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月刊The Lawyers 2014年8月号(第177回)

2. Limelight Networks, Inc. 対 Akamai Technologies, Inc. 事件

No. 12-786 (June 2, 2014)

- 最高裁がCAFCの判決を破棄し、方法特許の工程の複数当事者による侵害行為と
誘導侵害の要件の再考を求めた判決 -

この侵害訴訟事件において、争点となる米国特許第6,108,703号(703特許)は、格納された電子データをインターネットユーザーへ配信する方法を開示していた。アカマイ(Akamai Technologies, Inc.)は、703特許の独占的実施権者である。ウェブサイトの経営者はアカマイから703特許の特許権について使用許諾を受け、ウェブサイトのコンテンツを個々のユーザーへ配信している。

703特許は、契約当事者のウェブサイトのコンテンツをアカマイのサーバー上にタグ付け、格納する工程を包含し、その工程により、アカマイは自身のサーバーから直接個々のインターネットユーザーに対し、そのコンテンツをより迅速に配信することを可能にしている。

2006年、アカマイはライムライト(Limelight Networks, Inc.)を特許権侵害で提訴した。アカマイは、ライムライトがその顧客に対し、ウェブサイトのコンテンツを各自のページにタグ付けするよう指示し、必要に応じて顧客に対して技術サポートを提供することによって、703特許発明の工程を実施していたと主張した。

地方裁判所はライムライトによる703特許の特許権侵害を認定し、陪審員は4000万ドルの賠償額の支払いを命じた。

地方裁判所の判決に続き、Muniauction, Inc. 対 Thomson Corp.事件, 532 F.3d 1318 (Fed. Cir. 2008)の判決においてCAFCは、複数当事者の行為が方法発明の特許権を共同侵害している場合、ある一人の当事者が、各工程が単一の当事者に帰属せしめるほどにクレームの工程全体を管理もしくは指揮している場合には、その当事者が直接侵害の責任を負うと判示した。

このミュニオークション(Muniauction)事件では、特許方法のいくつかの工程を実施した被告が、当該被告の顧客に対し残りの工程を実施するように指示していた。CAFCは、ミュニオークション事件の被告は特許方法の残りの工程を実施した顧客に対し十分な管理をしたとはいえず、打ち立てた基準から、特許権侵害の責任を負うものではないと認定した。

ミュニオークション事件の判決後、ライムライトは地方裁判所の判決について再審理を申し立てた。地方裁判所はこの申立てを認め、法律問題としての判決として、ライムライトはウェブサイトのコンテンツを「タグ付けする」ことを直接的に指揮または管理してはいなかったので、特許権侵害の責任を負わないと結論付けた。

控訴審においてCAFCは、地方裁判所の判決を支持し、訴訟当事者は、複数の当事者が代理関係にあるか、または契約上、特許方法の工程を実施する義務がある状況下でのみ、直接侵害の責任を負うものであると判示した。

ミュニオークション判例に基づき、CAFCは、ライムライトとその顧客はそのどちらの条件にも当てはまらないことから、ライムライトは侵害の責任を負うものではないと認定した。

CAFCは大法廷での事件の再審理の申請を認め、小法廷判決を破棄した。大法廷は、米国特許法第271条(a)に基づく直接侵害の認定はできなくても、第271条(b)に基づく誘導侵害があるというアカマイの主張を裏付ける証拠が存在すると認定した。

CAFCは、もし当事者が特許方法のいくつかの工程を実施し、他人に対し残りの工程を実施するよう促した場合、直接侵害の責任を問えないが、誘導侵害の責任を問えると判示した。これに続き、ライムライトは裁量上訴を申立て、最高裁はこれを認めた。

しかし、最高裁はCAFCの大法廷判決を破棄し、誘導侵害の責任は直接侵害に基づかなければならないと述べた。最高裁は、CAFCが第271条(a)に基づく直接侵害の責任を認めずに直接侵害があると結論付けたことは誤りであると説示したのである。

最高裁は、特許方法の個々の工程がすべて実施されない限り、侵害は認められないと説明し、さらにミュニオークション事件の判決に従い、最高裁は個々の工程は被告の管理または指示の下で実施されなければならないと説明した。

最高裁は、CAFCが誘導侵害から解明可能な基準を外したことを理由に、CAFCの見解を否定し、CAFCのアプローチが、侵害を構成しない誘導行為にまで誘導侵害の責任を負わせかねないものであるとの懸念を表明した。

CAFCのフレームワークの下では、誘導侵害の責任は直接侵害の責任とは完全に別の争点となり、現実の特許権侵害が存在しない場合でも特許権侵害の責任が生ずる可能性がある、とCAFCは説明した。

最高裁はさらに、CAFCの見解に対するアカマイの抗弁について述べた。アカマイは当初、特許法は不法行為の原則を背景に制定されたものであるから、裁判所は第三者を通して(例えその第三者には責任が無かったとしても)他人に損害を与えた被告の責任を負わせる不法行為の原則に従うべきであると主張していた。

しかしながら、最高裁は、訴えられた行為が735特許の保護された権利を侵害していないことから、この主張はここでは該当しないと判断した。

第二に、アカマイは、両当事者が罪の要件の全てを分け合っているならば両者ともに有罪が成立するという犯罪幇助に関する連邦法の適用を裁判所に要求した。最高裁は、議会の法律制定の意図に着目し、特許権侵害責任に関する法律の制定時に、議会が犯罪幇助の法律を念頭に置いていたとは思えないと述べた。よって、最高裁はアカマイの主張を却下した。

最高裁はさらに、審理すべき問題は誘導侵害の争点に限定されており、ミュニオークション判決は第271条(a)に基づく直接侵害の責任に関するものであることから、ミュニオークション判決の本案を再考することを拒絶した。最高裁は事件を差し戻し、これによりCAFCはミュニオークション判決を再考する機会を持つと述べた。

ライムライト判決は方法特許の特許権侵害を判断する上で重要である。本判決はCAFCによる誘導侵害に関する拡張的アプローチを否定し、直接侵害なしで誘導侵害を認定することを排除した。またこの判決は、第271条(a)に基づく直接侵害における共同侵害の問題にも再度焦点を当て、CAFCがミュニオークション判決を再考するかどうかという問題も提起した。方法特許の工程を複数の当事者が実施した場合の直接侵害の責任について、再定義される可能性がある。

この判決のポイント

最高裁は、直接侵害の認定なしに誘導侵害を認定したCAFC大法廷判決を破棄し、審理を差し戻した。最高裁は、方法特許を構成するすべての工程が実施されない限り侵害は成立せず、さらに、ミュニオークション事件の判決に従い、各工程は単一の当事者の管理または指揮の下で実施されなければならないと説明した。この判決により、複数当事者による侵害行為の認定はさらに困難になると思われるが、最高裁が審理を差し戻したことにより、CAFCによる第271条(a)に基づく直接侵害の要件の再審理の結果が重要となる。

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