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月刊The Lawyers 2015年4月号(第185回)

2. In re Cuozzo Speed Technologies LLC, 事件

No. 2014-1301 (February 4, 2015)

- 当事者系再審査でのクレーム解釈基準、および、
新法下での特許庁審判部の審決に対する裁判所の管轄権について -

クゾー(Cuozzo Speed Tech-nologies LLC)は、「制限速度表示機および、速度ならびに関連制限速度の表示方法」という米国特許第6,778,074号(074特許)の特許権者である。074特許は車両速度および現在地の制限速度を表示するインターフェースを開示している。

GPSは車両の位置を追跡し、現在地の制限速度を表示する。操作上、車両のスピードメーターは、現在地の法定制限速度を超えるスピードを赤色等の目立つ色で表示する。

Garmin International, Inc.およびGarmin USA, Inc.(合わせて以下、ガーミン)は、074特許の3つのクレームの有効性に対し、当事者系再審査(以下、IPR)を請求した。

特許庁審判部(PTAB)は申し立てられた3つのクレームが、先行技術文献の組み合わせによる自明の可能性が合理的にあることを理由にIPRを開始した。最も広義で合理的な解釈の基準に基づき、PTABは、「スピードメーターが前記カラーディスプレイに一体化して取り付けられた」という表現の中の「一体化して取り付けられた(integrally attached)」というクレーム文言を、「個別の部品がそれぞれの独自の性質を失うことなく1つのユニットとして物理的に接続された」という意味に解釈した。

またPTABは、サポート記載要件の欠如に基づくクレーム補正の申立てを、クレーム範囲を拡張する補正提案であると認定して却下し、074特許の申し立てられた3つのクレームは自明であると認定した審決を下した。クゾーはこれに対しCAFCに出訴した。

控訴審において、クゾーはPTABが不適切にIPRを開始したと主張した。しかしCAFCは、特許法第314条(d)が、IPRの開始に関するPTABの決定自体を審理することを禁止していると判示した。

第314条(d)は、この条項下における当事者系再審査を開始するか否かについての長官による決定は最終であり出訴できないことを規定している。CAFCは、この規定は全てのIPR開始決定自体を捉えた出訴を禁止していると解釈し、他の条項は中間出訴を制限しているので、第314条(d)はPTABが最終審決を下した後であっても、全ての開始決定自体は裁判の対象外であると理由付けた。

CAFCは、PTABの明らかな誤りである場合には、開始決定に異議申立するために職務執行令状の命令を下すことも可能であると述べた。

クゾーは、PTABがクレーム解釈における最も広義で合理的な解釈基準を適用したことは誤りであったと主張したが、CAFCはこの主張を退けた。主な問題として、CAFCは、最も広義で合理的な解釈の基準をIPR手続に適用すると明言した制定法上の規定はないと述べた。

しかしながら、PTOの規定は、クレームはその最も広義で合理的な解釈をされるべきであるとしていた。CAFCは、最も広義で合理的な解釈の基準は、有効特許を含む個々のPTO手続きにおいて適用可能であると認定した。CAFCはさらに、この基準が推定上の規定であったことに議会は気付いていたはずであると結論付けた。

クゾーは、クレーム補正機会が他のPTO手続きと比較してより限定的であることから、IPR手続きは異なると主張した。クゾーの意見書を却下して、CAFCは議会がクレームを補正する権利に関する違いに気付いていながら、推定的クレーム解釈の基準を変更しなかったと述べた。

クゾーは、「一体化して取り付けられた」という文言を、「完全なユニットして機能するように結合(join)または組み合わせる(combine)」ことを意味する広義の解釈をすべきであると主張した。

クゾーは、この解釈は、スピードメーターとカラーディスプレイが単一のディスプレイ内に統合されている状況を包含すると主張し、明らかにこの解釈をクレーム補正の申立ての裏付けとしていた。

CAFCはPTABの「一体化して取り付けられた」という文言の解釈に誤りは無かったと判断し、この文言は、先行技術による拒絶理由を解消するために補正によって審査手続中に提示されたと述べた。

CAFCは、スピードメーターと速度制限表示器が独立している構造を明細書は裏付けているとしたPTABの見解に同意した。PTABの解釈を維持した後、CAFCは、クレーム補正案が元のクレーム範囲には無かった単一のディスプレイの実施例を包含するものであったことから、クレーム補正の申立て却下は適切であったと判断した。

ニューマン判事は多数派への反対意見を述べた。ニューマン判事によると、IPR手続きは裁定であり、地方裁判所の訴訟に代わるものとして用意されているとした。同判事は、IPR手続きにおけるクレーム解釈の基準は、最も広義で合理的な解釈基準の代わりに、地方裁判所における訴訟で使用される基準と同じであるべきだと見解を述べ、また、PTABの開始決定が不適切であったか否かを考慮することを拒否することは、PTAB審決の実質的な司法的審理を妨げることになるとして、判決に反対した。

クゾー判決は、IPR手続きにおけるPTABの一般的アプローチを承認した重要判決である。PTABにおける付与後レビュー手続は早くも、現在、米国特許を無効にするために利用可能な最も効果的な手段となった。

今後、IPR手続きを好んで行う利害関係者が増えることが予測される。また、最も広義で合理的な解釈基準は、議会に関係なくIPR手続きにおける適用可能なクレーム解釈基準として一般的に活用されると思われる。当事者がIPR開始決定に異議申立する機会があるか否かに関する問題は、クゾー判決後も未解決で残ることとなった。

この判決のポイント

CAFCは、特許法第314条(d)に基づき、特許庁審判部(PTAB)による当事者系再審査(IPR)の開始決定を審査する管轄権が裁判所にはないとの判断を下し、PTABのIPR手続きにおけるクレーム解釈基準(最も広義で合理的な解釈基準)による審決を支持した。この判決により、PTABにおけるIPR手続きが、現時点では特許を無効にする最も効果的な手段となりうることが明らかになった。

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