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月刊The Lawyers 2014年5月号(第174回)

2. Takeda Pharm. Co. Ltd. 対 Zydus Pharms. USA, Inc. 事件

No. 2013-1406 (February 20, 2014)

- 数値限定クレームを限定的に解釈し、数値の記載に警鐘を鳴らした判決 -

武田(Takeda)及び関連会社は、酸逆流性の治療に用いられる薬品Prevacid® SoluTabに関連する複数の特許権を所有する。Prevacid® SoluTabの有効成分は、プロトンポンプ阻害剤のランソプラゾールである。この製品は、プロトンポンプ阻害剤からなり、口腔内で崩壊する錠剤として売られている。崩壊した錠剤は、多数の小さい顆粒に分解して服用される。

武田は、Prevacid® SoluTabに関連する米国特許第6,328,994号(994特許)を所有している。この特許のクレームには、製剤は、崩壊の際に患者が口腔内においてざらつきを感じない程度に小さい顆粒を含む、との記載がある。

2010年に、ザイダス(Zydus)は、Prevacid® SoluTabのジェネリック版の製造認可を求める医薬品簡略承認申請(ANDA)を、米国食品医薬品局(FDA)へ提出した。武田はその申請に基づき特許権侵害訴訟を提起した。武田は侵害訴訟において複数の特許権を主張したが、CAFCでは994特許のクレーム1だけが争点となった。

994特許のクレーム1は、「平均粒径400μm以下である細粒」を含む錠剤を要件としていた。武田は、偏差を±10%含むクレーム解釈を提案した。±10%の偏差は、粒径測定に関する標準的なエラー率である。

ザイダスは、400μmの記載は、粒子サイズに対する正確な限定要件であると主張した。地方裁判所は、武田に同意し、クレームを±10%の偏差を含むように解釈した。

この事件において、侵害の判断は、錠剤を形成する顆粒の粒子サイズをどのように測定するかに深く関係した。製造プロセスにより、製品に含まれる独立粒子の一部が結合し、「アグロメレート」を形成する。

武田は、平均粒径が、このアグロメレートの発生に関わらず、独立粒子それぞれに基づくべきであると主張した。しかし、ザイダスは、製造後のアグロメレート全体のサイズを測定するべきであると主張した。

ザイダスは、製品の崩壊後に患者が感じるざらつきに、アグロメレート全体のサイズが寄与すると主張した。

地方裁判所は、アグロメレートの発生に関わらず、独立粒子それぞれのサイズを測定すべきと、武田の主張に同意し、よってザイダスは994特許のクレーム1を侵害すると判断した。地方裁判所は特許を有効と判断し、ザイダスにジェネリック製品の製造及び販売禁止を命じた。

しかしCAFCは、特許クレームに±10%の偏差を読み込むことは誤りであると認定し、地裁判決を破棄し、クレームは、記載の量が正確な値以外であることを示すような文言、つまり、「約」等の程度を表す表現を含まない点を指摘した。

CAFCはさらに、994特許の明細書にある、400μmを超える場合に、患者は口腔内にざらつきを感じるとの記載を指摘した。CAFCは、994特許の目的がこの課題を解決することであると判断した。

なお、CAFCは、武田が提案した粒子サイズの測定方法、すなわち、アグロメレートではなく各独立粒子を測定する方法を用いたとしても、ザイダスの製品の平均粒径は、412・28μmであり、400μm以下の範囲外であると示した。よって、CAFCは、正しいクレーム解釈によると、ザイダスのジェネリック製品は、994特許のクレーム1を侵害しないと判断した。

CAFCはさらに、ザイダスの無効主張について検討した。ザイダスは、粒子サイズの測定方法の非開示に基づいて、不明瞭性、記載不備、及び実施するために不十分な記載であるとの無効主張をした。

CAFCは、994特許は、粒子サイズ決定の際にデアグロメレーションは必要でないと判断し、侵害については、粒子サイズを正しく測定するには、アグロメレートを測定するのか、または独立粒子を測定するのかを検討する必要はないと判断した。CAFCは、994特許の有効性に関しては、地裁判決を支持し、有効と判断したのである。

武田事件は、特許発明の技術的範囲は主としてクレームの文言に基づくことのリマインダとなる。さらに、この判決は、クレームにおける数値限定の重要性及びこのような数値限定に対する相対的な程度を表す文言を使用する(または使用しない)ことの特許権の保護範囲への影響を示している。

なお、この判決は、特許明細書での測定方法の開示は、侵害問題及び無効問題の際にガイダンスになることを示している。

この判決のポイント

この判決は、特許発明の技術的範囲の決め手となるクレーム、特に数値限定のクレームの記載方法に警鐘を鳴らす判決である。

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