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月刊The Lawyers 2015年12月号(第193回)

2. Achates Reference Publishing, Inc. 対 Apple Inc. 事件

No. 2014-1767 (Fed. Cir. September 30, 2015)

- 当事者系レビュー(IPR)の期間制限に関する審判部の判断については
CAFCが裁判管轄を持たないことを示した判決 -

アカーテス(Achates Refer-ence Publishing, Inc.)は、米国特許第5,982,889号(以下889特許)及び米国特許第6,173,403号(以下、「403特許」)(以下、まとめて「係争特許」)の特許権者である。

2011年6月、アカーテスは、クイックオフィス(QuickOffice, Inc.)を含む複数の被告を相手に訴訟を提起し、係争特許の特許権侵害を主張した。

アカーテスは1年後にアップル(Apple Inc.)を被告に追加し、アップルも係争特許の特許権を侵害していると主張した。2012年12月、アップルは、米国特許商標庁において係争特許についての当事者系レビュー(以下、IPR)を請求した。

この請求に対してアカーテスは、署名されていない免責契約に基づき、アップルがクイックオフィスと(そして恐らくは他の被告とも)関係を有していたと主張した。

アカーテスは、この関係によりアップルのIPR請求は米国特許法第315条(b)に定める期間制限の対象であると主張した。米国特許法第315条(b)は、請求人、真の利益当事者または請求人の利害関係人は、特許権侵害を主張する訴状を送達された日から1年以内にその特許に対するIPR請求を行うことを要件としている。

アカーテスは、アップルの他の被告との関係を立証するために、証拠開示を請求した。審判部はこの請求を却下し、仮にこの空欄の免責契約に実際に署名されていたとしても、それによりいずれかの被告が真の利益当事者またはアップルの利害関係人であることを示していると信じる根拠はないと判断した。

審判部は、被告のいずれかが何らかの特許権侵害訴訟に対するアップルの抗弁をコントロールする権利を持っているという証拠は存在しないと結論付けた。また、アップル及び他の被告は地方裁判所の訴訟において「個別の利害」を持つと審判部は判断した。続いて、審判部は係争特許に関するIPR手続を開始した。

アカーテスは、IPRの実体審理段階においても、アップルのIPR請求が期間制限の対象であるとの主張を継続した。IPRの審決において、審判部は、IPR請求が期間制限の対象であるという当初の判断を再確認し、また係争特許は無効であると認定した。

控訴審においてアカーテスは、審判部が開示手続きの請求を却下し、アップルのIPR請求を第315条(b)に定める期間制限の対象ではないと結論付けたことは誤りであると主張した。

アップルは、IPR請求が期間制限の対象か否かに関する争点がIPRの開始決定の適否に関わることを理由に、CAFCには控訴審の管轄がないと主張した。さらに、アップルは、実体面においても審判部の決定は支持されるべきであると主張した。

米国特許法第141条(c)は、審判部の決定に不服のある当事者がCAFCへ上訴することを認めている。他方、第314条(d)は、「本条に基づくIPRを開始するか否かに関する長官による決定は最終的なものであり、上訴できない」と規定している。

CAFCは、開始決定に関する上訴を扱う管轄権をCAFCが持たないと判断した過去の判例について引用した。この判例によれば、再審理の禁止は中間上訴に限定されず、開始判断に関する上訴が審判部の審決後に行われた場合にも適用される。

CAFCは、特許権者がビジネス方法レビュー(以下、CBMR)の対象となるビジネス方法特許に該当するとした審判部の決定について、審決後に控訴した事件の判例について述べた。この判決におけるCAFCの判断によれば、開始決定に対する上訴は不可能であるものの、対象特許がビジネス方法特許に該当するか否かの判断は、最終的な実体判断の一部であり、CBMRを行う審判部の権限はビジネス方法の定義に合致する特許に限定されるため、再審理の対象となる。

アカーテスは、期間制限の対象となるIPR請求は特許を無効にする審判部の権限の一部でもあるため、再審理可能であるべきだと主張したが、CAFCはこの主張を退けた。

CAFCの判断によれば、第315条(b)は、特許クレームを無効にする審判部の権限に影響を与えるものではなく、特定の請求人がクレームに異議を唱えることを禁止するものに過ぎない。加えてCAFCは、時間的制限は適切に行われた共同請求には適用されないと述べた。CAFCの説明によれば、適時性の問題は、仮にアップルの請求がより早期に行われていたならば避けることができたものである。

アカーテスは、審判部が審決において期間制限の判断を再確認したことにより、この判断について控訴することが可能になったと主張した。しかし、CAFCはこの主張も却下した。

CAFCの判断によれば、審判部による期間制限の再検討は、依然として、開始判断の一部として明確に位置付けられるというものである。

アカーテスの事件により、第315条(b)の期間制限に関する審判部の評価に基づいてIPR手続を開始する審判部の決定については、CAFCには再審理の管轄権がないことが明らかになった。この点は、仮にそのような評価が手続の実体面の段階において再審理され、審判部の審決の一部として再度言及された場合であっても、変わることはない。

この判決のポイント

この判決は、当事者系レビュー(IPR)の期間制限(第315条(b))に関する審判部の決定について、CAFCには裁判管轄権がないことを示した。この点は、仮に期間制限に関する判断がIPRの実体審理段階において再検討され、審決の一部として再度言及された場合であっても変わることはない。

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