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月刊The Lawyers 2015年11月号(第192回)

2. Media Rights Tech Inc. 対 Capital One Financial Corp. 事件

No. 2014-1218 (September 4, 2015)

- ミーンズ・プラス・ファンクションによる機能的表現を不明確と判断した判決 -

メディアライツ(Media Rights Technologies, Inc.)は米国特許第7,316,033号(以下033特許)の特許権者であり、この特許は「コンプライアンスメカニズム」を使用してメディアコンテンツの不正記録を防ぐ方法を開示する。

コンプライアンスメカニズムは、システムから出力されないように受信メディアコンテンツの出力経路を切り替えることよって当該コンテンツの不法または不正のコピーや共有を防ぐように動作するものである。

メディアライツは、キャピタルワン(Capital One Financial Corporation、Capital One Bank (USA), N.A及びCapital One, N.A.)をバージニア州東地区地方裁判所に訴え、033特許を侵害すると主張した。クレーム解釈の後、地方裁判所は、キャピタルワンによる訴答に基づく判決の申し立てを認め、033特許のクレームは不明確であるので無効であると判断した。特に、地方裁判所は、「コンプライアンスメカニズム」及び「カスタムメディアデバイス」というクレームの文言が不明確であると判断した。

これに対してメディアライツは控訴したが、CAFCは地方裁判所を支持し、「コンプライアンスメカニズム」という文言は米国特許法第112条第6パラグラフのミーンズ・プラス・ファンクションの文言であり、不明確であると判断した。

CAFCはまず、第112条第6パラグラフの要件が「コンプライアンスメカニズム」という文言に当てはまるかを検討した。「ミーンズ」という用語が争点のクレームの文言に現れないので、第112条第6パラグラフが当てはまらないという、覆しうる推定が存在する。よって、CAFCは、明細書に照らして読んだ場合に、クレームが十分に明確な構造を記載するかを検討した。

次に一般に理解される意味をやはり欠いているクレーム中の「modernizing device」なる文言が検討され、メディアライツはCAFCがこの用語を不明確でないと判断した先行事件を引用した。

しかし、CAFCは本件をこの先行事件とは区別した。先行事件に係る特許の明細書は近代化デバイスの内部コンポーネントを説明しており、これらのコンポーネントがどのようにクレームの機能を実行するかを説明していたからである。

本件で、「コンプライアンスデバイス」という文言は、電気回路、または明確な構造を含意しうる何かを指した。CAFCは、「コンプライアンスデバイス」が明細書に説明されておらず、実行される機能がクレームでのみ規定されると判断し、第112条第6パラグラフの適用を避けるには、内部コンポーネントがどのように動作するかを開示せずに単に様々な機能を記載するだけでは不十分であると判断した。

さらに、CAFCは、この論点について判例が最近変更され、ミーンズ・プラス・ファンクション要件を文言だけで認定する「強度の推定」はもはや存在しないと述べた。

次に、CAFCは、争点のクレーム文言を限定する構造、材料または動作を識別することによって、この文言の解釈を開始したが、033特許のクレームに記載されるように「コンプライアンスメカニズム」が4つの機能を実行することについて当事者間の争いはなかった。

これらの機能はコンピュータで実施されるので、明細書は汎用コンピュータまたはプロセッサ以上の開示をする必要がある。

CAFCは、どのようにしてコンプライアンスメカニズムがデータの出力経路を切り替えるかを説明する構造またはアルゴリズムが033特許に開示されていないと結論付けた。

これに対しメディアライツは明細書中のソースコードの記述を指摘したが、記載されたコードは単に様々なエラーメッセージを返すだけであり、切り替え機能がどのように実行されるかを説明するものではないことを示す専門家証言が反論されないままであるとCAFCに判断された。

同様に、CAFCは、コンプライアンスメカニズムの他の機能がどのように実行されるかに関する詳細が明細書に提供されていないと判断した。よってCAFCは、033特許が不明確のため無効であるという地方裁判所の認定を支持した。

この判決のポイント

この事件では、「ミーンズ」という用語を欠いているクレーム文言にCAFCが第112条第6パラグラフの要件を適用した最近の例である。この判決は、ミーンズ・プラス・ファンクションの分析の影響を受けるクレーム文言の件数が増えていることの傾向の一部であると考えられる。また、この判決は、コンピュータで実施される機能に対応するミーンズ・プラス・ファンクションのクレーム文言は、不明確と判断されることを避けるために、クレームの各機能について明細書に十分な構造またはアルゴリズムによるサポートを与える必要があることを再確認した。

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