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月刊The Lawyers 2014年11月号(第180回)

3. buySAFE, Inc. 対 Google, Inc. 事件

No. 13-1575 (September 3, 2014)

- Alice判決を確認したビジネスモデルに関する否定的な判決 -

バイセイフ(buySAFE, Inc.)は、オンライン取引の履行を保証する方法、およびその方法の実行指示を符号化したコンピュータ可読媒体に関する米国特許第7,644,019号の特許権者である。

具体的には、その特許クレームは(1)安全取引サービスプロバイダが運用するコンピュータが「オンライン商取引」の保証リクエストを受け取り、(2)コンピュータが処理の保証サービスを提供するために、リクエストした当事者を承諾することによりリクエストを処理し、(3)取引が終了すると、コンピュータが「コンピュータ・ネットワーク」を介してその取引に関連付けられた取引保証を提供する方法をクレームしていた。

2011年、バイセイフは、グーグル(Google Inc.)の「Google Trusted Stores」プログラムがいくつかの特許クレームを侵害していると主張し、デラウェア州地方裁判所へ提訴した。裁判所は、米国特許法第101条に基づく特許適格性欠如を理由にクレームは無効であると主張したグーグルの申立てを認める判決を下した。

控訴審においてCAFCは、特許クレームは特許適格性のない主題に関するものであり、無効であるとした地方裁判所の判決を支持した。

まずCAFCは、最高裁による101条の解釈に基づき、自然法則、自然現象、および抽象的概念といった特許性の例外を挙げた。

CAFCは、これら3種類を発明主題から除外する根底の問題は、特許法はこれらの基本的要素を特許で制限して、更なる発見を阻害してはならない点にあると説明した。

さらにCAFCは、最高裁判例に基づくと、自然法則、自然現象、あるいは抽象的概念に関するクレームは、もし、それが争点となる特定の自然法則、自然現象、あるいは抽象的概念が狭い範囲のものであったとしても、特許性が無いと述べた。

CAFCは、最近の最高裁判決である、Alice Corp.対CLS Bank Int'l事件、134 S. Ct. 2347 (2014)、およびMayo Collabora-tive Services対Prometheus Laboratories, Inc.事件、132 S. Ct. 1289 (2012)に基づき、101条の範囲外となるクレームを判断するフレームワークを明確にした。

自然法則、自然現象、または抽象的概念をカバーしようとするクレームは特許適格性がないと述べたのである。これらの不特許事由は、人間が作った製品および工程に関するクレームであっても特許の対象外とすることがありうると述べた。

最高裁判決に基づくと、次のようなクレームは特許適格性がない。(1)自然法則、自然現象、あるいは抽象的概念を対象とした発明、および(2)特許クレームが単純にというより著しく特許適格性のない主題であることが明らかな物理的領域において、クレームにおける他の付加的な要素が特許適格性のない主題に対して新規かつ有用な用途を提供しない発明。

CAFCは争点のクレームに関し、抽象的概念の不特許事由について注目した。分析の第一の部分に関し、CAFCは、最高裁の先判決は、契約上の合意として知られるあるタイプの抽象的概念について判断している。同時に最高裁は、一般的なビジネス方法を特許の保護対象の例外とすることを否定した。

CAFCは、クレームがビジネス方法を記載していても「クレームに十分な追加事項が含まれていれば」クレームに特許適格性が備わるという第2のステップについて判断した。最高裁判例に基づき、CAFCは、一般的なコンピュータを実装することを要件とすることや、特定の技術的環境にアイデアの使用を限定しようとする試みのどちらもそれ自体ではクレームに特許適格性を持たせることにはならないと述べた。

CAFCは争点の特許発明は、契約上の関係を形成し、長年に亘って取り決められた取引の履行を保証するといった抽象的概念に関するものにすぎないと判断した。

CAFCはさらに、クレーム中にコンピュータを記載することは発明概念を追加したことにはならないと述べ、記載されたコンピュータの機能は、保証のリクエストを一般的に受け取り、保証のあかしを送信することにすぎないと判断した。

コンピュータがネットワークを介して情報を送受信することを単に記載しただけでは、発明主題に特許適格性を持たせるには不十分であると理由付けたのである。また、この特許のクレームがオンライン取引に限定したことは、発明主題に特許適格性を持たせるには不十分であると認定した。

この判決のポイント

バイセイフ事件は、クレームに特許適格性のある発明主題があるか否かに関するCAFCの現在の分析の一例を提示した。この判決では、クレームの特許適格性の有無をCAFCが判断する上で最高裁判決(アリス事件)に沿っている。バイセイフ判決は、コンピュータ・ネットワーク上で行われる既知の金融取引あるいは商取引に関するクレームは、顕著に新しい物理的要素が存在し、それが詳述されていない限り、発明に特許適格性がでないことを示唆している。

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