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月刊The Lawyers 2014年6月号(第175回)

2. Microsoft Corp. 対 DataTern, Inc. 事件

No. 2013-1184 (April 4, 2014)

- 特許権者がサプライヤーの顧客だけを訴えた場合でも、
サプライヤーに確認判決を求める当事者適格を認めた裁判 -

マイクロソフト(Microsoft Corporation)とSAP(SAP AG及びSAP America, Inc.)は、それぞれ、ADO.NET及びBusinessObjectsというタイトルのソフトウェア製品を販売している。この事件の前に、データターン(DataTern, Inc.)は、マイクロソフト及びSAPの顧客(ユーザー)を訴え、顧客のこれらのソフトウェアの使用は米国特許第5,937,402号(402特許)及び第6、101、502号(502特許)を侵害すると主張した。マイクロソフト及びSAP(併せて「被控訴人」)は訴えられていなかったが、両者は非侵害及び無効の確認判決を求める訴えを提起した。

データターンは、この訴えを裁判管轄の欠如を理由に棄却するように申し立て、確認判決の申し立てをサポートする事件や紛争が存在しないと主張した。データターンは、両特許の侵害に関する条件付きの反訴も提起した。

地方裁判所は、データターンの申し立てを拒絶した。クレーム解釈の後に、データターンは非侵害を認め、地方裁判所は略式判決を行った。データターンは、とりわけこの訴えの裁判管轄の欠如が認められなかったことを控訴した。

裁判管轄の問題に関する被控訴人の主張は、被控訴人の顧客に対するデータターンの訴えは顧客が被控訴人の製品を使用したことに基づいており、それゆえ、被控訴人に対する間接侵害の訴えを黙示的に含むことにあった。

CAFCは、サプライヤーの顧客に対して特許権者の侵害の主張がサプライヤーに対する寄与侵害の黙示的な主張となる場合には、特許権者とサプライヤーとの間の紛争が存在していると、過去の判例からも判断されると結論を下した。

CAFCは、データターンが被控訴人の顧客を訴えたという事実のみでは確認判決の申し立ての裁判管轄は生じないが、データターンが被控訴人の顧客に送付した、侵害クレームの「クレームチャート」は裁判管轄をサポートすると判断した。

特に、402特許及び502特許の両方に関するSAPに対する訴えは、SAP自身が提供したユーザガイド及び文書を引用しており、教唆侵害の訴えを示唆している。マイクロソフトの顧客に対する502特許のクレームチャートも、マイクロソフトの文書を引用しているので、同様である。

しかしながら、マイクロソフトの顧客に対する402特許のクレームチャートは、第三者の文書を引用しているのみであり、教唆侵害及び寄与侵害のいずれも示唆していない。地方裁判所は、本件での裁判管轄を判断するに際して、訴訟提起後の様々な事実(例えば、データターンの条件付きの反訴や、データターンが被控訴人に対して訴訟不提起の契約を認めることを拒否したことなど)に依拠した。

CAFCは、地方裁判所が訴訟提起後の事実に依拠したことは不適切であると判断した。しかしながら、CAFCは、ここには無かった裁判管轄を認める方向に影響したであろういくつかの要素(即ち、訴訟の前に長い交渉が存在したことや、特許権者の側にある種の訴訟好きな傾向(certain kinds of litigiousness)が存在したこと)に注目した。

実際、データターンはこれらの特許に関して特に訴訟を好む傾向にあったが、CAFCは、データターンの訴訟戦略は、サプライヤーを訴えることを示唆するものではなく、ユーザだけを訴えるというものであったと判断した。このように、CAFCは、地方裁判所による裁判管轄の判断を部分的に支持し、部分的に覆した。

マイクロソフトの判決は、自分の製品に関して自分の顧客が特許侵害で訴えられたサプライヤーが特許権者を相手に確認判決を求めることができることを明らかにした。CAFCは、顧客が訴えられたという事実だけでは裁判管轄は生じないと判断したが、特許権者が行った主張が、サプライヤーが侵害について教唆又は寄与したということを示唆する場合には、裁判管轄が認められる可能性がある。

この判決のポイント

この判決は、特許権者がサプライヤーの顧客(ユーザー)だけを訴え、また、顧客を訴えることしか計画していない場合であっても、顧客に対する特許権者の主張がサプライヤー側の間接侵害の問題を黙示的に引き起こす場合には、サプライヤーが特許権者に対して非侵害の確認判決を求める訴えを提起できることを明らかにした。

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