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月刊The Lawyers 2014年12月号(第181回)

3. Robert Bosch, LLC 対 Snap-On Inc. 事件

No. 14-1040 (October 14, 2014)

- クレームの文言に「ミーンズ・フォー」の文言がないが、
明細書中に対応する構成が無い場合のクレーム解釈(第112条第6パラグラフ) -

ボッシュ(Robert Bosch, LLC)は、スナップオン(Snap-On Incorporated)及びドローテクノロジ(Drew Technologies, Inc.)(以下、まとめて「スナップオン」)に対して、米国特許第6,782,313号(313特許)を侵害したとして訴訟を提起した。313特許は、自動車のための外付け診断テスタであって、自動車の中の制御ユニットが更新ソフトウェアを必要とするか否かを判定する外付け診断テスタをクレームしている。

313特許の唯一の独立請求項は、本件訴訟における争点である2つの文言を含んでいる。即ち、「プログラムローディングデバイス」及び「プログラム認識デバイス」である。

明細書は、図面を含んでいないが、2つのデバイスは自動車に接続され何らかの機能を実行すると述べている。地方裁判所は、313特許のこれら2つの文言はミーンズ・プラス・ファンクションのクレーム限定として扱われるべきであり、35USC第112条第6パラグラフの要件を満たしていないので不明確であると考えた。ボッシュは、地方裁判所の判決に対して控訴した。

控訴審で、CAFCは、地方裁判所の分析における無害な誤りを問題とはせず、313特許の全ての請求項が不明確であるために無効であるという地方裁判所の判断を支持した。

CAFCは、地方裁判所が、「プログラム認識デバイス」という文言の前に『by means of』という文言が存在することを理由に、「プログラム認識デバイス」という文言の意味がミーンズ・プラス・ファンクションの分析によって定められるという推定を採用したことについて、それは地方裁判所の誤りであると判断した。

313特許の請求項1は、「プログラムバージョンは、プログラム認識デバイスを用いて(by means of)問い合わせされ認識される」と述べている。地方裁判所は、『by means of』という文言の使用を理由に、「プログラム認識デバイス」という文言に対してミーンズ・プラス・ファンクションの推定が適用されると判示したのである。

CAFCは、『by means of』という文言の使用に基づいて「ミーンズ」の推定を適用したことなど、これまでにないと述べた。それにも拘わらず、CAFCは、たとえ推定の助けが無かったとしても、この請求項はミーンズ・プラス・ファンクションのフォーマットを引き起こすものであり、それゆえ、地方裁判所の誤りは無害であると判断した。

CAFCは、請求項の文言が明確な構造を挙げていないことを理由に、争点である請求項の文言の両方について、第112条第6パラグラフの要件を発動させることに反対する推定が克服されると判断した。

ボッシュは、313特許の明細書が、争点である請求項の文言の機能とこれらが車両に対して接続され得る方法とを説明しているということを理由に、これらの文言が包括的なデバイスではなく具体的な構造を特定していると主張した。

しかしながら、スナップオンは、明細書が、請求項の文言に対応する構造を欠いており、単にこれらの文言の機能を述べているだけであると主張した。

CAFCは、スナップオンに同意し、313特許の請求項の文言及び明細書が、これらの文言を規定するに際していかなる構造的なコンポーネントも使用していないと判断した。

ボッシュはまた、当業者であればこれらの文言の構造的な意味を理解するであろうと述べたボッシュの専門家証人及び指名発明者(named inventor)のデクラレーションを、地方裁判所が不適切に無視したとも主張した。

ボッシュは、デクラレーションが更に、313特許の中で説明されている機能を実行可能な多数の可能なデバイスを提供していると説明したが、CAFCはボッシュに同意せず、可能な構造を単にリストするだけでは、第112条第6パラグラフの発動を回避するのに不十分であると判断した。

それゆえ、CAFCは、争点である請求項の文言が、第112条第6パラグラフの要件に服すると判断したのである。

ミーンズ・プラス・ファンクションの要件を適用するに際して、CAFCは、明細書の中で、争点である請求項の文言において挙げられた機能を実行するであろう構造を探すことにより、これらの文言を解釈しようと試みた。

CAFCは、313特許が争点である文言に対応する構造を十分に開示しているかという点について、ボッシュに同意しなかった。

CAFCは、争点である請求項の文言に言及した明細書中の例の数が限られており、これらの例はいずれも、可能な対応する構造に関するガイダンスを提供してはいないと述べた。

争点である請求項の文言に関する十分な開示が明細書中に無いので、CAFCは、313特許の請求項が不明確であるために無効であると結論した。

ボッシュの判決は、ミーンズ・プラス・ファンクションの要件に服するクレーム限定を探そうとするCAFCの意欲を例示しており、この判決は、通例の「ミーンズ・フォー」という文言を欠いている請求項の文言であっても、争点である請求項の文言に関する十分な構造上の説明が無い場合には、依然として、ミーンズ・プラス・ファンクションのフォーマットを引き起こすものとして扱われる場合があるということを想起させるものである。

ボッシュの判決は、請求項の文言が、ミーンズ・プラス・ファンクションの要件を発動することに反対する推定を克服するものと判断された場合に、請求項中に挙げられた機能を実行するための対応する構造が十分ではないことを理由に、これらの請求項の文言がやはり無効であると判断される場合があるということを示している。

この判決のポイント

この判決は、請求項の文言の解釈に際して、「ミーンズ・フォー」という文言が含まれていない場合であっても、争点である文言に関する十分な構造上の説明が明細書中に無い場合には、依然として、ミーンズ・プラス・ファンクション(第112条第6パラグラフ)の要件に服するものとして解釈される場合があるということを示した。

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