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月刊The Lawyers 2015年9月号(第190回)

2. WesternGeco LLC 対 ION Geophysical Co. 事件

Nos. 2013-1527, 2014-1121, 2014-1526, 2014-1528 (July 2, 2015)

- 海外で組み立てられる侵害部品の輸出に対する特許法第271条(f)の
誘導侵害の条件と、救済の範囲を明らかにした判決 -

ウエスタンジェーコ(WesternGeco L.L.C.)は、イオン(Ion Geophysical Corp.)に対して米国特許第6,691,038号(038特許)、第7,080,607号(607特許)、第7,162,967特許(967特許)および第7,293,520号(520特許)の特許権侵害を理由に提訴した。

裁判において陪審員は、イオンによるこれらの特許権に対する権利侵害を認定し、9340万ドルの逸失利益と1250万ドルの合理的なロイヤリティを裁定した。イオンは控訴し、(1)ウエスタンジェーコは607特許、967特許、520特許の特許権者ではないので特許権侵害を主張する適格性がないこと、(2)裁判所が520特許のクレーム18に関し、特許法第271条(f)(1)に基づく略式判決を下す上で誤った基準を適用したこと、および(3)裁判所が外国での遺失利益を不当に裁定したと主張した。

ウエスタンジェーコは、Q-Marineの名称で知られている石油およびガスを探索するために多くの石油会社が使用する装置の製造業者である。石油会社は良好な採掘場所を判断するために複数のストリーマーを海中で曳航する。これらのストリーマーは、音波を海底に反射させるエアガンを備えている。ストリーマーに装着されたセンサーは音波の反射を受信し、海底地図を作製する。

争点の特許技術はこの装置の改良技術である。第1の改良技術はストリーマーとセンサーの制御を補助する位置決め装置を追加している。第2の改良技術は、経年による海底地質の変化を考慮した四次元マップを作るセンサーを備えるものである。イオンは国内で侵害被疑品であるDigiFINを製造し、装置を海外の顧客向けに輸出している。

控訴審においてCAFCは最初に、607特許、967特許、520特許の特許権を主張する適格性がウエスタンジェーコにあるか否かについて審理した。

裁判所は、ウエスタンジェーコの特許権を判断するためにその譲渡の履歴に着目した。特許技術の発明当時、発明者はSchlumberger Ltd.の子会社で働いていた。雇用契約に従い、発明の権利は発明者からSchlumbergerへ譲渡された。これらの権利は1998年の費用の共同負担契約に従ってSchlumberger Technology Corporation(STC)へ譲渡され、2000年にはSchlumbergerとBaker-Hughesとの合弁事業により、最終的にSTCからウエスタンジェーコへ譲渡された。

イオンは、特許技術の権利移転が生じたことを発明者が証言しなかったことから、ウエスタンジェーコには適格性がないと主張した。したがって、イオンによると、Schlumberger Ltd.は特許権を譲り受けておらず、発明者は2000年の合併の後もまだ発明の権利を所有していたことになる。

CAFCは、職務発明者は発明を会社へ正式に譲渡しなければならないと認めたが、それでも発明者は2001年に署名した譲渡証によりSTCへ権利譲渡したことは疑いの余地がないと判断した。

ひとたび譲渡証に署名したならば、2000年の合併合意によりSTCの権利は自動的にウエスタンジェーコへ移転する。したがって、ウエスタンジェーコは特許権を所有しそれらを主張することができるとCAFCは結論付けた。

次にCAFCは、侵害の主張に対するイオンの抗弁について審理した。イオンは特許法第271条(f)(1)における「積極的な誘導」の要件に関する地方裁判所の解釈に反論した。

地方裁判所の判断によると、第271条(f)(1)違反は、侵害被疑者が積極的に争点の部品の組み合わせを誘導したことを立証することを要件とし、それらの部品の組み合わせが米国内で生じた場合には特許権侵害となる。

地方裁判所は、誘導された組み合わせが米国内での侵害行為であることを侵害被疑者が認識していたという事実認定なしに侵害認定していた。イオンは、この認識は271条(f)(1)に基づく法的責任の認定における前提条件であると主張した。

CAFCはこの争点を避け、全てのクレームに対して271条(f)(2)に基づいて法的責任は十分に立証されているので、271条(f)(1)に基づく認識に関する適切な基準を決定する必要はないと理由を述べた。

イオンは271条(f)(2)に基づく侵害に関する陪審員への説明は、略式判決における271条(f)(1)に基づく侵害認定を考慮したものに限定すべきであったと主張した。

イオンは、陪審員への説明において、「陪審員は、他のクレームに関する侵害の問題、あるいは271条(f)(2)に基づく侵害を決定する上で、271条(f)(1)に基づく侵害認定を考慮しないでください」というような記述を含めるべきであったと主張した。

CAFCはこの主張を退け、両方の制定法の規定において、ウエスタンジェーコはイオンが争点の部品を海外で組み立てる意図を有していたことを立証しなければならなかったので、地方裁判所の判断に間違はなかったと判断した。

CAFCは、略式判決においてイオンに対してこの意図に関する点を裁判所が解決すべきことを陪審員は知る権利があったと判断した。

イオンはさらに逸失利益の裁定についても異議を唱え、ウエスタンジェーコは公海において実施する契約を勝ち取っていないので逸失利益を受け取ることはできないと主張した。

CAFCはこの主張を認め、CAFCは271条(f)の制定について考慮し、輸出した部品から作られた製品の海外での使用をカバーすることを米国特許法に拡大適用することを議会は意図していなかったと判断した。

CAFCは、271条(a)は米国外での特許製品の使用に対する責任を生ずるものではなく、271条(f)に基づく異なる結果を生ずる理由はないと述べた。

CAFCは、271条(f)は治外法権に対する推定を除外するものであるというウエスタンジェーコの主張を退け、271条(f)は、侵害する方法でそのような部品が海外で組み立てられることを知っており意図していながら、米国から部品を輸出する行為に基づいて責任が付随するという推定に対し限定的に例外適用されると説明した。したがって、CAFCは逸失利益の裁定を取り消した。

ウエスタンジェーコ判決は、特許法第271条(f)の重要な解釈を示した。この判決は、この条項に基づく責任は部品の輸出する時点のものであることを明らかにした。さらに、米国外で実施されるはずであったサービス契約を勝ち取ることができなかった場合は、逸失利益は裁定できないことを確認した。

この判決のポイント

この判決では、海外で組み立てられる侵害品の部品の輸出を特許法第271条(f)に基づく誘導侵害と判断する上で、輸出の時点で侵害する方法で部品が組み立てられることを意図していれば、この条項が限定的に適用されることを明らかにした。さらに特許権者が実施できない侵害行為に対しては逸失利益の主張はできないことを確認した。

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