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月刊The Lawyers 2016年3月号(第196回)

2. Commil USA, LLC 対 Cisco Systems, Inc. 事件

No. 2012-1042 (December 28, 2015)

- 差戻し審において侵害の抗弁を与える別の主張を提示・
維持することの利点を示した判決 -

この事件で、CAFCは、誘導侵害の争点に関して最高裁判所から差戻しを受けて、シスコ(Cisco Systems, Inc.)による直接侵害の陪審員認定を裏付ける実質的証拠が存在するかを扱った。

コミル(Commil USA, LLC)は、テキサス州東部地方裁判所でシスコに対して特許侵害訴訟を提訴した。コミルは、ネットワーク機器の製造・使用によってシスコがコミルの特許権を直接侵害すると主張した。

コミルはまた、他人の使用を目的としたネットワーク機器の販売によってシスコが他人の特許権侵害を誘導していると主張した。

1回目の審理で、陪審評決は、シスコが直接侵害を行ったと認定し、コミルへの370万ドルの賠償金の支払いを裁定した。陪審員はシスコが誘導侵害についての責任を負わないと判断したが、地方裁判所はこの争点及び賠償額に関して新たな審理を許可した。

2回目の審理は、誘導侵害に関してコミルに有利な評決を下し、6370万ドルの賠償金の支払いを裁定した。

シスコは複数の争点に関して控訴した。控訴審においてCAFCは、誤った陪審説示に基づく誘導認定を破棄するとともに、コミル特許の無効をシスコが誠実に確信していたという証拠を排除したことは地方裁判所の誤りであると判断した。

この先行判決で、CAFCは、特許の無効性を誠実に確信することは、非侵害を誠実に確信することと同様に、誘導侵害の必須要件である特定の意図をシスコが有していたかの判断に関係すると述べた。

コミルは事件移送命令の申し立てを提出し、最高裁判所は、原告が特許の無効を確信していたことは誘導侵害の抗弁にはならないと判断した。

差戻しを受けて、シスコは、先行判決で扱われなかった自身の非侵害の主張を扱うようにCAFCに要求した。

シスコは、シスコもその顧客も特許の方法のステップを実施していないため、侵害の争点に関してコミルが優勢になり得ないと主張した。

クレーム要素の1つは、「モバイルユニットの基地局との各コネクションについて、前記モバイルユニットに接続された前記基地局において低レベルプロトコルのインスタンスを実行し、交換機において高レベルプロトコルのインスタンスを実行する」というものである。

地方裁判所はこのクレーム要素を、「モバイルユニットの基地局との各コネクションについて、前記基地局において当該コネクションだけをサポートする低レベルプロトコルのコピーを実行し、交換機において当該コネクションだけをサポートする高レベルプロトコルの別個の対応するコピーを実行する」ことを必要とすると解釈した。

シスコは、自身のシステムが、接続されたすべてのデバイスをサポートするプロトコルの単一のコピーのみを使用するので、このステップが実行されないと主張した。

結果として、CAFCはシスコを支持した。シスコのエンジニアは、接続された複数のモバイルデバイスについてシステムがプロトコルの1つのコピーだけを実行すると証言したからである。

CAFCは、コミルの専門家による証言が陪審評決を支持するのに不十分であると判断した。特に、コミルの専門家は、シスコの製品が各デバイスについて別個の状態情報を追跡すると証言した。

しかし、CAFCは、各デバイスについて別個の状態情報を追跡することは、各デバイスについて別個のプロトコルコピーを実行することを確立する実質的な証拠を提供することにはならないと述べた。

CAFCによれば、コミルの専門家は、シスコのシステムが所与の時間にプロトコルのコピーを1つだけ実行し、接続された複数のデバイスを同時にサポートできることを知っていたと判断したのである。

CAFCは、理性的な陪審員であれば、シスコの製品が各デバイスについてプロトコルの別個のコピーを実行するとは判断しなかっただろうと結論付けた。したがって、CAFCは地方裁判所による侵害の判決を破棄したのである。

この判決のポイント

この事件では、シスコは最高裁判所で優勢でなかった誘導侵害の争点を避け、別の主張に基づいて侵害の判決の破棄を獲得した。この事件の教訓は、侵害の完全な抗弁となる別の主張を控訴審において提起することの利点を示している。

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