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月刊The Lawyers 2015年3月号(第184回)

2. Content Extraction and Transmission LLC 対 Wells Fargo Bank, NA 事件

Nos. 2013-1588, -1589, 2014-1112, -1687 (December 23, 2014)

- CAFCによるアリス事件最高裁判決の判断基準の具体的な適用例を示した判決 -

Content Extraction and Tran-smission LLC(以下、CET)は、ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo Bank, NA)、The PNC Financial Services Group, Inc.及びPNC Bank, N.A.(以下、まとめてPNC)を米国特許第5,258,855号(855特許)、5,369,508号(508特許)、5,625,465号(465特許)及び5,768,416号(416特許)に対する特許権の侵害で2012年にニュージャージー州地方裁判所に提訴した。

その後、同じ年に、侵害被疑品のメーカーのディボールド(Diebold)は、非侵害及び特許無効の確認判決を求めてCETに対する訴えを起こした。

CETは、自身の特許権の直接侵害及び間接侵害を主張して、ディボールドに対して反訴した。地方裁判所は関連する3つの訴訟を併合した。

特許は同一のパテントファミリーの一部であり、総括的に、(1)スキャナのような自動デジタル化ユニットを用いてハードコピー文書からデータを抽出し、(2)抽出したデータから特定の情報を認識し、(3)その情報をメモリに格納する方法を対象とする。CETは、スキャンされた小切手に記載された情報を認識し、その情報を有する所定のデータフィールドをコンピュータメモリに投入することによって現金自動預け払い機(ATM)がクレームされた方法を実行すると主張した。

PNCは、特許の個々のクレームが、米国特許法第101条に基づき特許不適格により無効であることを根拠として、連邦民事訴訟規則第12条(b)(6)に従ってCETの訴状を却下するように申し立てた。4件の特許は、全部で242個のクレームを含む。

PNCは、855特許及び416特許のそれぞれから1つのクレームが4件の特許の全てのクレームの代表的クレームであると主張し、これらのクレームに着目して主張した。

申し立てへの反論において、CETは、特定された2つのクレームが代表であるというPNCの主張に異議を唱えなかった。

規則第12条(b)(6)の下で、表面上もっともらしい救済の主張を表明する程度に、真正なものとして受け入れられる十分な事実問題を訴状が含んでいない場合に訴状を却下してもよい。

答弁書だけに基づいて却下となるのは珍しいので、特許権侵害訴訟で規則第12条(b)(6)の申し立ては稀である。対照的に、特許事件で略式判決はより一般的であり、事実記録を検討した後に重要事実に関する真性な争点が存在せず、申立人が法律問題としての判決を受ける資格があるならば、略式判決が与えられうる。

それにもかかわらず、地方裁判所は、4件の特許の全てのクレームが101条の下で特許不適格であるため無効であると認定して、PNCの申し立てを認めた。

地方裁判所は、この規則に基づいて全被告に対するCETの訴状を却下し、特許無効及び非侵害の確認判決を求めるディボールドの請求を意味がないとして却下したのである。

控訴審において、CAFCは、クレームが特許適格性を有する主題を対象としているかを初めから検討し、地方裁判所が(1)特許のすべてのクレームに個別に対処せず、(2)クレーム解釈する前または当事者に開示手続きを認める前の答弁書の段階で、クレームが特許不適格であることを宣言したという点で地方裁判所が誤っているというCETの主張に対処した。

特許適格性を判断するために、CAFCはAlice Corp. Pty Ltd.対CLS Bank Int'l事件(以下、アリス事件)で最近示された最高裁判所による2段階フレームワークの下で特許クレームを分析した。アリス事件のフレームワークは、(1)クレームが特許不適格な抽象的概念に関するものか否かを判断し、そうであるならば(2)追加のクレーム要素がクレームの本質を、特許適格性を有する抽象的概念の応用に変換するか否かを検討することを要件とする。

CAFCは、特許が、データを収集し、収集されたデータ内の所定のデータを認識し、認識されたデータをメモリに格納するという抽象的概念を対象としていることについて地方裁判所に同意し、データ収集、認識及び格納の概念は周知であると述べた。

CETは、自身のクレームがコンピュータに加えてスキャナを必要とすることを主張することによって、アリス事件で特許不適格と認定されたものと自身のクレームとを区別しようとしたが、CAFCはこの試みを却下した。

CAFCはまた、行使された特許は、クレームが特許適格性を有する応用に変換する限定を含まないことについて、地方裁判所に同意し、文書からデータを抽出及び認識するためにスキャナを使用することが、出願時に周知であったことを、CETが口頭弁論で認めたと述べた。

CETのクレームは単に、特定のデータフィールドからデータを認識・格納するために、既存のスキャン技術を使用することを記載するだけである、とCAFCは判断したのである。

CAFCはまた、産業において一般に用いられているありふれた周知の活動を実行するための、CETによるスキャナ及びコンピュータの使用法に「発明的概念」は存在しないと認定した。

控訴審において、CETは、地方裁判所が4件の特許の242個のクレームのそれぞれに、個別に対処しなかったことは、明確かつ説得力のある証拠によって、各クレームの無効性の立証を必要とする法定の有効性の推定に適合しないと主張した。

地方裁判所は、申し立てにおいて特定された2つのクレームが代表であるという点でPNCが正しいことを分析し判定した後ならば、行使された特許権の各クレームに対処することは不要であると判断した。

CAFCは、PNCによる却下の申し立てへの反論において、PNCにより代表であると特定されたクレームから、他のクレームを地方裁判所が区別すべきであることをCETが主張しなかったと述べた。

いずれにせよ、CAFCは、地方裁判所によるクレームの評価に同意し、CETの主張を却下した。

CETはまた、地方裁判所が最初にクレームを解釈せずに、または当事者に開示手続を許さずに、答弁書の段階でクレームが特許不適格であると宣言したことは誤りであると主張した。

CAFCはこの主張を却下し、クレーム解釈の実行は、無効性判断の必須の前提ではないと述べ、地方裁判所の分析に同意し、特許クレームのいずれも、スキャン技術及び処理技術を用いてハードコピー文書からデータを抽出・格納する抽象的概念を顕著に上回るものではないと結論付けた。

従って、CAFCは、却下を求めるPNCの申し立てに対して地方裁判所が答弁書の段階で判決したことは適切であったと判断したのである。

この判決のポイント

この判決は、方法を既知の機械に単に結びつけることは、既知の機械の使用において発明的概念がない限り、抽象的概念を、特許適格性のある発明なしない。この判決は更に、あるクレームが代表的クレームであるならば、無効性判断が求められた全てのクレームの個別な判断が不要であることを示した。アリス事件の後、ビジネス方法及びソフトウェア関連特許について、特許不適格な主題に基づく規則第12条(b)(6)の下での却下の申し立てがやり易くなることを示している。

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