判断したのである。

レッドラインは、審判部には規則要件を満たす補足情報の提出申請を却下する権限はないと主張したが、CAFCは、同じ根拠に基づいてレッドラインの主張を却下した。

CAFCは、37 C.F.R. §42. 123(a)は、審判部の他の規則の適用を除外しないと判断し、審判部は、当事者系レビューに適用される全ての規則の文脈において、補足情報の申請を許可又は否定する権限を有すると結論付けた。

レッドラインはさらに、他の当事者系レビューにおいて当事者による補足情報の提出が認められたため、審判部の決定は独断のものであり、気まぐれ的なものであると主張した。

CAFCは、補足情報の提出が認められたという、レッドラインが挙げた他の事件例は、本事件とは区別できることを見いだし、1つの引用判決において、特許権者は、補足する情報をすでに所有し、その情報は請求書に引用されていた特許無効性の根拠となる証拠に影響しないものであったと説明した。

また、別の引用判決に関して、審判部は、ある専門家が請求書に添付された鑑定書を執筆し、同専門家による10頁の補足鑑定書を認めたことについて、CAFCは、特許権者が、提出された新しい情報を検討するために十分な時間を有していたと判断した。

CAFCは、その判決に関する状況が本事件の状況とは相当異なると説明した。よって、CAFCは、審判部によるレッドラインの補足情報の提出申請を却下した判断を支持した。

自明性の問題について、レッドラインは、審判部が先行文献の解釈や、文献を組み合わせる動機付けに関する分析を誤ったと主張した。レッドラインは、レッドラインの専門家の鑑定書が認定されていれば、審判部はそのような判断に至らないはずであったと主張した。

CAFCは、審判部の判断には、スターの専門家の鑑定書を含む、実質的な証拠による裏付けがあったと判断した。CAFCは、レッドラインの主張は鑑定書等の裏付けがないと判断して却下した。

この判決のポイント

レッドライン判決は、争点となったクレームの無効を示す全ての証拠を、付与後レビューの請求と同時に提出しなければならないことを示している。この判決は、審判部にとって、審理を早期に解決させることに悪影響を与えるものであれば、たとえ規則要件を満たしていても、救済が認められない場合もありうることを警告している。また、当事者系レビュー(Inter Partes Review)における具体的な争点に関して、CAFCが審判部の判断を支持したもう1つの例も引用している。

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