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月刊The Lawyers 2014年9月号(第178回)

3. Troy 対 Samson Mfg. Corp 事件

No. 2013-1565 (July 11, 2014)

- PTAB(審判部)の審決取消訴訟を地裁に起すことで
新たな争点及び証拠の提出機会を認めた判決 -

トロイ氏(Stephen P. Troy, Jr.)は、トロイ氏とサムソン(Samson Manufacturing Corp.)との間のインタフェアレンス手続きの間にトロイ氏の米国特許第7,216,451号(以下、451特許)のクレームを審判部がキャンセルしたことは適切であったという地方裁判所の判決に対して控訴した。インタフェアレンス手続きで、審判部は、サムソンの特許出願が451特許よりも前の優先日を有することを考慮して、サムソンを先願者として指名した。

トロイ氏は、優先権の申し立てにおいて、クレームされた発明を2004年2月上旬に実施化し、この発明を2004年2月の数日前に着想したと主張した。サムソンは、優先権の申し立てにおいて、クレームされた発明を2004年2月下旬または3月上旬に実施化し、この申し立てられた発明を2004年上旬に着想したと主張した。

審判部は、証拠を検討した後、2004年2月上旬に現実の実施化を行い、その前に着想したことをトロイ氏が立証できていないと判断した。それゆえ、審判部は451特許のすべてのクレームを取消した。

トロイ氏は米国特許法第146条に基づいて審判部の命令に異議を申し立てた。この規定により、地方裁判所に起こす民事訴訟で審判部のインタフェアレンスの決定に異議を申し立てることが可能である。

地方裁判所での提訴の間に、トロイ氏は先の着想及び2004年2月の現実の実施化の新たな証拠を提出した。トロイ氏はまた、申し立てられた実施化を2004年7月に行っていたことを支持する宣誓供述書及び宣誓書を含む新たな証拠と、サムソンがトロイ氏の営業秘密を不正利用したことの証拠とを提出した。

地方裁判所は、2004年7月の実施化の争点と申し立てられた不正利用の争点とに関するこの新たな証拠は、トロイ氏がこれらの争点を審判部に提起しなかったことを理由として、検討から除外されると判断した。

最終的に、地方裁判所は、トロイ氏が先の着想及び2004年2月の実施化を立証していないと判断し、451特許のすべてのクレームをキャンセルした審判部を支持した。

CAFCでの控訴審において、トロイ氏は、米国特許法第145条の訴えにおける新たな証拠を扱ったKappos対Hyatt事件(132 S. Ct. 1690(2012))の最高裁判決により、審判部に提示されなかった新たな証拠の提出が許されると主張した。

トロイ氏はまた、第145条の手続き(特許性に関する審判部の決定に異議を申し立てるために特許出願人が地方裁判所に民事訴訟を提起することを可能にする手続き)と第146条の手続きとの間に有意な違いは存在しないと主張した。CAFCの裁判官はこれに同意し、地方裁判所の判決を破棄して事件を差し戻した。

CAFCは事件の分析において、審判部に以前に提示されていた争点に関する新たな証拠の提出のみにHyatt事件が適用可能であるというサムソンの主張を却下した。

CAFCは、Hyatt事件を引用して、争点が審判部に提起されたかに係わらず、地方裁判所の訴訟において新たな証拠の承認は許容されると結論付けた。CAFCは、行政法が新たな証拠の許容性を支配するという思想を最高裁が明確に却下したと述べ、「地方裁判所は自身の判断を初めから行わなければならない」とも述べた。

実際に、CAFCは、最高裁によるHyatt事件の決定は、CAFCの先行する判例を覆すと述べた。

サムソンはまた、Hyatt事件は、第145条の手続きの背景における新たな証拠の提出の争点のみを扱っており、本件の第146条の手続きに適用不能であると主張した。

CAFCはこれに同意せず、第145条の手続きにおいて新たな証拠を提出することを許可し、第146条手続きにおいて許可しないことに、法律の文言の根拠が存在しないと判断した。

CAFCはまた、これらの規定の経緯を検討し、両者に差異が存在しない単一の法律項として1800年代に始まったことを見出し、また、審判部の手続きの記録が地方裁判所の民事訴訟の一部である必要がないことを法律の文言が示していると述べた。

CAFCはこの事実を、審判部へ以前に提示されなかった新たな証拠を地方裁判所が検討してもよいという自身の結論の支持材料とした。従って、CAFCは、第145条と第146条との両方の手続きにHyatt事件が適用可能であると判断し、地方裁判所の判決を破棄し、トロイ氏が差し出した新たな証拠を地方裁判所が検討するように命令して事件を差し戻した。

この判決のポイント

この判決は、査定系のPTABの審決取消のための民事訴訟(145条)、 インタフェアレンス・デリベーションのPTABの審決に対する民事訴訟(第146条)において、出訴先に地方裁判所を選べば、新たな証拠提出が可能なことを明確にした。従って、PTABの審決に新たな争点を出して地方裁判所で争うことができる。

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