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月刊The Lawyers 2014年3月号(第172回)

1. Suprema, Inc. 対 International Trade Commission 事件

No. 2012-1170 (December 13, 2013)

- 輸入後に発生する間接侵害問題に関税法337条を適用したITCの決定を否定した判決 -

サプレマ(Suprema, Inc.)とメンタリクス(Mentalix, Inc.)は、米国特許第7,203,344号(344特許)に関し、両社の関税法第337条違反を認定したITCの最終決定、および米国特許第5,900,993号(993特許)に関し、サプレマの同337条違反を認定したITCの最終決定に対し控訴した。

クロスマッチ(Cross Match Technologies, Inc.)は、米国特許第7,277,562号(562特許)の、サプレマとメンタリクスによる第337条違反無しのITCの最終決定に対し控訴した。CAFCは、344特許に関するITCの決定を破棄して差し戻し、562特許および933特許に関するITCの決定を支持した。

344特許および562特許は、指紋の撮像および画像処理技術の実装に関する方法特許である。第三の993特許は、生体測定対象の画像形成用光学系の装置クレームを含んでいた。

344特許は、形状と範囲から指紋画像を検出し、その検出された形状と範囲に基づき指紋の属性を判断する光学走査装置で用いる方法をクレームしている。ITCは、メンタリクスが自社のソフトウェアをサプレマが輸入したスキャナに搭載して使用することにより、344特許の方法クレーム19を直接侵害したと認定し、サプレマはその侵害を誘引したと認定した。

ITCはサプレマが、(1)意図的に344特許を無視して、(2)メンタリクスの侵害しそうな行為から目をそらし、クロスマッチの製品を研究しており、(3)積極的にメンタリクスの侵害行為を促した、と認定した。したがって、サプレマは米国特許法第271条(b)に基づく侵害を誘引し、その誘引行為に関税法337条違反を認定した。

控訴審においてサプレマは、輸入した時点でサプレマの製品は344特許を直接侵害していないので、侵害品を輸入していないと主張した。サプレマは、メンタリクスが国内で開発したソフトウェアをその製品に搭載した時点で侵害が生じると主張した。

CAFCはITCの排除命令の発令権限について審理し、337条に基づきITCの権限は、製品が輸入時点で特許侵害していたか否かに注目しており、輸入品に関する両当事者の目的は関係ない、と判断し、さらに、誘引行為は誘引された侵害行為に先行するが、特許法第271条(b)に基づく誘引は直接侵害が発生するまで成立しないと認定した。

したがって、根底にある直接侵害行為が輸入後に発生する場合、CAFCは、337条に基づく法的権限の付与は、その行為を禁止する効力をもたないと判示し、さらに344特許の侵害認定を破棄し、停止命令を破棄して344特許に関する排除命令を限定して事件を差し戻した。

562特許は、「正確に撮像する」ための方法をクレームしていた。ITCの調査中にクロスマッチは、「capture」は「処理または格納するためにスキャナによって「(画像を)取得する」ことを意味していると主張した。

行政法判事(ALJ)は、侵害被疑品であるサプレマの製品による特許侵害無しという最初の判断に至る上で、この解釈を採用し依拠した。ALJとITCは、特許クレームでは、「capture」の動作は、印刷品質及び印刷枚刷を決定し検出するまでは実行されないと判断した。

控訴審において、クロスマッチはALJによる「capture」の解釈は誤りであると主張した。特に、クロスマッチは、「処理または格納するためにスキャナが取得する」との記載につき、スキャナがクレームされた「capturing」の全工程の実行を要件とせず、工程にスキャナが含まれることだけを要件とすると主張した。

CAFCはALJおよびITCによる「capture」の解釈および非侵害の認定を支持した。CAFCは、クロスマッチが提案した解釈はクレーム文言および明細書による裏付けがあることから、ALJがその解釈を採用したことは正しいと認定した。

993特許はスリーレンズ・システムを用いて像面湾曲を補正する、生体測定対象の画像形成用光学系をクレームしている。クレーム解釈の争点は「第一レンズユニットの画像側にある第二レンズユニット」というクレーム文言に関するものであった。

クレームされたレンズシステムは、「レンズ以外の要素」と「不等角光学素子」を除外しており、また、993特許の明細書の記述が否定していることに基づき、レンズシステムは「レンズユニット」間の「レンズ以外の要素」を排除している、とサプレマは主張した。

ALJはサプレマの主張を拒絶し、「光学系」はレンズ以外の要素と不等角光学素子を含むことが可能であると判示した。特に、レンズ以外の要素は、それがレンズシステム内に配置されていなければ、「光学系」内に含めることができるとサプレマが認めていた、とALJは指摘した。

ALJはさらに明細書の記述を検討したが、クレーム範囲を明瞭に否定する記述は見つからなかった。ITCはALJの最初の判断を採用し、サプレマが輸入したある製品が993特許のクレームを侵害していると認定した。

控訴審においてCAFCは、実質的証拠による裏付けがあると認定して993特許の直接侵害を認めたITCの決定を支持した。したがってCAFCは、993特許を侵害する2つの光学系に関する排除命令を支持した。

レイナ判事は344特許に関する多数派の結論に対して反対意見を述べた。彼は、輸入時点で装置クレームの全ての構成要件に適合する製品の輸入行為と、製品を輸入して積極的に侵害を誘引し他人にその製品を特許方法の実施に使用することを奨励する行為とを区別すべきでないとの意見を述べた。

レイナ判事は自身の見解の中で、多数派の意見はCAFCが長期に亘って構築した判例法に一致しておらず、国際貿易の実情を見過ごしていると主張した。

サプレマ事件の判決は、輸入された侵害被疑品の侵害のタイミングに争点がある場合の、ITCによる調査の実行可能性に影響を与えた可能性がある。CAFCの判示は、未完成の製品をある状況下で輸入することが、ITCの調査での方法特許の侵害の回避の仕方を提供する可能性を示唆している。利害関係者はITCの調査における方法クレームの間接侵害の主張に対するこの判決の影響を注意深く観察すべきであろう。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、直接侵害の根底の行為が侵害品の輸入後に発生した場合、関税法337条は誘引侵害に対して適用されないと判示して、ITCの決定を破棄した。この判決は、輸入された侵害被疑品の侵害のタイミングに関する争点がある場合のITCによる調査の実行可能性に影響を与えた可能性がある。

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