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月刊The Lawyers 2015年7月号(第188回)

2. Eon Corp. IP Holdings LLC 対 AT&T Mobility LLC 事件

Nos. 2014-1392, 2014-1393 (May 6, 2015)

- コンピュータ・ソフトウェア分野におけるミーンズ・プラス・ファンクションクレームに対応する明細書の記載要件を明らかにした判決 -

プロスト主席判事および、巡回裁判所判事であるニューマン判事とブライソン判事による意見書において、CAFCは米国特許第5,663,757号(757特許)の主張クレームは不明瞭を理由に無効であると判示した。

事件はEON(EON Corp. IP Holdings LLC)による757特許に関する他の主張と、他の被告団(Flo TV Incorporated, Mobitv, Inc., U.S. Cellular Corporation, Sprint Nextel Corporation, HTC America, Inc., Qualcomm, Inc., Simplexity, LLC, Letstalk.com, Inc.を含む)の控訴に関する主張が併合された。

757特許は、テレビの様々な双方向の特徴を相互接続するためにテレビを操作する「ローカル・サブスクライバー・データプロセッシングステーション」において実施されるソフトウェアに関するものである。

クレームされたソフトウェアは、即時支払での購入や、テーマ別にテレビプログラムを並べ替えるといった行為を可能にする。EONは「ローカル・サブスクライバー・データプロセッシングステーション」は、特定の機能を備えたスマートフォンであると主張した。

EONは、2010年9月23日、デラウェア州地区地方裁判所へ17社の被告団に対する裁判を提起し、2011年6月14日には他の数社の被告を提訴し、この2つの事件は後に併合された。

最初の裁判の被告団は、2013年11月に不明瞭を理由とする特許無効の略式判決の申立てを提出した。申立てのヒアリングの後、地方裁判所は被告団の主張を認める略式判決を下し、757特許の全てのクレームは不明瞭であることを理由に無効であると判示した。

地方裁判所は、明細書にはアルゴリズム、またはクレームされた機能を達成する他の手段の記述が必要であると判決し、カスタマイズされたコンピュータ・ソフトウェアを規定する機能を記述するだけの8つの文言を特定した。

CAFCは、争点のクレーム文言は、米国特許法第112条第6パラグラフに規定されるMPFクレームの文言であることに、当事者らは同意したと述べた。CAFCは、クレームされた機能はソフトウェアによって実行され、そのような機能に対応する構成はソフトウェア・アルゴリズムであると述べた。確立された判例に基づき、CAFCは、特許明細書は機能を実行するアルゴリズムを全体的に開示しなければならず、その開示は「単なる汎用コンピュータまたはマイクロプロセッサ」以上でなければならないと説明した。

ここで、757特許がアルゴリズムを開示していないことについては争う余地はない。しかしながらEONは、標準的なマイクロプロセッサが、汎用コンピュータで特別なプログラミングなしに実行可能なクレーム機能を実行するのに十分な構成として機能しうるという例外のために、アルゴリズムを開示する必要が無かったと主張した。

EONは、記述された機能は比較的単純であり、かつ、何ら特別なプログラミングを包含しないことを理由に例外が適用されると主張した。

しかしながら、CAFCはEONの意見書を拒絶し、例外はEONが主張するよりも限定的であると判断した。CAFCは、例外は限定的であり、クレームされた機能はマイクロプロセッサ自体の機能と同一の範囲で(co-extensive with)なければならないと述べた。

CAFCは、データ受信とデータ処理を、マイクロプロセッサの機能と同一範囲の機能の一例として例示した。さらにCAFCは、「特別なプログラミング」という文言は判例法に見受けられるが、この文言は複雑さの程度を示していないと述べた。むしろこの文言は、マイクロプロセッサまたは汎用コンピュータとは異なる機能に対して用いられる、とCAFCは説明した。

CAFCは、当業者が実行可能なソフトウェアの「手段(means)」の機能の十分な構成として、マイクロプロセッサは十分な構成を具備しているというEONの主張を却下した。

CAFCは、明細書は手段の限定に対応する何のアルゴリズムも構成も開示していないので、当業者の知識は無関係であると述べた。もし明細書にアルゴリズムの開示があったならば、CAFCは当業者の視点からの開示が十分であるかを審理する。CAFCはEONの意見書は、実施可能要件の明確性の要件を混合させていると説明した。

この判断を適用してCAFCは、757特許クレームは、クレームされた機能がマイクロプロセッサ自体の機能と同一範囲ではないことから、この例外の範囲外であると判示した。争点の文言はマイクロプロセッサの基本機能を引用していないので、マイクロプロセッサの開示は争点となるMPFクレームの文言の十分な構成を提供していないと述べた。

この判決のポイント

この判決は、コンピュータ・ソフトウェア分野のMPFクレームは、明細書中にMPFの構成要素に対応する構成、ソフトウェア、もしくはアルゴリズムの開示が無い場合、不明瞭による特許無効の申立てを受けやすいことを指摘している。

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