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月刊The Lawyers 2015年2月号(第183回)

1. Memorylink Corp. 対 Motorola Solutions Inc. et al. 事件

No. 14-1186 (December 5, 2014)

- 発明者の真偽とその譲渡の有効性を論じた判決 -

メモリーリンク(Memorylink Corp.)は、Motorola Solutions Inc. and Motorola Mobility Inc.(合わせて以下、モトローラ)を米国特許第6,522,352号(352特許)の特許権侵害を理由にイリノイ州北部地方裁判所へ提訴した。

352特許は画像信号を無線で送受信することが可能なコンパクトカメラ装置に関する。これはメモリーリンクとモトローラ間での共同開発契約に基づく製品の発明であった。

メモリーリンクとモトローラの各発明者は各自の特許権を合わせてメモリーリンクとモトローラへ譲渡した。さらに両者はモトローラの特許弁護士(patent prosecution counsel)を手続きの代理人として選任した。

352特許はメモリーリンクとモトローラから各2名、計4名の発明者によるものであった。

352特許の発行から数年後、メモリーリンクは別の特許弁護士から意見書を受け取った。この意見書により、メモリーリンクは352特許の適正な発明者はメモリーリンクの発明者だけであり、モトローラの発明者は含まれないと判断した。

よって、メモリーリンクは特許権侵害の主張の一部として詐取の主張も加えたが、これは下級裁判所によって却下され、契約に関する主張として復活した。メモリーリンクの契約に関する主張は、譲渡書には約因が存在せず、適正な発明者はメモリーリンクの発明者だけである、と述べていた。

モトローラは、略式判決の申立てにおいて、譲渡書(の正当性)を裏付ける適切で十分な約因があると主張した。モトローラは申立てにおいて、特許権の共有者であることを理由に、特許権侵害の責を負わないと主張した。

地方裁判所は、譲渡書には1ドルの約因の記述があり、モトローラの特許弁護士が特許出願手続きにその譲渡書を使用していることから、譲渡書には十分な約因があると認定した。したがって、裁判所はモトローラが特許権を侵害してないという略式判決を下した。控訴審においてCAFCは地方裁判所の判決を支持した。

メモリーリンクは、1ドルおよび他の不特定の「有価約因」を記載しただけでは不十分であり、当事者間の実際の契約を反映しておらず、当事者間の実際の契約は、メモリーリンクとモトローラの発明者間での特許権の相互交換であると主張した。

メモリーリンクはさらに、モトローラの従業員は適切な共同発明者ではないので、彼らには譲渡する権利はなく、譲渡書には約因がないことから譲渡書は無効であると主張した。

CAFCはメモリーリンクのこれらの主張を却下し、地方裁判所の事実認定を支持し、譲渡書は明らかに十分な約因の説明を含んでいると判断した。CAFCは適用可能な州法に基づき、定型的文言を使用したというだけでは、約因を無効化もしくは無かったことにすることはできないと説明した。

CAFCはさらに、もし外部証拠が考慮されたならば、モトローラとメモリーリンク間のやりとりは、モトローラの特許弁護士が使用するような十分な約因があることを実証するものであると説明した。

さらにCAFCは、譲渡書へ署名した4名は、各自の特許権がまとめてモトローラとメモリーリンクへ譲渡されることに同意したのであるから、モトローラの従業員が適切な発明者であったか否かは問題ではないと説明した。

CAFCは、各従業員が当時権利を所有していたか否かに拘わらず、譲渡書としては十分であったと結論付けた。

この判決のポイント

メモリーリンク判決は、契約法および特許譲渡書の基本原則を示している。本判決は、署名された特許権の譲渡書が、約因が名目的であり、推定上の発明者が実際には譲渡する権限を持っていなかった場合であっても有効な契約となることを注意喚起している。CAFCは契約における約因の充足度に一般的に異議を唱えないし、契約が有効であることを結論付けるために発明者の適格性を判断する必要がない。

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