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月刊The Lawyers 2016年2月号(第195回)

2. Ariosa Diagnostics 対 Verinata Health, Inc., 事件

Nos. 2015-1215, 2015-1226 (Fed. Cir. November 16, 2015)

- 当事者系レビュー(IPR)での無効理由主張の注意点を明らかにした判決 -

アリオサ(Ariosa Diagnostics)は、ベリナータ(Verinata Health, Inc.)の米国特許第8,318,430号(430特許)を非自明であり特許可能であるとした審判部(PTAB)の決定に対し上訴した。430特許は染色体異常を発見する無侵襲的出生前血液検査(non-invasive prenatal blood testing)に関する。

アリオサは、どのように当業者が3つの先行技術引例を組み合わせるかを説明しておらず、先行技術引例の何を改良することが、クレームされた発明に到達するために必要であったかを明示していなかったことから、審判部(PTAB)は当事者系レビュー(IPR)の申請は不十分であると判断した。特に、タグ付されたシーケンスを用いるパラレルDNAシーケンシング方法の先行技術引例は、ベリナータの特許付与された高精度のDNAシーケンシング方法で使用するに足りる精度ではなかったことから、PTABは、当業者が先行技術引例を組み合わせることはできないと認定した。

審判部は、アリオサが答弁書において依拠したパンフレットを考慮することを明確に拒否した。パンフレットは、アリオサの専門家が主張していた「インデックス付加マルチプレックス(indexed multiplexing)」という、タグを使用したパラレルDNAシーケンシングの一つを記述しており、出願日までに一般的になっていたことを記述していた。

そのパンフレットは、専門家の最初の宣誓書に証拠提出されていたが、クレームを自明とする申請書の中で引用されていた3つの主な引例のうちの一つではなかった。

アリオサは、当業者であれば先行技術引例に記載された方法よりもパンフレットに記載された方法の方がより正確な方法を理解できるであろうと主張した。

審判部は、このパンフレットはIPR手続の自明性に関する不可欠な部分として提示されておらず、アリオサの答弁書に言及されていたことを理由このパンフレットを除外した。

アリオサは、審判部がパンフレットを考慮しなかったことは誤りであると主張した。CAFCは、単純に申請書の中で先行技術の主要部分のうちの一つとして明記されていなかったことを理由に、審判部がパンフレットを除外したことは誤りであったと同意した。

しかしながら、CAFCは、もしアリオサが関連性を十分に指摘していなかったことを理由に審判部がパンフレットを除外したのであれば、審判部がパンフレットを重要視しなかったことに妥当性があるとの見解を示した。

ここでCAFCは、審判部による除外が誤りなのか後者の妥当性に基づくものなのかについては判断することはできなかった。したがって、CAFCは事件を審判部へ差し戻した。

同判決において、CAFCはアリオサが答弁書提出時に着目した先行技術引例のある教示を考慮しなかった審判部の決定を支持した。審判部は、第一の引例の「インデックス」方法は第2の引例のDNA増幅法に用いることはできなかったので、2つの先行技術引例は組み合わせることができないと判断していた。

答弁書において、アリオサは第2引例の一部が第1引例の方法と互換性のある他のDNA増幅法を記述していると主張した。審判部はこれらの別の方法は最初のIPR申請書にも専門家の宣誓書にも全く述べられていなかったためこれらの教示内容を考慮しなかった。

CAFCは、特許無効の主張の裏付けとなる証拠の特定の部分に関連する主張はIPR申請書に記載されるべきであった(実際はなかった)ことを理由に、審判部の決定は正しいと判示した。

アリオサ判決はCAFCがIPR手続において審判部の決定を差し戻した数少ない判決の一つである。

この判決ではIPR手続の実務者は、二次的引例による裏付けや意見書および証拠のリスク排除を含む、IPR申請書の自明性の主張の裏付けとなる事実ベースの全ての証拠を十分に詳細に明記すべきであることを示唆した。

この判決のポイント

この事件では、当事者系再審査(IPR)の申請者は、最初に提出する申請書において自明性の裏付けとなる全ての根拠を十分に明記すべきことを明言した。CAFCは、先行技術と発明との関連性を後の答弁書で初めて主張した場合、PTABがその主張を考慮対象から除外することは妥当であると判断した。

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