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月刊The Lawyers 2014年3月号(第172回)

3. Kilopass Technology, Inc. 対 Sidense Corporation 事件

No. 2013-1193 (December 26, 2013)

- 悪徳な訴訟を起こした者に弁護士費用を負担させる新基準を提示した判決 -

この事件で、CAFCは、米国特許法第285条の下で侵害被疑者が求めた弁護士費用を認めなかったカリフォルニア州北地区地方裁判所の判決を破棄し、地方裁判所の判決が誤った法規範に基づいていたと述べて、この事件を再審理のために差し戻した。

キロパス(Kilopass Technolo-gy)の特許はトランジスタで構成されたメモリセルを対象とする。メモリセルは情報を記憶するためにトランジスタを用いる。キロパスとサイデンス(Sidense Corporation)は組み込み不揮発性メモリ(NVM)市場における競合他社である。NVMメモリは、電力供給が停止された場合でも情報を保持できるメモリデバイスで構成される。

キロパスは1・5テラNVMメモリ技術を設計するために用いられる技術を販売する。サイデンスは競合となる1テラヒューズ製品を有し、組み込みメモリセル用に当該製品の設計及び技術を自身の顧客にライセンス許諾する。

地方裁判所での訴訟におけるサイデンスの主張によれば、キロパスはサイデンスが自身のメモリセルを設計変更したことを知らされていたのにもかかわらず侵害訴訟を開始した。サイデンスはまた、キロパスが係属中の再審査請求で行ったものとは矛盾するクレーム解釈の主張を侵害訴訟で行ったと主張した。

地方裁判所は、サイデンスによる非侵害の略式判決を求める申し立てを認めた。続いて、サイデンスは米国特許法第285条に従って弁護士費用の裁定を求める申し立てを地方裁判所に提出した。

地方裁判所は、キロパスが主観的悪意をもって訴訟を行い、維持したことの確信的証拠による立証責任をサイデンスが果たしていないことに基づいて、この申し立てを却下した。

控訴審において、サイデンスは、弁護士費用の裁定の証拠の規範は、主観的悪意の別個の立証が要求されないように修正されるべきであると主張した。

CAFCは、起訴または告訴に不正行為がない限り、弁護士費用の裁定の「例外的な」事件認定は、主観的悪意があることと、訴訟が客観的に事実無根であることとの立証が必要であると述べた。

また、CAFCはこの規範を変更することのサイデンスによる提案の採用を拒否し、この問題はOctane Fitness, LLC対Icon Health & Fitness, Inc 事件において最高裁判所が現在審理中であると述べた。

しかし、CAFCは、キロパスの請求が事実無根であることをキロパスが実際に知っていたことをサイデンスに立証するように地方裁判所が要求したか不明確であると述べた。これに基づいて、CAFCは、弁護士費用の裁定を否定した地方裁判所の判決を棄却し、すべての状況を考慮してキロパスが悪意を有していたかを検討するように命じて地方裁判所に事件を差し戻した。

CAFCは、地方裁判所への助言として、客観的に事実無根であることだけで、弁護士費用の審理における悪意の推定が支持されうると述べた。

レーダー裁判長は、合議体の意見に賛成し、弁護士費用の裁定に適切な規範について自身の意見を別に記述した。レーダー裁判長はBrooks Furniture Manufacturing対Dutailier, Inc.事件(393 F.3d 1378 (Fed. Cir. 2005))におけるCAFCの判例が、訴訟及び特許権の保護における不正行為の不存在の制裁を保証するために主観的悪意と客観的事実無根との両方を要求することによって判断の裁量を制限したと述べた。

また、レーダー裁判長は、この判例により、費用が裁定されるべきかを評価する権限を裁判官に与えるという以前の法理が変更されたと主張した。レーダー裁判長の見解では、すべての状況に基づいて甚だしい不公正を防ぐ必要がある場合に地方裁判所は費用を転嫁してもよいという規則に戻るべきであると述べた。

この判決のポイント

この事件は、弁護士費用の裁定を許可するかどうかの判定に関してCAFCによる発展的アプローチを示している。この事件から、最高裁判所がOctane Fitness事件における弁護士費用の裁定のCAFCによる現在の基準を今年後半に変更することを、CAFCが確信していることがうかがえる。この事件はまた、主観的悪意要件から遠ざかる動向を示唆し、CAFCが大きな裁量を持てる基準を採用するのに前向きであることを示唆する。

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