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月刊The Lawyers 2015年12月号(第193回)

1. SCA Hygiene Products Aktiebolag 対 First Quality Baby Products, LLC 事件

No. 2013-1564 (September 18, 2015)

- 損害賠償請求の時効期間内の特許侵害に対し懈怠の抗弁が有効なことを確認した判決 -

SCA(SCA Hygiene Prod-ucts Aktiebolag)は、成人用失禁製品に関する米国特許第6,375,646号(646特許)の特許権者である。この件に関して、CAFCは大法廷において特許関連事件における懈怠抗弁(ラッチェスディフェンス)の適用を検討した。

まず、SCAは、2003年10月にファーストクオリティ(First Quality Baby Products, LLC)に送達したレターで、初めてファーストクオリティに対して644特許について特許権侵害を主張した。

このレターに対してファーストクオリティは、2003年11月に、先行技術特許に照らして646特許は無効であると回答した。ファーストクオリティの2003年11月の回答後、SCAとファーストクオリティ間のやり取りは停止した。そして、2004年7月、SCAは、先行技術特許に基づき646特許の再審査を請求した。

SCAは、再審査の審理は公開されることから、再審査をファーストクオリティに報告しなかった。一方、ファーストクオリティの理解では、ファーストクオリティが2003年11月のレターで646特許は無効であると主張した後、SCAは侵害主張を取下げたことになっていた。

2007年3月、USPTOは、原クレーム全ての特許性を確認し、再審査中にSCAが追加した幾つかの他のクレームを許可した。

再審査中および再審査手続後、ファーストクオリティは、2008年及び2009年に追加商品を入手する等、保護下着ビジネスに多額の投資を行った。

SCAはファーストクオリティの行為に気づいていたが、2010年8月まで646特許の主張を再度持ち出すことはしなかった。

2010年8月、SCAは、ファーストクオリティが646特許の特許権を侵害する旨の訴状を提出した。この訴状の送達は、646特許に関するSCAとファーストクオリティ間の7年振りの連絡であった。

地方裁判所は、懈怠と衡平法上の禁反言により特許権は行使不能であるというファーストクオリティの申立てを認める略式判決を下した。これに対しSCAは控訴し、2014年9月、CAFCの合議体は、懈怠に関する地裁の判断を支持した一方で、衡平法上の禁反言に関する地裁判決を破棄した。

SCAは、Patrella対Metro-Goldwyn-Mayer, Inc.事件(134 S. Ct. 1962 (2014))の最高裁判決において、著作権法下の損害賠償の訴訟において懈怠に基づく抗弁は成り立たないと判断したことは、特許法における懈怠の適用も禁止したことになると主張したが、合議体はこの主張を却下した。合議体判事は、懈怠の争点に関しては最高裁判決以前のCAFC大法廷判決に拘束されると説明したのである。

その後、SCAは大法廷の再審理の請願書を提出し、Patrella最高裁判決に照らして再検討を求めた。

CAFCは、(1)Patrella最高裁判決に照らして法定6年間の損害賠償請求期間内に生じた特許権侵害に基づく損害賠償請求を阻止する目的で懈怠の抗弁は適用できないと判断すべきか、および(2)損害賠償または差止救済を請求する侵害訴訟全体を阻止するために、場合によって懈怠の抗弁を利用することが可能であるかを検討するためにSCAの申立を認めた。

(1)の問題について、CAFCは、特許権侵害の法定6年間の損害賠償請求期間を考慮した。CAFCの考えでは、この法令は、法的措置による救済に対する期間制限を与えるもので、法的救済に対する懈怠抗弁は別の法令により規定されているため、Patrella判決(注)は特許法には影響しないということであった。

CAFCは、法的救済に対して可能な対抗措置として議会は懈怠抗弁を成文化しているため、CAFCには法律の妥当性を問う法的権限がない、と結論付けた。

(2)の問題についてCAFCは、懈怠抗弁の検討は、eBay Inc.対MercExchange, L.L.C.事件(547 US 388 (2006))のフレームワークと一致すると判断し、懈怠を理由に差止命令を阻止することはできないという「bright-line rule(明白な指標のみにより規定されるルール)」を拒絶した。

CAFCは、懈怠の判断とeBayの要因の組み合わせは、条件により、差止めを認めないことを指し得ると述べ、継続して発生するロイヤリティについて衡平法が、懈怠に関わらず、継続するロイヤリティを与えることを必要としている、と述べた。

したがって、CAFCは、特別な事情がない限り、懈怠は継続して発生するロイヤリティを排除しないと判断した。

SCA判決は、6年の時効期間の損害賠償請求期間内に起きた特許権侵害に基づく損害賠償の請求を妨害するために、懈怠は依然として採用可能な抗弁であることを確認するものである。

大法廷は、この判決において6対5と判断が分かれたため、最高裁が特許権侵害事件における懈怠抗弁の有効性を検討する可能性がある。

この判決のポイント

SCA判決は、6年の時効期間(米国特許法286条)の損害賠償請求期間内に起きた特許権侵害に基づく損害賠償の請求を阻止するために、懈怠論は依然として採用可能な防御方法であることを確認する判決となった。


注 少数意見は、これに反対し、法定の損害賠償請求期間をケース特有の懈怠論で置き換えることを議会が意図していたと結論付ける根拠を多数派は示せていないと述べた。

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