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月刊The Lawyers 2014年11月号(第180回)

1. Abbvie Inc. 対 Mathilda & Terence Kennedy Inst. Of Rheumatology Trust 事件

No. 13-1545 (August 21, 2014)

- 満了日が異なる複数の特許を自明性二重特許(ダブルパテント)の理由で
無効にした判決 -

ケネディ(Mathilda & Terence Kennedy Institute of Rheumatology Trust)は、抗リウマチ薬であるメトトレキサート、及びTNFαというタンパク質に対する抗体の2つの薬剤の投与に関する2件の特許、米国特許第6,270,766号(766特許)及び米国特許第7,846,442号(442特許)の特許権者である。

766特許は2つの薬剤を同時に投与する工程を含む、リウマチ性関節炎の治療方法に関するもので、2012年に特許権の存続期間が満了した。442特許の明細書は766特許の明細書と同一であるが、766特許の優先日より後の優先日を優先権主張しており、特許権は2018年まで存続する。

442特許は、メトトレキサートの単独投与では活動性疾患が完全には抑えられていないリウマチ性関節炎患者の治療方法に関するもので、その方法は補助的に2つの薬剤を投与することを包含する。

アブヴィー(Abbvie Inc.)は、自明型二重特許を理由とする、442特許の無効確認判決を申立てた。地方裁判所は非陪審審理の結果、自明型二重特許の原則に基づき、766特許クレームにより442特許クレームは無効であると認定した。

CAFCは、地裁判決を支持し、米国特許法第101条は、同一発明に対する2つ以上の特許の取得、つまり二重特許を禁止していると述べた。ケネディは、過去にCAFCが自明型二重特許の原則を確立した時代は、特許権の存続期間が登録日から17年間であった時代であり、これは1995年の特許法改正に基づき最先の優先日から20年間に変更されているので、自明型二重特許の原則も変更されるべきであると主張した。ケネディは、存続期間の起算日が登録日ではなく優先日に変更されたことにより、自明型二重特許の規制は不要になったと主張したのである。

CAFCは、自明型二重特許の原則が持つ目的は、発明者が同一発明について1件目の特許権より後に満了日を迎える2件目の特許権を取得することを防ぐことであり、ケネディの主張はこれを無視しているため、受け入れられないと判断した。

CAFCは、この懸念は、1995年の特許法改正後も存続しており、ある発明の自明な変形に関する異なる優先日の別出願が存在する場合に、その発明に対する不当な存続期間の延長が与えられないようにするために、自明型二重特許の原則が存在すると述べた。

よって、CAFCは、同一発明をクレームする異なる満了日を有する2件の特許権が存続するケースにおいて、この原則は引き続き適用されることを明確に示した。

自明型二重特許の検討においてCAFCは、争点のクレームの解釈をまず行い、地裁は766特許における「同時投与」という文言を正しく解釈したと判断した。

ケネディは、明細書中に記載された、メトトレキサートの投与中止後に抗体のみを投与するといった説明において、「同時投与」の文言は一切使用されていないことを理由として、この文言はメトトレキサートの投与中止後の抗体の単体投与を包含していると主張したが、CAFCはこの主張を退けた。

自明型二重特許の検討の第2段階において、CAFCは2つのクレームが特許を受けられる程度に差別化されているかどうかを検討した。CAFCは、この分析は一般的に自明性の規定に従い、後に消滅する特許権が引用特許においてクレームされた発明の自明な変形であれば、その原則に基づき特許は無効であると述べた。

ここで、CAFCは、766特許でクレームされた患者の治療に関する属(genus)クレームと、442特許でクレームされた活動性疾患の治療に関する種(species)クレームとを比較した。

CAFCは、先行技術文献が、当業者であればその活動性疾患の分類(class)の全てを想定可能であるような種クレームを包含する属クレームを記述しているならば、その種クレームは特許権を付与されないと述べた。

そして、CAFCは、当業者は活動性疾患を持つ患者に限定した種を容易に想定できたはずであると判断した。

ケネディは、予期しない結果を発揮するため442特許の種クレームは特許性を有すると主張したが、CAFCはこの主張も退けた。CAFCは、両特許は明細書に記載の同じ実験に基づいており、その実験は、442特許でクレームされた患者の一部に対する実用性を示していたことから、442特許は766特許の既知の実用性をクレームしたに過ぎないと認定したのである。

CAFCは、自明型二重特許の分析において引用特許の明細書を先行技術として使用することはできないが、引用特許の実用性に関する開示は使用できると述べ、全体的な自明性の問題を判断するために先行特許に開示された実用性を審査することと、予期しない実用性を審査することの間に有意な差はないと判断した。

この判決のポイント

この判決は、自明性二重特許の原則が依然として存続していること、特許権者が異なる満了日の同一もしくは類似の発明をクレームした複数の特許権を持っている場合に自明性二重特許の原則がどのように適用されるかを明らかにした。この判決は、侵害被疑者が二重特許による抗弁の可能性を検討するために行う特許調査の一部として、特許権者が所有する、異なる満了日をもつ複数の特許のクレーム範囲を比較することの重要性を教えてくれる。

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