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月刊The Lawyers 2015年1月号(第182回)

1. Williamson 対 Citrix Online, LLC 事件

No. 13-1130 (November 5, 2014)

- クレーム中の文言に「手段」が無ければ、
そのクレームにMPF(第112条第6段落の適用)を推定しないと論じた判決 -

アットホーム社(At Home Corporation)の社債清算トラストの管財人であるリチャード・ウイリアムソン(Richard A. Williamson)は米国特許第6,155,840号(840特許)の特許権者である。

840特許は、ネットワークでつながれたコンピュータハードウェア及びソフトウェアを用いて「仮想教室」環境を提供する「分散学習」のための方法及びシステムを記載している。840特許の目的は、「複雑なハードウェア及びソフトウェアの悪影響や別の場所で開催されることのコストや不便さなしにクラスルームの交流ができるという利点」を提供するために、少なくとも1人の発表者を地理的に離れた聴衆メンバーと接続することである。

ウィリアムソンは、2011年3月22日にCitrix Online, LLC, Citrix Systems, Inc., Microsoft Corporation, Adobe Systems, Inc., WebEx Communications, Inc., Cisco WebEx, LLC, Cisco Systems, Inc及びInternational Business Machines Corporation(以下、まとめて被告)に対して訴訟を提起し、被告によるオンラインコラボレーションの様々なシステムの製造、販売及び使用並びに方法が840特許の特許権を侵害すると主張した。

2012年9月4日の地方裁判所のクレーム解釈命令を受けて、ウィリアムソンは、裁判所の解釈の下では840特許の争点のクレームが非侵害または無効の何れかであると認め、最終判決に至った。ウィリアムソンは控訴し、クレーム解釈命令に異議を申し立てた。

ウィリアムソンは、840特許のクレーム8の「分散学習制御モジュール」という文言が米国特許法第112条第6段落に規定されるミーンズプラスファンクション(MFP)条項に当てはまるという裁判所の解釈に異議を申し立てた。

控訴審において、CAFCは地方裁判所の判決を取り消し、クレーム8及びその従属クレーム無効の判断を破棄し、更なる審理のために地方裁判所へ事件を差し戻した。

CAFCは、クレーム要件に「手段」という単語を使用していない場合は、第112条第6段落が適用されないという反証を許す強い推定が働くと述べ、この推定に反証するためには、特許クレームの構造要件の欠如を、当業者が理解できるよう事件の当事者が立証しなければならないと述べた。

また、CAFCは、「分散学習制御モジュール」という用語がMFP要件を生じることを結論付ける際に地方裁判所がこの推論に十分な重みをおかなかったと判断した。

CAFCは、結論を下す際に、構造を暗示するクレーム文言のいくつかの特徴を検討した。第一に、CAFCは、「モジュール」という単語が840特許の文脈以外で意味を有しないという主張を却下した。

被告は、別の特許で「モジュール」という文言を「手段」として定義する非公開の意見を引用した。しかし、CAFCは、「モジュール」という単語の辞書的な定義を調べ、「モジュール」という文言はコンピュータ分野の当業者に構造的意味を有するものとして広く理解されていると述べた。

第二に、CAFCは、「モジュール」という単語は「分散学習制御モジュール」という文言の文脈で読解されなければならないと判断した。

CAFCは、「分散学習制御モジュール」が、これよりも大きな「分散学習サーバ」のクレーム要素であり、通信を受信し、通信を中継し、ストリーミング動作モジュールの動作を調整するという特定の機能を実行すると認定した。

第三に、CAFCは、「モジュール」という単語はさらにクレーム8のシステム全体の文脈で理解されなければならないと理由づけ、「分散学習制御モジュール」は「分散学習サーバ」のユニットとして機能し、他のモジュールの動作を調整すると述べた。

よって、CAFCは、「分散学習制御モジュール」という文言がMFPクレームであるとの推定の反証には、理由が不十分だと説明した。従って、CAFCは、クレーム8及びその従属項の無効を認めた地方裁判所の命令を破棄した。

この判決のポイント

この判決は、クレームの文言に「手段」の記載がない場合には、第112条第6段落のMFPクレームではないという強力な推定が働くことを示した。特許権者が積極的にMFPクレームを作成したと当業者が認識できる程度にクレームが構造的な要件を欠いているか否かの判定に、クレーム文言そのものと、クレーム全体を裁判所が検討することを述べている。

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