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月刊The Lawyers 2014年4月号(第173回)

1. Medtronic Inc. 対 Mirowski Family Ventures, LLC 事件

No. 12-1128 (January 22, 2014)

- ライセンシーが特許権者に起こす確認訴訟での侵害の挙証責任が
特許権者にあることを判示した最高裁判決 -

メドトロニック(Medtronic Inc.)事件において、最高裁は、特許のライセンシーである原告が特許非侵害の確認訴訟を提起し、被告が特許権者である場合に、挙証責任が転換されるかについて判断した。

最高裁は、CAFCの判決を破棄し、事件を差し戻し、裁判官の全員一致で、挙証責任は転換されないと判断し、侵害に関する挙証責任は特許権者が負うと判決した。

メドトロニックは、医療機器を設計、生産、販売する会社である。MFV(Mirowski Family Ventu-res, LLC)は、移植可能な心臓シミュレータに関する特許を所有する。

1991年、両社は、特許使用料と引き換えにメドトロニックによるMFVの複数の特許実施に関するライセンス契約を結んだ。また2006年に、紛争解決策として、紛争対象の特許の使用料を第三者へ預託すること(エスクロー勘定)によって、メドトロニックは、MFVによる侵害の通知に対して確認訴訟において無効申立てできるような対策を契約に追加した。契約により、確認訴訟の勝者側が(預託された)使用料を受け取る権利をもつ。

2007年、MFVは、メドトロニックの新製品7点がMFVの特許2件の幾つかのクレームを侵害するとメドトロニックへ通知した。それに対しメドトロニックは、特許使用料をエスクロー勘定へ預託する一方で、製品は特許を侵害しておらず、特許は無効であるとの確認訴訟を提起した。

地方裁判所は、MFVは、被告であるにもかかわらず、侵害を主張した当事者として、その侵害を立証する責任をもつと判断した。

控訴審において、CAFCは、地裁判決を覆し、この場合は、確認訴訟の原告であるメドトロニックに挙証責任があると判断し、特許権者が確認訴訟の被告である場合、そしてライセンス契約中であるため、特許権者の侵害反訴の機会が除外されている場合には、挙証責任は転換されるべきだと判断した。しかし、最高裁は、CAFCのこの判決を破棄し事件を差し戻した。

最高裁は、確立した判例法に由来する3つの提案に基づいて判断し、まず、特許侵害の挙証責任は、一般的に特許権者にあることを認め、次に、宣言的確認判決法は、手続き上のメカニズムであって、当事者の実体的な権利を変えるものではないと指摘した。

最後に、最高裁は、挙証責任は、クレームに対する本質的な側面であるとした。この3つの提案を考慮し最高裁は、ライセンシーによる確認訴訟においても侵害の挙証責任は特許権者が負うと判断した。

なお、最高裁は、現実的な観点からもこの結論は支持される理由として、訴訟のタイプによって挙証責任を転換することは、訴訟終結後の特許権の権利範囲を不確かにする可能性があることを説明した。

そこで最高裁は、あるシナリオを挙げた。被疑侵害者が、証拠不十分なために、非侵害を立証することができず、確認訴訟に負けたとする。この場合、被疑侵害者は、その被疑侵害行為を続けるとしたら、特許権者は侵害訴訟を提起せざるを得ない。特許権者がそのような訴訟を提起した場合、証拠不十分なために、非侵害を立証できない可能性がある。最高裁は、両当事者が侵害に関して敗訴する状況は、特許保護範囲及び許容使用範囲を不確かにすると示したのである。

このような結果は、当事者の法的権利を直ちに、そして決定的に決める、確認訴訟の目的を妨害する。

最高裁は、公共の利益の面に関しても、この結論が支持されることを示した。公共の利益に関しては、特許独占を法的な範囲内に維持する、よく機能する特許システムが望ましい。

最高裁は、多くの場合は、特許の範囲を法廷で争い、特許権者が特許の範囲を超えて使用料を取ることを防ぐ、十分な経済的なインセンティブを持つ者はライセンシー以外にいない可能性があることに留意した。

CAFCの判決は、メドトロニックのライセンシーとして確認判決を求める権利に大きな障壁になる可能性があった。最高裁は、そのような障壁を立てる必要はないと判断し、挙証責任を特許権者に持たせる通常のルールに背く必要もないと判断したのである。

メドトロニック判決は、侵害の挙証責任は特許権者が負うという、明確なルールを確立した。この判決は、確認判決を求めたメドトロニックの戦略は、同様な状況にあるライセンシーにとっては良い選択肢であったことを示唆する。

そして、特許のライセンス契約を結ぶ際に、各当事者の権利についてより明示的な記載を検討することが望ましい。特に、ライセンシーは、ライセンスを受けた特許の無効を申立てしても、ライセンスに有害な影響がないかを明確にすることが望ましい。

この判決のポイント

この事件において最高裁は、CAFCの判決を破棄し、原告が争点の特許のライセンシーであって、かつ特許非侵害の確認訴訟を提起した場合でも、侵害の立証は被告である特許権者の責任であることを判示した。

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