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月刊The Lawyers 2014年11月号(第180回)

2. Mformation Techs., Inc. 対 Research in Motion Ltd. 事件

No. 13-1123 (August 22, 2014)

- ステップ+ファンクションクレームの解釈で、
クレーム記載の順番を限定要件と判断した判決 -

Mformation Techs., Inc.(以下、MT)は米国特許第6,970,917号の特許権者である。この特許は電子デバイスにアクセスする必要なくデバイスを無線起動して管理することを開示している。代表的なクレーム1は無線デバイスのメールボックスを管理するためのクライアント・サーバの方法を規定し、以下のステップを含む。

無線デバイスからサーバへ前記無線デバイスに関する登録情報を送信するステップと、

− 前記サーバで前記登録情報を検証するステップと、

− 前記無線デバイスからのリクエストなしに、

  − 前記サーバで前記無線デバイスのためのメールボックスを確立するステップと、

  − 前記サーバで前記無線デバイスのためのコマンドを前記メールボックスに格納するステップと、前記無線デバイスと前記サーバとの間のコネクションを確立し、前記サーバから前記無線デバイスへ前記メールボックスのコンテンツを送信し、前記無線デバイスで前記メールボックスのコンテンツをアクセプトすることによって、前記サーバで前記メールボックスから前記無線デバイスへ前記コマンドを配信するステップと、前記無線デバイスで前記コマンドを実行するステップとを有し、前記コネクションは閾値条件に基づいて確立されることを特徴とする。

2008年に、MTは、当該特許権を侵害するとして、Resear-ch in Motion Ltd.(以下、RIM)を米国カリフォルニア北地区地方裁判所に訴えた。陪審員は侵害を認め、MTへの1億4720万ドルの支払いを命じる評決を出した。

地方裁判所は、公判後申立てに関する追加の書面を求める命令を出し、「コネクションを確立する」サブステップは、「メールボックスのコンテンツを送信する」サブステップの前に完了していなければならないと説明した。

RIMは、陪審評決を退けるために法律問題としての判決を求める申立てを新しく提起し、「送信する」サブステップが始まる前にコネクションが完全に確立されることを示す十分な証拠をMTが提示していないと主張した。

地方裁判所はRIMの申立てを認めた。控訴審において、CAFCは非侵害であるという地方裁判所の判決を支持した。

第一に、CAFCは、地方裁判所が評決後にステップの順番の限定を追加する新たなクレーム解釈を取り入れたのは不適切であるというMTの主張を退けた。MTは、「『コネクションが確立されること(wherein the connection is established)』という限定は、送信前にコネクションが開始されることだけを必要とし、送信ステップが始まる前に完全に確立されなければならないことまでは要件としない」と陪審員が解釈したと主張したのである。

クレーム解釈の争点が陪審命令に関連して適切に生じていなかった場合に、法律問題としての判決を求める公判後申立てに関連して、新たな、またはより詳細なクレーム解釈を地方裁判所が採用することは不適切であることを認識しつつも、CAFCは、地方裁判所が評決後にクレーム解釈を変更したわけではないと判断した。

すなわち、CAFCは、地方裁判所が、陪審命令によって既に提示された以前の解釈を明確化したにすぎないと判断したのである。

CAFCは、「wherein」節における「コネクションが確立される(the connection is established)」という文言は、無線デバイスとのコネクションがサーバによって行われなければならないことを意味すると地方裁判所が解釈したと述べた。

CAFCは、地方裁判所の陪審命令により送信のサブステップをその後に検討されたと述べ、よって「コネクションを確立する」サブステップを完了するためにはコネクションが「確立」されていなければならず、これは送信のサブステップが始まる前に起きなければならないと判断した。

CAFCは、地方裁判所が評決後に解釈に内在するものを明確化したことは誤りでないと判断したのである。

第二に、CAFCは、コネクションが送信前に確立されなければならないことをクレームが要件としていると判断した。一般則として、方法クレームにおける各ステップは、通常、当該ステップが順番に実行されることを明記されていなければ、クレームに記載された順番で実行される必要はない。

しかし、CAFCは、論理上または文法上、ステップが記載された順番で実行されることをクレームの文言が必要とするか、明細書が直接にまたは暗黙的にステップの順番を必要としている場合に、クレームはステップの順番を要件とすると判示した。

CAFCは、コネクションが確立されていなくてもよいか、送信前に確立が完了していなくてもよいとすると、このような解釈の下ではコネクションの確立がコマンドの送信に必ず包含されるので、コネクションを確立するサブステップを別個に規定する意味がなくなると理由づけた。

CAFCは、クレームの他のサブステップも内在的に順番を要件とすると述べ、例えば、論理上、メールボックスはそのコンテンツが送信可能になる前に確立されなければならないと判断した。

また、CAFCは、クレームは明細書に記載された単一の実施形態に限定されるわけではないが、明細書中の唯一の実施形態は、送信の開始前にコネクションが確立されなければならないという要件に合致していると述べた。

CAFCは、「確立」のサブステップについての適切な解釈の下では、陪審員が下した侵害という評決を支持するには証拠が不十分であると判断し、法律問題としての判決を認めた地方裁判所を支持した。

なお、MTの専門家の意見は、コネクションを確立する必要がなく、社内サーバ内だけで行われる被疑製品の属性が「コネクションを確立する」サブステップを充足することを検証する際に、送信前にサーバと無線デバイスとの間でコネクションが確立される必要がないという誤解に基づいていた。

この判決のポイント

この事件は、クレームに記載されたステップの順番を裁判所がどのように解釈するかを示す重要先例となる。ステップの実行順番を明示する文言がクレーム中にない場合でも、クレームや明細書においてその文言がどのように用いられるかを検討し、ステップの順番を限定的に解釈するかどうかを判断した。

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