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月刊The Lawyers 2014年12月号(第181回)

2. EMD Millipore Corp. 対 AllPure Techs. Inc. 事件

No. 14-1140 (September 29, 2014)

- 特許性に関する補正で追加された限定に審査経過禁反言の推定を認めた判決 -

ミリポア(EMD Millipore Corporation)は、オールピュア(AllPure Technologies, Inc.)を相手取り特許権侵害訴訟を提起し、オールピュアのTAKEONE装置が米国特許第6,032,543号(543特許)の特許権を侵害していると主張した。

543特許は容器から液体サンプルを汚染することなく取り出すもしくは抜き取る装置に関する。地方裁判所は、オールピュアの主張を認め、文言上の侵害、および均等論に基づく特許権侵害なしとする略式判決を下した。

控訴審において、CAFCは地方裁判所の略式判決を追認し、文言上の侵害なしとした地方裁判所の判決理由に同意した。また、審査経過禁反言が適用されるべきであったことを理由に、地方裁判所による均等論の分析は不要であったと判示した。CAFCは、地方裁判所が文言上も均等論上も侵害なしとの結論に至ったことから、略式判決は妥当であったと判示した。

侵害訴訟は、「少なくとも1つの取り外し可能で交換可能な転送部材」というクレーム限定を争点としていた。裁判当事者らは、地方裁判所によるこのクレーム限定の解釈に異議を唱えなかったが、「取り外し可能」という文言の意味について争った。

侵害被疑品の装置であるTAKEONEは、無菌のサンプリングシステムで、カニューレという小さなチューブを備え、このチューブを液体の入った容器へ差し込み、サンプルを抜き取ることが可能である。TAKEONEの装置は組み立てられて殺菌された状態で運ばれ、そのユニット全形のまま廃棄可能である。

ミリポアはTAKEONEの装置は取り外し、交換可能な転送部材を含んでいると主張したが、オールピュアは、TAKEONE装置上の転送部材は、システム全体に不可欠なものであり、そのシステムが解体される場合にのみ取り外しが可能であることから、その転送部材は取り外し可能ではないと回答した。

地方裁判所は、TAKEONEの装置はいったん解体されると543特許クレームの要件である密閉状態ではなくなることを理由にオールピュアの主張に同意した。

控訴審において、CAFCは地方裁判所の結論に同意し、TAKEONEの装置は一度解体されてしまうと、クレームに記載された「転送部材」に必要な全ての構成部品を有する転送部材をもはや含まなくなると判断した。したがって、CAFCはTAKEONEの装置はクレームされた「取り外し可能で交換可能な転送部材」の要件を欠くと結論付けた。

CAFCはまた、地方裁判所が、均等論下で非侵害のサマリージャッジメントを誤って下したか否かを判断した。地方裁判所は、ミリポアの均等論の主張を拒絶していた。

CAFCは、ミリポアの主張は審査経過禁反言により妨げられるため、地方裁判所による均等論の分析は不要であったと判断した。543特許の審査中、出願人はシールが第一および第二の端部を異なる要素として有するとの限定を追加するクレーム文言の補正を行った。

オールピュアは、この補正により転送部材の限定要素に対する均等論の適用が除外されることになったと主張し、ミリポアは、補正はクレーム文言を拡張しており、均等論は関係ないと主張した。

CAFCは、出願人は補正により特定の文言を削除したけれども、シールに関する要件を追加したとして、ミリポアの主張を却下し、補正により転送部材の限定の一部であるシールの範囲を狭めるように限定しており、また補正はクレームされた発明を他の既存の装置から区別するために追加されたものであると判断した。

CAFCは、地方裁判所はこれらの状況に基づき審査経過禁反言を推断すべきであったと理由付けた。

さらに、CAFCは、最高裁判例に基づき、特許出願人が他の解釈を立証しない場合に、限定要素を追加する補正は特許性に関する実質的理由があるものと推定されると述べた。

ここでミリポアは、範囲を狭める補正を特許性とは関係のない目的に基づき行ったことを立証しておらず、許容される3つの例外のうちの1つにより推定に対し反論することもしなかった。CAFCは審査経過禁反言によりミリポアの均等論に基づく侵害の主張は除外されるべきであったと結論付けた。したがって、CAFCは地方裁判所の略式判決を支持した。

この判決のポイント

この判決は、先行技術を回避する目的で補正が行われたことが明らかではない場合であっても、特許性に関する補正によって追加された限定に審査経過禁反言の推定があることを示した。特許権者がこの推定に反論できなかった場合、特許権者は均等論に基づくクレーム侵害の主張を維持することは困難である。

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