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月刊The Lawyers 2014年5月号(第174回)

1. Lighting Ballast Control LLC対Philips Electronics North America Corp.事件

No. 12-1014, (February 21, 2014)

- CAFCは覆審であり、一審のクレーム解釈を見なおせることを確認した判決 -

この事件でCAFCは、地方裁判所によるクレーム解釈の判決に関する適切な審理基準について大法廷で審理した。CAFCは、その時点で基準となったCybor Corp.対FAS Technologies, Inc. 事件(138 F.3d 1448, Fed. Cir. 1998)(以下、サイバー事件)におけるCAFC判決を再考した。

サイバー事件においてCAFCは、クレーム解釈についての争点は控訴審では覆審(de novo)を取り、最初から審理すると判断した。覆審とは、このような争点を地裁判決に従うことなく解釈が正しいかどうかを新たに審理し直すことを意味する。

この事件の多数意見はサイバー事件の基準を支持し、クレーム解釈は法律問題として覆審で審理されると判断した。

この事件の両当事者及び法定助言者は審理の適切な基準に関して3つの見解を提示した。第一に、LBC(Lighting Ballast Control LLC)は、覆審を採用することは不適切であり、地方裁判所による特許クレームの解釈を控訴審においても尊重すべきであると主張した。

LBCは、クレーム解釈についてCAFCは法律と事実との両方に基づいて判決を下す必要があると説明し、クレーム解釈の判断は専門家証言及び証拠書類の分析を伴いうることを指摘した。結果として、LBCは、クレーム解釈は、覆審基準の対象となるべきではない事実問題として分類されるのが合理的であると主張し、続審基準の下で、地方裁判所による解釈が(侵害及び有効性の判断とともに)維持されるべきであると述べた。

米国特許庁を含む複数の法定助言者による第二の見解は、クレーム解釈は覆審と続審とのハイブリッド基準の下で審理されるべきであるとのことであった。このアプローチを支持する法定助言者は、ハイブリッドな観点によりクレーム解釈の法律面及び事実面を説明できると述べた。

この見解の提案者は、特許、審査経過及び内的証拠の分析を伴う問題は覆審で審理されるが、専門家証言のような外的証拠の分析は明白誤認基準の下で審理されることを示唆した。

第3の見解は、クレーム解釈は法律問題であるのでサイバー事件の覆審基準は合理的であり正しいというものであった。この見解の提案者は、既存の基準によりCAFCがクレーム解釈を確定的に解決することが可能になり、続審基準の結果として生じうる複数の異なる地方裁判所からの多様なクレーム解釈の採用を避けることが可能になると強調した。

CAFCはまず、判例拘束の原理の重要性及び確立した判例を継続することの重要性について言及し、クレーム解釈に対する覆審がサイバー事件において15年前に採用され、何百もの事件において適用されてきたと述べた。

この判例を変えるかどうかを検討する際に、CAFCは裁判所及び議会におけるサイバー事件後の進展を審理し、サイバー事件が機能しないことの証拠があるかを検討した。

CAFCは、事実/法律の区別を審理の基準に組み込むことは、クレーム解釈の控訴に新たなレベルの不確実さをもたらすことになるので、裁判所及び訴訟当事者にかかる負荷を増大させる可能性が高いと判断した。

CAFCは、サイバー事件の判例を変更することに対する説得力のある理由は存在しないと判断し、控訴審において続審基準を採用することによって正しいクレーム解釈がより実現しやすくなることへの説明は何もないと述べた。

CAFCは、クレーム解釈は、国有財産権を確立する法律文書の解釈であり、これらの権利は、ハイブリッドアプローチの下では地方裁判所の判断に拘わらず、全国的な管轄権を有するCAFCによって審理されるべきであると付言した。

しかし、4人のCAFC判事が多数派意見に反対した。これらの判事によれば、特許クレームの解釈では、時として、地方裁判所が事実問題を解決することが必要となりうるとした。反対意見は、判例拘束の原理では覆審基準の維持を正当化しないものである。反対意見を提示した判事は、クレーム解釈に関する事実問題は、明白誤認基準の審理の対象となるべきであると主張した。

この判決のポイント

この判決はCAFCの機関としての歴史における重要な点を示した。CAFCはこの15年間に亘って行ってきたクレーム解釈問題のアプローチを維持し、覆審であることを肯定した。さらに、CAFCは、適切な特許クレームの範囲を決定する自身の権限及び責任を確認した。

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