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月刊The Lawyers 2015年7月号(第188回)

1. BioSig Instruments, Inc. 対 Nautilus, Inc. 事件

No. 2012-1289 (April 27, 2015)

- CAFCが最高裁の「合理的な明確性(reasonable certainty)」の基準を
採用した判決 -

CAFCは、バイオシグ(Biosig Instruments, Inc.)の特許クレームを不明瞭と判断した地方裁判所の略式判決を破棄した前判決を維持した。バイオシグの特許は、運動器具のための心拍計に関し、「間隔をあけた関係(spaced relationship)」をクレーム要件として含む。

最高裁判所の事件差し戻しに対し、CAFCは最高裁の「合理的な明確性(reasonable certainty)」の基準を適用して、再びクレームを不明瞭でないと判断した。

バイオシグは、心電図(ECG)信号を検知し、筋電図(EMG)信号を差し引くことにより心拍を計測する、運動器具に搭載する心拍計に関する特許に基づき、ノーチラス(Nautilus, Inc.)を特許侵害で提訴した。

心拍計は「互いに間隔をあけた関係で(spaced relationship with)設置する」「ライブ」電極と「共通」電極を含む。地裁は、明細書に特定の間隔が定義されていない、そして間隔を決定するためのパラメータも記載されていないと認定し、「間隔をあけた関係」の文言は法律問題として不明瞭であると判断した。

控訴審において、CAFCは「多義的で解釈不能(insolubly ambiguous)」の基準を適用し、クレームは解釈可能であり不明瞭ではないと判断し、地裁の判決を破棄した。前回の判決においてCAFCは、本質的な証拠を考慮し、明細書及び審査経過が特許発明のパラメータを提供し、それにより当業者は「間隔を開けた関係」の文言を十分に理解し得たと判断した。

その後、最高裁は「多義的で解釈不能」の基準を否定し、明細書及び審査経過に照らしても合理的な明確性をもって当業者に発明の技術的範囲が伝わらない場合に、特許クレームは不明瞭を理由に無効であると判断した。最高裁はCAFCの判決を破棄し、「合理的な明確性」の基準の下で再判断させるために事件を差し戻した。

再審中にノーチラスは、最高裁が「新しい、より厳重な基準」を提供したことに伴い、CAFCが、当該基準に基づきクレームが不明瞭であるとした地裁の判断を支持しなければならないと主張した。

ノーチラスは、本質的な証拠は対向する方向を指すためクレームは不明瞭であると主張したが、バイオシグは、最高裁の主な懸念はCAFCの「多義的で解釈不能」テストの認識であるため、「合理的な明確性」の基準は新しい規準ではないと主張した。

CAFCは、クレームにおいて、程度を表す単語は本質的に不明瞭ではなく、それらの明瞭性は、特許にその程度を判定する何等かの基準が示されているかによると再度述べ、発明の文脈に照らしてクレームは当業者に十分に明確であったため、程度の表現を含むクレーム文言が明瞭であると判断された先例を引用した。

また、CAFCは、クレーム要件が「単に機能的な表現」で規定された場合、要件が十分に明確であるかの判断は、明細書の開示と当業者の技術常識によると述べた。

CAFCは、バイオシグのクレームは不明瞭を理由に無効ではないと再び結論付け、地裁の判決を破棄した。

CAFCの意見によると、CAFCは、不明瞭性等の法律問題は新たに(de novo)検討するが、クレーム解釈についてはTeva Pharm. USA, Inc.対Sandoz, Inc., 135 S. Ct. 831 (2015)で示された基準、つまり法的結論は新たに検討される一方、外部証拠に基づく事実の認定は明らかな誤り(clear error)を対象に検討されるとする基準に基づいて検討するとした。

CAFCは、地裁は不明瞭と判断した際に、完全に本質的な証拠に基づいて判断したため、CAFCの再審は完全にde novoであると主張したのである。

CAFCは本質的な証拠を再検討し、当業者は発明の技術的な範囲を合理的な明確性をもって理解し得たと判断した。明細書及び審査経過に基づく以前のCAFCの解析を引用し、CAFCは、当業者は「間隔をあけた関係」との文言は「無限に小さくもなく、かつユーザーの手の幅より大きくもない」間隔を示すと判断し得たと述べた。

CAFCは、クレームの文言、明細書、及びライブ電極と共通電極の間の「間隔をあけた関係」を示す図面は、争点となった文言の範囲について十分な明確性を当業者に与えると判断した。CAFCは審査経過も検討し、それも反対の結論を必要にしないと見出した。つまり、CAFCは、本質的な証拠により示されたように当業者は発明のパラメータを理解すると推論した。

最高裁への控訴前の結論と同じ結論に至ったことにより、本事件の判決は、最高裁に否定されたCAFCの「多義的で解釈不能」の基準と、最高裁の「合理的な明確性」の基準は、事実上それほど変わらないことを示唆する。

この判決のポイント

CAFCは不明瞭性に関して最高裁の新規基準「合理的な明確性」を適用した。その結果争点のクレーム文言は本質的な証拠に照らして、合理的な明確性をもって発明の技術的範囲が当業者に伝わるため、クレームは不明瞭でないと判断した。

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