1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2014年
  4. 3. Danisco US Inc. 対 Novozymes A/S 事件

月刊The Lawyers 2014年5月号(第174回)

3. Danisco US Inc. 対 Novozymes A/S 事件

No. 2013-1214 (March 11, 2014)

- 特許出願を巡る争いとか過去の訴訟履歴から確認判決を求める事件性を肯定した判決 -

ダニスコ(Danisco US Inc.)事件においてCAFCは、確認判決の管轄権に関して実質的な紛争があるかどうか審理した。ダニスコとノボザイム(Novozymes A/S)は、コーンや他の植物由来原料をエタノールへ転換する際に使用する遺伝子組換酵素である、急速液化デンプン生成物(RSL生成物)の開発・生産をしている競合会社である。

過去15年にわたり、ノボザイムはダニスコを何度も特許権侵害で提訴した。その1つの裁判において、ノボザイムはダニスコの新製品をカバーするクレームを含むように審査中の特許出願におけるクレームを補正し、特許発行日にダニスコを相手取り提訴した。特許は後に、追加クレームの明細書記載要件を欠くことを理由に無効と認定された。

ダニスコは、自社のRSL生成物中の活性成分である酵素(アミノ酸残基E188Pで置き換えた、切断型好熱性細菌(BSG)α|アミラーゼ変異体ポリペプチド)に関する米国特許第8、084、240号(240特許)を所有する。

後に240特許となる特許出願に対しUSPTOが許可通知を発行した直後に、ノボザイムは自社の審査中の特許出願において、E188Pで置き換えたBSGα|アミラーゼ変異体ポリペプチドをクレームに追加する補正をした。

ノボザイムは続いて発明の先行性を争うインターフェアレンスを申請した。審査官は、ダニスコのクレームが、ノボザイムの補正クレームにおける限定事項を示す特定のシーケンスに合致していなかったことを理由に、ノボザイムのインターフェアレンスの申請を却下した。

240特許発行後も引き続き、ノボザイムは、ダニスコの240特許の発明に対する先発明性、および自身の特許における補正クレームが同一の発明主題を包含していると主張した。審査官はノボザイムの主張を却下し、ノボザイムは審査官の決定に対する意見の相違を反映したパブリックコメントをUSPTOへ提出した。

補正クレームを含むノボザイムの出願は、米国特許第8,252,573号(573特許)として特許された。

573特許が発行されると、ダニスコは、RSL生成物は573特許の特許権を侵害しておらず、573特許は無効、あるいはダニスコの240特許はノボザイムの573特許に対し先行している、という確認判決を求めてアイオワ州およびカルフォルニア州北部の地方裁判所へ提訴した。

両社はアイオワでの裁判を取り下げ、ノボザイムはカルフォルニア州裁判所には確認判決行為の事物管轄権がないとして訴訟の却下を申立てた。

地方裁判所はノボザイムの申立てを認め、法律上の争訟性、即ち事件または紛争がないと結論付けて事物管轄権なしと判断し、訴状を却下した。

地方裁判所は、ダニスコが573特許の発行日に、ノボザイムが特許権を権利行使される現実的脅威を抱く前に提訴していることから、ダニスコは、ノボザイムがダニスコに対し573特許を主張することが可能になる前に提訴したと述べた。

控訴審において、CAFCは地方裁判所の判決を破棄し、確認判決の管轄権は、事件の前に被告が権利行使することを要件とはしていないと述べた。そうではなく、仮定の状況における単純意見を越えて、判決により解決可能な、明確で具体的な争点がある場合には管轄権があるとCAFCは判断したのである。

CAFCは、ノボザイムが573特許の出願審査段階で、ダニスコの生成物の活性成分を包含しておりダニスコの240特許は無効であると主張していたことから、この事件には明確な争点があると判断した。

ダニスコは、自身が240特許の正当な権利者であり、その生成物はノボザイムの570特許の特許権を侵害していないという、反対の法的立場をとっていた、と述べた。CAFCはさらに、ノボザイムとダニスコ間の数多くの訴訟履歴を考慮し、この履歴は事物管轄権有りの認定を後押しする要因であったと述べた。

ダニスコ事件は、確認判決申立ての事物管轄権が広範囲であることを示した。この判決は、特許付与前の当事者による行為は、確認判決申立て以前の当事者間の関係と同様に、確認判決の事物管轄権の有無を評価する上で、関連付けて考慮される可能性があることを示した。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、確認判決を求めるために必要な事件性は、裁判により解決可能な明確で具体的な争点があれば成立すると判断した。その争点として、審査段階から出願人が相手方の特許の無効を主張していた事実や、両当事者の長年に亘る多くの訴訟履歴の存在も、大きな判断材料となる。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2014年
  4. 3. Danisco US Inc. 対 Novozymes A/S 事件

ページ上部へ