1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2014年
  4. 3. ePlus, Inc. 対 Lawson Software, Inc. 事件

月刊The Lawyers 2014年10月号(第179回)

3. ePlus, Inc. 対 Lawson Software, Inc. 事件

Nos. 2013-1506, -1587 (July 25, 2014)

- 地裁の賠償判決を、控訴審係属中のPTOの特許付与後レビューの結果で取消した判決 -

イープラス(ePlus, Inc.)が提起した侵害訴訟において、特許商標庁(PTO)が査定系再審査により主要な特許クレームを無効にした後、CAFCは、ローソン(Lawson Software, Inc.)に対する差止命令及び1800万ドルの罰金を取り消した。

CAFCは、ローソンが侵害していると判断された特許クレームをPTOが無効にしたので、ローソンのソフトウェアのうちの1つに関する販売の差止命令はもはや適切でないと判断した。CAFCはまた、差止命令に違反したとして地方裁判所がローソンに科した1800万ドルの罰金を、PTOによる特許無効の判断を理由に取り消した。

2009年、イープラスは、電子調達に関する2つの特許である米国特許第6,023,683号(683特許)及び第6,505,172号(172特許)が侵害されたと主張して、ローソンを相手に訴訟を提起した。

2011年1月、陪審員は、イープラスの2つの特許の5つのクレームをローソンが侵害しており、これらの特許のこれらのクレームは無効ではないと判断した。その4ヶ月後、地方裁判所は、終局的差止命令を発行し、侵害と判断された製品をローソンが販売することを禁止すると共に、差止命令の前に販売された製品に対してローソンがアフターサービス及びメンテナンスを行うことを禁止した。

控訴審において、CAFCは、特許の訴えに係る2つのシステムクレームが無効であると判断し、また、2つの方法クレームは侵害されていないと判断した。このことは、ローソンのソフトウェアのうちの1つはもはや侵害ではないということを意味する。しかしながら、CAFCは、ローソンの他のソフトウェアが683特許のクレームの1つを侵害しているという判断を支持した。

差戻審で、地方裁判所は、もはや侵害ではないソフトウェアを差止命令から削除したが、それ以外はそのままにした。地方裁判所はまた、ローソンが2011年の差止命令に違反したと判示し、1800万ドルの代償的な罰金を科した。

ローソンは、侵害にならないようにソフトウェアを再設計したと主張したが、地方裁判所は、そのソフトウェアは以前のバージョンと比べて見かけの上で異なっているに過ぎないと判断した。ローソンは、修正された差止命令、及び差止命令違反の両方に関して、CAFCに控訴した。

控訴審の継続中に、PTOは、683特許の残りのクレームを無効にした。CAFCは、別訴においてPTOの再審査を支持した。本件訴訟において、CAFCは、無効にされた特許に関する差止命令について何らかの法的根拠が存在するか否か、及び、差止命令の違反に対する1800万ドルの罰金を取り消すべきか否か、ということに直面することになった。

CAFCは、最高裁の判例の下では、差止命令の法的根拠が存在しなくなった場合には差止命令を取り消さなければならないと述べた。この原則に基づき、CAFCは、PTOが683特許の残りのクレームを無効にした時にローソンの差止命令の法的根拠は存在しなくなったと判断した。それゆえ、CAFCは、差止命令は取り消されなければならないと判断した。

1800万ドルの罰金については、CAFCは、最高裁の判例法を検討し、違反された命令が無意味になったとしても、刑事上の命令違反であれば処罰すべきであるのに対し、民事上の命令違反は、違反された命令が取り消された時点で処罰不可能であると結論した。

ローソンの違反は民事上の命令違反であるため、CAFCは、1800万ドルの制裁は取り消されなければならないと判断した。CAFCは、ローソンが本件の差止命令に違反したとされた際に差止命令はまだ控訴審に係属していたことに注目した。制裁が科された時点で違反された命令が最終的なものであった場合に命令違反の制裁を取り消せるか否かについては、CAFCは判断を拒否した。

オマリー判事は、差止命令を取り消すことについては多数意見に加わったが、罰金を取り消す決定については反対意見を述べた。オマリー判事は、多数意見の判断の下では、侵害訴訟中に地方裁判所が行うあらゆる決定がPTOによって取消可能であると主張した。

オマリー判事によれば、多数意見の決定は、連邦裁判所は助言的意見を発行しないという憲法上の命令に違反しており、あらゆる将来の命令違反に対する代償的な罰金について不確実性をもたらすものである。

イープラスの判決は、PTOにおける特許付与後のレビュー手続における特許無効の判断によれば、特許権者の訴訟での勝利を完全に打ち消すことができることを示している。この判決は、PTOの手続が査定系再審査であったとしても、PTOにおける特許無効の判断が継続中の地方裁判所の訴訟に影響を与えるであろうことを明らかにした。

命令違反に対する罰金を取り消すというCAFCの判示は、PTOによる判断が並行する地方裁判所の侵害訴訟に対して影響を与えるであろう程度を示している。

この判決のポイント

この判決は、侵害被疑者に差止命令及び命令違反に対する罰金を課した地方裁判所の判決が控訴審に係属している間にPTOの特許付与後のレビュー手続によって特許が無効にされた場合に、地裁の差止命令及び罰金判決を取消した。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2014年
  4. 3. ePlus, Inc. 対 Lawson Software, Inc. 事件

ページ上部へ