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月刊The Lawyers 2014年8月号(第177回)

3. Suffolk Technologies LLC 対 AOL Inc. & Google Inc. 事件

No. 2013-1392 (May 27, 2014)

- ウェブサイトに投稿された文書を刊行物相当と認定した判決 -

サフォーク(Suffolk Technologies LLC)は、グーグル(Google Inc.)及びAOL(AOL Inc.)を相手に訴訟を提起し、米国特許第6,081,835号(835特許)の特許権侵害を主張した。

835特許は、ファイルをウェブページに配布するコンピュータサーバのための方法及びシステムに関するものである。サフォークとAOLは2013年1月に和解したが、グーグルは、835特許の優先日の9か月前に大学生が書いた、ユースネット(Usenet)ニュースグループポストへの投稿により、特許発明が新規性を喪失していると主張する反論を行った。

地方裁判所は835特許の争点のクレームに関する解釈を行い、グーグルの主張を認めて特許無効の略式判決を下した。控訴審で、サフォークは、クレーム解釈及び略式判決の認容に関して地方裁判所は誤っていると主張した。CAFCは、地方裁判所の判決を支持した。

控訴審で、CAFCは、争点のクレーム文言の解釈を再検討した。サフォークは、「前記供給されるファイルを生成する」という文言を「前記受信した識別信号に依存して…ファイルを作成または修正する」ことを意味すると、地方裁判所が誤って解釈したと主張した。

サフォークは、要求を行うウェブサイトの内容にファイルの作成または修正が依存することを要件とする解釈が正しいと主張した。サフォークの主張を扱う際に、CAFCは、内的証拠を考慮し、クレーム中の全ステップがウェブページの内容ではなく識別信号を言及していると判断した。

CAFCは更に、明細書が地方裁判所の認定を裏付けていると判断した。その結果、CAFCは、地方裁判所に同意し、地方裁判所のクレーム解釈を支持した。

CAFCはまた、略式判決の認容に関するサフォークの主張も審理した。この争点において、サフォークは、(1)ウェブサイトへの投稿は印刷刊行物ではないので先行技術に該当せず、(2)投稿の正確性及び信頼性に関して公判に付すべき問題があり、(3)サフォーク側の有効性に関する専門家証言は排除されるべきではなく、(4)略式判決は認容されるべきではなかった、と主張した。

投稿文書が刊行物に該当するか否かを判断する際に、CAFCは、投稿文書が公にアクセス可能であるか否かを考慮した。CAFCは、投稿文書が公にアクセス可能であるのは、投稿文書が公に広められた時であるか、または、当業者やその主題に関心のある者が合理的な努力で投稿文書にアクセスできる時である、と説明した。

サフォークは、ユースネットニュースグループの読者は本件主題領域における当業者ではなく、ウェブサイトにおいて争点である特定の投稿(以下、「〈投稿〉」と記載)の場所を把握することはあまりにも困難であるので、ニュースグループのウェブサイトは印刷刊行物の基準を満たしていないと主張した。

この最初の主張に関して、サフォークは、ニュースグループのウェブサイトのユーザーのほとんどは自称初心者であると述べた。

CAFCは、この主張は説得力を欠くと判断した。シシャ・ガンダヴァラム(Shishir Gundavaram)という名前の大学生である〈投稿〉の筆者によれば、当時はコモン・ゲートウェイ・インタフェース(CGI)のトピックに関する科目や本が存在せず、ほとんどの人がユースネットニュースグループのようなフォーラムを利用して独学を行っていた。

CAFCはまた、〈投稿〉の当時、会社や大学のコンピュータを使用する能力を持つ一部の人々だけがニュースグループにアクセスすることができたことに注目した。

次に、CAFCは、〈投稿〉の場所を把握することがあまりにも困難であったというサフォークの2番目の主張を審理した。CAFCは、印刷刊行物が発行時に十分に広まっていれば、印刷刊行物を検索可能である必要は無いと説明した。

CAFCは、業界団体のミーティングにおけるポスターボードの掲示を印刷刊行物に該当する十分な頒布と判断した過去の判例と、本件事実とを比較した。

追加の裏付けとして、CAFCは、関心のある者に対して制約を課さずに記事のコピーを6部配布したことが十分な頒布に該当すると判断した過去のCAFC判決を引用した。

ここで、CAFCは、〈投稿〉に対して少なくとも6件の応答があり、〈投稿〉はニュースグループの他のユーザーによって閲覧されていたであろうと判断した。これらの事実をCAFCの裁判例に適用することで、CAFCは、〈投稿〉が印刷刊行物に該当すると判断した。

CAFCは、サフォークの残りの主張について、証拠により裏付けされておらず、重要事実に関して何の争点も生み出さないものであるため、説得力を欠くと判断した。それゆえ、CAFCは、地方裁判所の特許無効の略式判決を支持した。

サフォークの事件は、公のアクセス可能性が、文書が印刷刊行物に該当して先行技術となるか否かを判断するための基準であるということを、思い出させるものである。

この判決は、先行技術に該当し得る資料を寛容に解釈した最近の裁判例に追随するものである。この判決はまた、インターネットで一般的に入手可能な情報に関しては、記事の形態ではなくても、印刷刊行物の基準を満たす可能性が高いことを示唆している。

この判決のポイント

CAFCは、ニュースグループのウェブサイトへの投稿が、印刷刊行物に相当するので、新規性判断において先行技術になると判断した。この判決は、公のアクセス可能性を、文書が印刷刊行物に相当する先行技術か否かを判断するための基準に置いた。

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