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月刊The Lawyers 2015年11月号(第192回)

1. The Dow Chemical Co. 対 Nova Chemical Corp. 事件

Nos. 14-1431, 2014-1462 (August 28, 2015)

- 事件係争中の最高裁判決(Nautilus事件)に基づき、不明確性の主張が再検討され、
新基準下で特許クレームを無効にした判決 -

ダウ(The Dow Chemical Company)は、米国特許第5,847,053号(053特許)及び米国特許第6,111,023号(023特許)を所有する。この特許は、強度を失わずにより薄いフィルムにすることが可能なエチレンポリマー組成に関する。

2005年に、ダウは053特許及び023特許の特許権侵害を主張しノヴァ(Nova Chemical Corporation)を提訴した。それに対してノヴァは、特許クレームは不明確であると主張した。具体的には、ノヴァは、特許クレームは「1.3以上の歪硬化係数の勾配」を必要とするが、当業者に対して「歪硬化の勾配」を測定する方法を教示していないと主張した。

2010年、陪審員はノヴァの特許権侵害を認め、ダウの特許は不明確ではないと認定した。これに対しノヴァはCAFCへ控訴、2012年CAFCは当業者であれば「歪硬化の勾配」の測定方法に到達でき、その方法を実施できたと理由を述べて特許は不明確ではないと結論付けた。

差戻し審において地方裁判所は、最初の陪審判決後から今日に至る期間の特許権侵害について、追加の賠償額を裁定した。ノヴァは再び控訴した。

控訴審において、CAFCに手続的な問題と実質的な問題が提示された。両方の問題に、この控訴事件の審理中の2014年に下された最高裁判決、Nautilus, Inc.対Biosig Instruments事件(134 S. Ct 2120(2014))が影響を与えた。この最高裁判決は、特許クレームを不明確を理由に無効とする判断基準を変更した。

ダウ事件の1回目の控訴審において、CAFCはNautilus判決前のより緩い基準に基づき地裁による特許有効の判決を支持した。

手続的問題についてCAFCは、既判力または争点排除のどちらについても、以前の判決に縛られることはないと判断した。以前の判決は終局判決であったが、追加の損害賠償請求は以前の終局判決後に継続した行為に関するものであるため、別の請求であったと判断したのである。

争点排除によると、以前の裁判で解決された侵害問題の再訴訟は禁じられるが、CAFCは、以前の判決後に不明確性の法律が変わったため、有効の判断に争点排除は適用されないと判断した。

不明確性の問題の再検討についてCAFCは、判例の変更は、Nautilusの基準に照らして異なる結果を強要させるか否かを検討した。争点の中心は依然として「歪硬化の勾配」との記載が不明確であるか否かであった。

Nautilus判決前の基準下で、CAFCは以前、当業者であれば「歪硬化の勾配」を測定する方法を考えつき、その方法を実施できたと理論づけた。しかし、Nauti?lusの基準下では、特許のクレームが合理的な確実性で発明の範囲を当業者に教示しない場合に、特許は不明確であり無効であるため、新基準下では前のアプローチは不十分であった。

CAFCは新しい規準を適用し、053特許及び023特許を不明確を理由に無効とした。CAFCは、それぞれの特許の明細書は、合理的な確実性で、どこでかつどのように「歪硬化の勾配」を測定するかを教示していないと結論付けた。ダウは、「歪硬化の勾配」を測定すべきところで最高勾配を決定するための方法はいくつか存在することを認めた。

CAFCは、最高勾配を決定する方法は少なくとも3つあると見出し、ダウの専門家はそれに加えもう1つの方法を発明した。CAFCは、これら複数の方法によって異なる結果が得られる可能性を指摘し、よって選択した方法により、ある製品が特許クレームを侵害するか否かが影響されることに留意し、特許及び審査経過においてどの方法を使用すべきかに関するガイダンスがないため、Nauti-lus基準下ではこのクレームは不明確であると判断した。

この判決のポイント

この判決は、争いが続いている裁判の途中に、その事件に関する判例の変更があった場合に、その事件の中で既に出されている判決を争うことが可能になったことを示した。更にこの判決は不明確性について、以前の基準とNautilus基準の違いを例示的に示し、結果としてより多くの特許クレームに対して不明確性が主張され得る状況を作った。

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