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月刊The Lawyers 2014年9月号(第178回)

2. AbbVie Deutschland GmbH 対 Janssen Biotech, Inc. 事件

Nos. 2013-1338, -1346 (July 1, 2014)

- 機能的な表現だけのクレームを無効とし、
構造と機能との相関が読めるクレームを推奨した判決 -

この併合訴訟において、アブヴィー(AbbVie Deutschland GmbH & Co.及びその関連会社)は、特許侵害事件に関する地方裁判所の判決に対して控訴し、セントコール(Janssen Biotech, Inc.及びCentocor Biologics, LLC)は、インタフェアレンスに関する地方裁判所の判決に対して控訴した。

インタフェアレンスでは、アブヴィーは、米国特許第6,914,128号(128特許)及び米国特許第7,504,485号(485特許)中の特定のクレームに関する特許権侵害を主張し、セントコールを相手取り提訴した。

インタフェアレンス手続において、セントコールは、アブヴィーの優先権を認めた審判部の決定と128特許の有効性を認めた審判部の判断の再審理を申立てた。セントコールはさらに、特許非侵害及び128特許及び485特許を無効とする宣言的判決を求めて、地方裁判所へ第二の訴訟を提起した。

地方裁判所の裁判において陪審員は、侵害訴訟において主張されたクレームは、記載不備、実施不可能性、及び自明性を理由に無効であると認定した。陪審評決に鑑み、地方裁判所は審判部の非自明性の決定を破棄し、インタフェアレンスにおいて特許無効の判決を下した。

128特許及び485特許において争点となったクレームは、ヒトインターロイキン12(IL|12)に対する完全ヒト中和抗体に関し、このタンパク質は、過剰に生成される場合に乾癬またはリウマチ性関節炎を起こす。2つの特許は共通の記載を有し、同じ仮出願に基づく優先権を主張する。

明細書は、約300個のIL|12抗体のアミノ酸シーケンスを開示し、それらは全て同じ抗体に由来し、類似するアミノ酸シーケンスを有し、さまざまなIL|12結合親和性を有する。争点のクレームは、機能、すなわち結合性質及び中和性質により抗体を定義し、構造により抗体を定義していなかった。

CAFCへの控訴の際、アブヴィーは、審判部の非自明判断を考慮すると、セントコールが128特許の主張クレームに対して無効反論を挙げることは間接的にエストッペルにより妨げられると主張した。

セントコールは、米国特許法第146条下でセントコールにより提起されたインタフェアレンスが継続中であるため、審判部の決定は終局判決ではないことを理由に、エストッペルの適用は不当であると反論した。

CAFCは、エストッペルの点に関しては、審判部の判断は終局判断ではないと、セントコールの主張に同意し、セントコールは、侵害訴訟において、無効反論を挙げることができた。

セントコールは、争点のクレームは、記載不備、実施不可能性、自明性、及び先行発明による先行性のため、無効であると主張した。特に、セントコールは証拠を提示して、特許に記載された抗体は、セントコールの侵害被疑品を含む機能的にクレームされた属を代表するものではないこと、及び1つの抗体に由来する「近縁の、構造的に類似する」種類の抗体に開示が限定されていることを主張した。

アブヴィーは、争点のクレームは、「稀少で取得困難である、抗体の小さい属に限定され、アブヴィーの特許は、クレームの範囲と同じ範囲を示す代表的な数の抗体を記載している」と主張した。

CAFCはアブヴィーの意見を否定し、アブヴィーの特許の記載は不十分であると判断し、陪審員の無効認定を支持し、アブヴィーの特許は単に1種類の構造的に類似する抗体を説明していることおよび、セントコールのIL|12中和抗体との相当な構造的な違いにも関わらず、セントコールの抗体がアブヴィーがクレームした属のうちに入ることに注目した。

CAFCは、クレームした属は構造上多様な抗体を包含し、アブヴィーの特許はそのような構造多様性を反映する程度に代表的な抗体を記載していないと述べた。

CAFCは、「機能的に定義した属クレームは、構造と機能との相関性を属全体に対して立てにくい、または機能的にクレームした属によりどのようなものが含まれるかが予測困難な、特に非常に予測しにくい技術分野において、本質的に記載不備に基づく無効主張に攻撃されやすい」と述べた。

CAFCはさらに、構造と機能との相関性が合理的に立てられる場合、機能的に定義したクレームは記載要件を満たすことを強調した。

アブヴィー判決は、クレームした属に構造的に多様な種が含まれる場合に適切である記載の範囲を理解するために重要な判決である。記載要件に対するCAFCのアプローチは、特許明細書がクレームした属の全範囲を示す代表的な数の種を開示する必要性を示している。

CAFCの判決は、発明の機能的特性を記載する属クレームに適用できると思われる。

この判決のポイント

地方裁判所は、抗体を機能的に定義する特許クレームの実施例を記載不備の理由で無効と認定した。CAFCはその認定を支持した。構造と機能との相関が読めるクレームが有効な特許を取得するために必要である。

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