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月刊The Lawyers 2014年7月号(第176回)

1. Octane Fitness, LLC 対 ICON Health & Fitness, Inc. 事件

最高裁事件番号 No. 12-1184 (April 29, 2014)

- 弁護士費用の支払請求の立証基準を軽減した最高裁判決 -

アイコン(ICON Health & Fitness, Inc.)は、オクテイン(Octane Fitness, LLC)のエリプティカルマシーンがアイコンの米国特許第6,019,710号(710特許)のクレームの幾つかを侵害していると主張し提訴した。

地方裁判所はオクテインによる非侵害の略式判決の申立てを認めたが、Brooks Furniture Mfg., Inc.対Dutailer Int’l, Inc.事件, 393 F. 3d 1378 (Fed. Cir. 2005)においてCAFCが定めた基準に基づく例外的事件ではないと認定し、オクテインによる例外的事件の申立てについては退けた。

Brooks Furniture事件においてCAFCは、例えば故意侵害、詐欺行為、あるいは特許取得における不正行為、争訟における不正行為、訴権乱用または不当な裁判、連邦民事訴訟規則第11条違反行為、あるいはその他の法律違反、といった訴訟の争点に関連する重大な不適切な行為があった場合に限り、第285条に基づき事件は例外的事件となると判示した。

訴訟または特許取得における不正行為が無い場合、(1)分別ある訴訟当事者であれば勝訴するとは思わないような客観的根拠のない訴訟であり、また、(2)原告が実際にその訴訟に客観的根拠がないことを知りながら、主観的に不誠実に訴訟を提起した場合に、CAFCの基準に基づき敗訴側に弁護士費用が課される。

CAFCの基準では、例外的事件の立証には明確かつ説得力ある証拠を要する。

オクテインの弁護士費用の申立て却下の際、地方裁判所は、アイコンの侵害の主張は、つまらぬことでも客観的根拠がないことでもなく、しかも主観的に不誠実でもないと説明した。

アイコンは非侵害認定について上訴し、オクテインは地方裁判所が第285条に基づく例外的事件の認定を拒絶する際に、過度に厳格な基準を適用したと主張し、弁護士費用の支払要求を退けた地裁判決について交差上訴した。CAFCは地方裁判所の両方の判決を追認した。

しかし、最高裁判所は弁護士費用支払却下に関する裁量上訴の申立てを認め、CAFC判決を破棄した。最高裁は、例外的事件とは単純に、訴訟当事者の訴訟における立場の実質的優位度や、訴訟提起の理不尽さが、他の事件と比較して突出している場合に該当すると判示した。

最高裁は、地方裁判所の裁量により、ケースバイケースで例外的事件であるか否かを判断すべきであると述べた。

CAFCのBrooks Furniture判例の基準は、本件には当てはまらない合衆国憲法修正第1条に規定された権利に部分的に基づく狭義な原則を不適切に採用していると最高裁は述べ、CAFCによるBrooks Furniture判例の基準は過度に厳格で制限されているとして拒絶した。

さらに最高裁は、特許訴訟当事者は明確かつ説得力ある証拠により第285条に基づく弁護士費用を受け取る権利を立証しなければならないというCAFCの定めた要件を拒絶した。

制定法は何ら高度な立証基準を要件としておらず、他の同様な訴訟費用負担の転嫁に関する制定法もそのような要件をもたないと最高裁は判示した。したがって、立証責任の程度に関しては、弁護士費用を受け取る権利に関する証拠の優越の基準を満たせば良いことになる。

オクテイン判決により、勝訴側は、第285条に基づく弁護士費用をより受け取り易くなると考えられる。オクテイン判決は、例外的事件の立証基準を緩和しただけでなく、訴訟当事者が証拠の優位性による例外的事件の立証をするだけでよいことを明らかにしたのである。

この判決により、特許裁判において、地方裁判所の段階でより頻繁に弁護士費用の支払いを求めるケースが増えることになるであろう。そして、利害関係者は、特許侵害訴訟における実質的争点に関する見解を示す上で、この判決により今後、判決の動向が変わる可能性を考慮すべきであろう。

この判決のポイント

最高裁はCAFCが定めた弁護士費用の支払を認める例外的事件の厳格な適用基準(明確かつ説得力ある証拠による立証基準)を拒絶し、訴訟当事者による証拠の優位性による立証を適切な判断基準として示した。この判決で最高裁が地方裁判所の裁量による判断を認めたことにより、今後、地方裁判所の段階での弁護士費用の支払いを求めるケースの増加が予想できる。

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