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月刊The Lawyers 2015年3月号(第184回)

1. Stryker Corp. et al. 対 Zimmer, Inc. et al., 事件

No. 2013-1668 (December 19, 2014)

- 検討したクレーム解釈が否定された場合の故意責任を論じた判決 -

ストライカー(Stryker Corp., Styrker Puerto Rico, Ltd.及びStryker Sales Corp.)は、ジマー(Zimmer, Inc., Zimmer Surgical, Inc.,及びZimmer Orthopaedic Surgical Products)による米国特許第6,022,329号(329特許)、第6,179,807号(807特許)、及び第7,144,383(383特許)に対する特許権侵害を主張し、ミシガン州西部地区地方裁判所へ提訴した。

争点の特許はパルス洗浄装置に関し、この装置は、整形外科的処置及び傷の洗浄等、特定の医学療法のための加圧洗浄を提供する。ストライカーとジマーは、携帯型パルス洗浄装置の市場における二大競合会社である。

ストライカーは、ジマーの「Pulsvac Plus」装置が329特許、807特許、及び383特許の幾つかのクレームを侵害すると主張した。

地方裁判所は、ストライカーが挙げた807及び383特許のクレームの侵害を認定し、ストライカーの主張を部分的に認める略式判決を下した。329特許の侵害、及び全ての特許に関するジマーの無効抗弁については、裁判で争うことになった。

陪審員は、Pulsvac Plus装置の329特許で唯一主張されたクレームに対する特許権侵害を認定し、また、全ての主張クレームを有効と認定した。陪審員団は7000万ドルの逸失利益を裁定し、ジマーは3件の特許を故意に侵害したと認定した。

地方裁判所は、陪審評決を支持する判断を下し、故意の侵害のために3倍の損害賠償額および弁護士費用をストライカーに命じた。この判決に対してジマーは控訴した。

CAFCは、3件の特許に関する地方裁判所のクレーム解釈、侵害認定、及び有効性の認定を支持した。しかし、故意侵害については地方裁判所の判決を破棄し、弁護士費用の裁定を差戻した。

CAFCは、「故意侵害」のテストは2つの要件を含むと述べた。第1の要件は、有効な特許を侵害する行為である可能性が客観的に高いにも関わらず、侵害行為を行うことである。第2の要件は、この客観的に特定できるリスクを侵害被疑者が知っていたか、あるいは知っているべきであったという点である。

CAFCは、侵害被疑者の立場に、非侵害であると結論できる合理的な根拠がある場合は、客観的な無謀さは認められないと述べた。

CAFCは、ストライカーの主張に対するジマーの具体的な抗弁について、地方裁判所は客観的な評価をしなかったと判断した。その一方で、ジマーがデザインチームに、ストライカーの製品をコピーするよう指示したという証言に地方裁判所が重きを置いていると、CAFCは判断した。

また、CAFCは、ストライカーの発明の「先駆的」な本質から、ジマーの無効主張が合理的ではないとした地方裁判所の判決も拒絶した。

3件の特許に対するジマーの抗弁の合理性については、CAFCは独自の客観的合理性評価を行った。329特許に関しては、Pulsvacの侵害被疑品は、ハンドル及びシリンダーを含むピストル型の装置であり、シリンダーの後部にモーターが配置されている。クレームは、モーターが「ハンドル」内に配置されることを包含する。

地方裁判所は、クレームに記載の「ハンドル」は、「片手または両手で持つようにデザインされている装置の部分」と解釈した。これに対し、CAFCはストライカーがクレームの「ハンドル」を、ピストル型の装置のシリンダーを含むように広く解釈することを裁判所に説得していたことに留意した。

また、CAFCは、ストライカーは、モーターを配置するシリンダーの後部は、「ハンドル」の解釈の範囲内であると考えるべきことを陪審員に説得したことにも留意した。

陪審員団は、特許の出願中にストライカーがハンドルとシリンダーを区別し、シリンダーではなくハンドルにモーターを配置したことにも関わらず裁判所の解釈に沿って認定した。

よって、CAFCは、ジマーの主張は、「ハンドル」の普通の定義に基づくものであり、その解釈自体は不合理的ではないと判断し、さらに、807及び383特許に対するジマーの主張は不合理的ではないと判断した。

主張クレームに対するジマーの抗弁は客観的に合理的であるとした認定に基づき、CAFCは、地方裁判所による故意侵害の認定を破棄した、また、地方裁判所による弁護士費用の裁定を、故意の侵害の判断に基づいた裁定として破棄した。

この判決のポイント

この判決は、非侵害の判決を勝ち取れなかったクレーム解釈であっても、その解釈に合理性があれば、故意侵害の認定を排除し得ることを教示している。この判決は、抗弁の合理性に関する判断には、被疑侵害者が提示する具体的な主張及び証拠の客観的な評価を必要とする。

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