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月刊The Lawyers 2015年7月号(第188回)

3. Akamai Technologies, Inc. et al. 対 Limelight Networks, Inc. 事件

Nos. 2009-1372, 2009-1380, 2009-1416, 2009-1417, May 13, 2015

- CAFCは地裁の判決を再び支持し、複数者による行為に直接侵害を否定した判決 -

米国最高裁からの差し戻し審において、本事件は、ライムライト(Limelight Networks, Inc.)が米国特許第6,108,703号(以下、703特許)に係る方法の工程のすべてを実施するわけではなく、発明の工程のすべての実施がライムライトに帰属するわけではない場合に、ライムライトが米国特許法第271条(a)に基づく直接侵害の責任を負うことがあるかについて扱った。

703特許は、格納された電子データをインターネットユーザーへ配信する方法を開示していた。アカマイ(Akamai Technologies, Inc.)は、703特許の独占的実施権者である。

ウェブサイトの経営者はアカマイから703特許の特許権について実施許諾を受け、ウェブサイトのコンテンツを個々のユーザーへ配信している。703特許は、契約当事者のウェブサイトのコンテンツをアカマイのサーバー上にタグ付け、格納する工程を包含し、その工程により、アカマイは自身のサーバーから直接個々のインターネットユーザーに対し、そのコンテンツをより迅速に配信することを可能にしている。

アカマイは、ライムライトがその顧客に対し、ウェブサイトのコンテンツを各自のページにタグ付けするよう指示し、顧客に対して技術サポートを提供することによって、703特許発明の工程を実施していたと主張した。

地方裁判所は、ライムライトがウェブサイトのコンテンツの「タグ付けする」ことを指揮または管理しておらず、侵害の責任を有することがないので、ライムライトによる法律問題として非侵害の判決の申し立てを認めた。

先のCAFC合議体は、地方裁判所の判決を支持した。最高裁が誘導侵害の争点に関するCAFC大法廷の判決を破棄した後、CAFCの合議体は、地方裁判所がライムライトによる法律問題としての非侵害の判決の申し立てを認めたことを再び支持した。

CAFCは、米国特許法第271条(a)に基づく方法クレームの直接侵害の責任は、クレームのすべての工程が単一エンティティによって実行されるか、単一エンティティに帰属することを必要とすると判断した。

CAFCは、法律自体および判例法の適切な解釈によって、この結論が必要になると説明し、まず第271条を含んでいた1952年の特許法が特許法を実質的に変更したとの見解をし、さらに1952年の特許法で第271条(a)が侵害を規定していたと認定した。

CAFCはまた、当事者が侵害の手前の行為に責任を負いうる唯一の状況として議会が第271条(b)及び(c)を制定したと認定した。CAFCは、この立法行為により、複数の実行者による侵害を支持する前例がこれらの法的な範疇に置き換わったと結論づけた。

CAFCによれば、反対解釈は議会により制定された法的スキームに矛盾する。アカマイは、被告の行為が他者の行為と組み合わされて特許権を侵害する場合に被告は第271条(a)に基づく責任を負うべきだと主張した。CAFCは、第271条(a)を共同不法行為者の責任を含むものとして解釈すると、第271条(b)及び(c)の両方が冗長なものになると述べた。

また、CAFCは、分割侵害に関する判例法は、代位責任の原則に整合すると判断した。伝統的に、代位責任は、本人と代理人の関係、特許方法の実施を必須とする契約による約束、及び会社同士の連帯を含む。

CAFCは、対等な立場の売主と買主の関係にまで代位責任が拡張されることは一般的にはないだろうと述べた。

さらに、CAFCは、共同不法行為者の責任を第271条(a)に組み込むと、3つの点で原則のコモンローの理解から逸脱すると述べた。第一に、共同不法行為者の責任は、伝統的に、個人の罪を必要とし、善意の実行者による行為との組合せは一般にコモンローで責任の対象にはならない。第二に、共同不法行為者は、典型的に、特定の行動方針で協力するように合意することによって一斉に行動するが、複数の独立当事者は必要な相互関係及び協力を欠く。第三に、共同不法行為者の責任は、引き起こされる損害を認識していることを必要とするが、認識が直接侵害に無関係であることは確立されている。

ムーア判事は多数意見に対して異議を唱えた。ムーア判事は、法律の平易な文言及び特許法内の「何人も(whoever)」という用語の文脈的分析により、第271条(a)が共同侵害者を含むことが規定されると主張した。ムーア判事は、法律自体にも、最高裁の判例にも、単一エンティティルールを支持するものはないと判断した。また、ムーア判事は、第271条(a)が共同侵害者を含むと解釈しても、第271条(b)または(c)が冗長なものになることはないだろうと主張した。これらの間接侵害の条項は、誘導者または寄与者が特許方法の工程の何れも実施しない場合にも適用されるからである。

この判決のポイント

この判決は、方法特許のクレームの侵害の解釈にとって重要である。この判決では、Muniauction, Inc.対Thomson Corp.事件(532 F.3d 1318, Fed. Cir. 2008)の判決が支持され、複数の独立した当事者が特許方法の様々な工程を実行する場合は直接侵害を否定した。CAFCの意見が割れたので、CAFCの大法廷または最高裁がこの事件を再考し、特許侵害に関する特許法の条文が共同不法行為の文脈で侵害責任を規定しているかどうかを、審理する可能性がある。

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