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月刊The Lawyers 2014年7月号(第176回)

2. InTouch Technologies, Inc. 対 VGo Communications, Inc. 事件

No. 2013-1201 (May 9, 2014)

- 文献の組合せによる自明性の理由、動機付けの立証に専門家の証言を求めた判決 -

インタッチ(InTouch Techno-logies, Inc.)とVGo(VGo Communications, Inc.)の両社は、遠隔テレプレゼンス・ロボットシステムを製造する。遠隔テレプレゼンス・ロボットシステムとは、遠隔コンピュータ端末を介してロボットを操作することによって、医師が実際に患者のもとに行かなくても患者を往診することを可能にするシステムである。

インタッチは、米国特許第6,346,962号(962特許)、米国特許第6,925,357号(357特許)、及び米国特許第7,593,030号(030特許)に関する特許権侵害を理由にVGoを提訴した。

これらの特許は一般的に、テレプレゼンス技術に関し、特にカメラの移動、ロボットの調停制御、及び以前に拒否したユーザにロボットが利用可能になったことを通知するコールバックメカニズムに関する。

5日間の公判の結果、陪審員はVGoに有利な評決を下し、対象特許全てに関する非侵害を認定し、かつ357特許の請求項79及び030特許の請求項1については、発明時の当業者にとって自明であり、特許は無効であると認定した。

その後インタッチは、地方裁判所に、非侵害及び無効認定の両方ついて、法律問題としての判決または再審理の申立てをした。地方裁判所は、陪審評決を裏付ける実質的証拠があると認定し、インタッチの申立てを却下した。インタッチは、再審理を正当化するために十分な不利益に関して証拠となる判決による立証をしなかった。

控訴審において、CAFCは、3つの特許に関する非侵害の判決を支持したが、357特許及び030特許の無効認定を破棄した。CAFCは、(1)3つの争点となるクレーム文言の解釈、(2)非侵害の評決を裏付ける実質的証拠の有無、(3)無効評決を裏付ける実質的証拠の有無、及び(4)再審理の必要性を検討した。

クレーム解釈に関して、両当事者は控訴審において3つのクレーム文言の解釈について争った。インタッチは、3つの文言に関する地裁の解釈は不適切であると主張した。しかしCAFCは、始めの2つの文言に関しては、地裁の解釈に誤りはないと認定した。

3つ目の文言に関しては、地裁は「コールバックメカニズム」という文言を、「以前、特定のモバイルロボットに対するアクセスが拒否された特定のユーザに、同ロボットが今アクセス可能であるとのメッセージを送信するデバイス」と解釈した。

CAFCは概ね地裁判決に同意したが、クレーム文言は、他のユーザがコールバックメッセージを受信することを除外しないと判断した。よって、CAFCは、「コールバックメカニズム」の文言を、「以前、特定のモバイルロボットに対するアクセスが拒否された特定のユーザまたは複数のユーザに、同ロボットが今アクセス可能であるとのメッセージを送信するデバイス」と解釈した。

なお、CAFCは、この変更した解釈は、非侵害の判決に実質的に影響するものではないと判断した。

非侵害の点に関して、CAFCは裁判記録を検討し、文言上または均等論のいずれにおいても、1つ以上のクレームの限定事項を具備しないという証拠により、それぞれの特許に対する陪審評決を裏付ける実質的証拠があったと結論付けた。

特にCAFCは、VGoのテレプレゼンス・ロボットシステムには、クレームの限定事項を具備しないと認定した十分な専門家証言があったことに注目した。専門家証言には、あるクレーム要件を満たすのが不可能であることを示した侵害被疑品であるVGoのロボットシステムのデモンストレーションが含まれていた。

特許無効の点に関して、CAFCは、裁判記録は自明性の認定の裏付けには不十分であると結論付けた。CAFCによると、無効の評決の裏付けにVGoが拠った専門家証言は、(1)主張した先行文献を組み合わせる理由または動機を十分に示していない、(2)関連するタイムフレームに着目していない、及び(3)非自明性の証拠となる可能性のあるものを考慮していないという点であった。

VGoの専門家は、文献を、シンプルなジグソーパズルの個々のピースのように説明したが、発明時に当業者がどのような理由または動機でそのピースを合わせたかを説明していなかった。

VGoの専門家が挙げた、2つの先行技術文献を組み合わせた1つの理由は、単純に、1つの文献がインターネットを介する操作について記載していたからであり、これらのロボットはインターネットを介して操作することから、2つの文献を組み合わせることは適切である、というものであった。CAFCはこの引例を組み合わせる理由は不十分であると判断した。CAFCは、VGoの専門家は、その代わりに3つの先行技術文献を組み合わせるために357特許に依拠したと判示した。

なお、自明性に関する証言において、VGoは非自明性に関する客観的証拠となる可能性のあるものを考慮しかね、VGoはこの点を否定しなかった。よって、CAFCは、357特許の請求項79及び030特許の請求項1に対する無効認定を破棄した。

CAFCはさらに、地裁がVGoの外部顧問による法的助言を不適切に認めたことにより、インタッチに著しく不利益を与えたというインタッチの主張を拒絶した。CAFCは、そのような証言が不適切であることは認めたが、そのような証言は侵害には無関係であるとの説示が陪審員に対して行われていたので、陪審評決はその誤りには影響されていないと判断した。

インタッチはさらに、以前に非開示であった先行技術に関する証言を認めたことの誤りも主張したが、CAFCは、無効判決の破棄を命じていることに鑑み、この点は重要ではないと判断した。

この判決のポイント

この判決は、第103条に基づく自明性による特許無効の主張での複数の文献を組み合わせる理由と動機付けに関する専門家証言を含む十分な立証が必要なことを明らかにした。したがって、侵害被疑者は、特許クレームの自明性の認定を裏付けるために、発明当時の当業者が文献を組み合わせる具体的な理由を示す詳細な専門家証言と、明確な分析を提示しなければならない。

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