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月刊The Lawyers 2015年4月号(第185回)

3. Helferich Patent Licensing, LLC 対 The New York Times Co., 事件

Nos. 2014-1196, -1197, -1998, -1999, -1200 (February 10, 2015)

- その特許に限って消尽論を限定的に適用した新たな傾向の判決 -

ヘルフェリッヒ(Helferich Patent Licensing, LLC)は、イリノイ州北部地区の地方裁判所において、7つの特許の幾つかの請求項の侵害で、ニューヨーク・タイムズ(New York Times Company)、G4メディア(G4 Media LLC)、CBS(CBS Corporation)、ブラボーメディア(Bravo Media LLC)、およびJ.C.ペニー(J.C. Penney Corporation, Inc.)(個々を「被告」と呼び、まとめて「被告ら」と呼ぶ)を相手に訴訟を提起した。

対象請求項は、概ね、情報を処理して移動電話デバイスに情報を提供するシステムおよび方法に関する。ヘルフェリッヒは、各被告が、移動デバイスアプリケーション、テキストメッセージ、またはソーシャルネットワーキングプログラムによってコンテンツを格納して顧客に対して配信することにより、侵害を行ったと主張した。

例えば、ヘルフェリッヒは、CBSが、CBSのツイッターの購読者に対してCBSのコンテンツへのリンクを含んだテキストメッセージを送信することにより、侵害を行ったと主張した。

地方裁判所は、被告らによる消尽論に基づく非侵害の略式判決の申し立てを認めた。ヘルフェリッヒは、様々な移動電話製造業者に対して特許ライセンスを与えており、地方裁判所は、これらのライセンスが、これらの移動電話デバイスを購入した顧客に対するヘルフェリッヒの特許権を消尽させ、また、これらの移動電話デバイスにおいてコンテンツを提供した被告らに対しても消尽させたと判断した。

ヘルフェリッヒは控訴した。控訴審で、CAFCは、地方裁判所の判決を覆し、消尽論が被告らに対して適用不可能であると判断した。

消尽論の下では、特許製品の許可された販売が、その製品に関連する特許権を消尽させ、購入者またはそれ以降の所有者は、その製品を望むまま自由に使用したり販売したりすることができる。

CAFCは、被告らが自分達で移動電話デバイスを使用しておらず、単に移動電話デバイスのエンドユーザに対してコンテンツを提供しているだけであることを前提に審理を始めた。

CAFCはまた、被告らが、移動電話デバイスのエンドユーザが対象請求項のいずれかを実施しているとは主張していないと判断し、対象請求項が、移動電話デバイス自体または移動電話デバイスの使用に向けられた請求項とは異なる発明であると判示した。

CAFCは、2つの別々の特許可能な発明が関与するものとして状況を把握した。ライセンスされた訴訟対象外の請求項は、移動電話製造業者および移動電話デバイスのエンドユーザによって実施される、移動電話デバイスおよびその使用に関するものである。対象請求項は、被告らが実施していると主張されている、移動電話デバイスを用いてアクセス可能な所定のコンテンツを格納して供給することに関するものである。

CAFCは、判例に基づき、消尽論は別個の発明に対しては適用されないと説明した。消尽論に関する判例法を調べた後、CAFCは、消尽論が適用されるのは、特許権者の侵害の主張が許可された取得者が同一の発明を使用しているという主張に基づいている場合だけであると結論付けた。

CAFCは、判例における消尽論の範囲から外れる理由を見出さなかった。過去の裁判と異なり、CAFCは、許可された取得者による対象請求項の侵害に対して被告らが貢献を行っているという主張が本件ではなされていないと説明した。

侵害被疑行為がいずれの許可された取得者とも異なるエンティティ(事業主体者)により行われており、対象発明がライセンス発明とは特許の上で別個のものであるため、CAFCは、消尽論が被告らに対して適用不可能であると結論付けた。

ヘルフェリッヒの判決は、消尽論の範囲について潜在的に重要な制限をもたらすものである。侵害被疑行為がライセンス製品の許可された取得者とは異なるエンティティによるものであり、対象発明がライセンス発明とは異なる場合には、消尽論は適用されないように思える。

最近の判決は消尽論の範囲を広げる傾向にあったが、ヘルフェリッヒの判決は、消尽論を更に発展させる上での障害になる可能性があるものとして見ることができる。

この判決のポイント

最近の判決は消尽論の範囲を広げる傾向にあったが、この判決は、範囲の拡大を制限する可能性を示した。この判決は、侵害被疑者がライセンス対象製品の所有者と異なっており、また、対象発明がライセンス発明(例えば携帯電話の製造に係る発明と、情報の提供方法に係る発明)とは異なっていたため、消尽論の適用を認めなかった。

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