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月刊The Lawyers 2014年2月号(第171回)

1. Motorola Mobility, LLC 対 Int’l Trade Commission 事件

No. 2012-1535 (December 16, 2013)

- 特許無効の抗弁に、明確かつ説得力のある立証を求めた判決 -

モトローラ(Motorola Mobility, LLC)は、マイクロソフト社の米国特許第6370566号(566特許)を侵害する携帯機器を米国内に輸入・販売したことにより関税法第337条に違反したと認定したITCの決定に対し控訴した。CAFCは、モトローラがクレームの無効理由を示さなかったこと、及びマイクロソフトが「国内産業要件」を満たしていることを立証する実質的証拠がITCの決定を裏付けていることを理由にITCの決定を支持した。

566特許はPIM(Product Information Manager)を搭載した携帯機器をクレームしている。PIMとは、スケジュール、通信、及び他のタスクを管理するアプリケーションである。マイクロソフトのOutlookはPIM型アプリケーションとして有名である。

特許の独立クレームは、装置に格納されたオブジェクトをネット上に格納されたオブジェクトと同期させる「同期コンポーネント」を他の限定要素と共に包含していた。モトローラは侵害を認めたが、クレームの有効性に関しては、発明の時点で新規性がなく当業者にとって自明であったと主張し反論した。

モトローラは、先行技術であるApple Newton MessagePadには同期コンポーネントがすでに含まれていたと主張した。ITCは、ニュートンのマニュアルに記載されているソフトウエアは、携帯機器にインストールされるものではなく、デスクトップコンピュータにインストールされるものであると認定し、モトローラの主張を退けた。

モトローラは先行技術の範囲と内容を詳しく説明しておらず、マイクロソフトの専門家証言による「証拠不十分な推論による、一般論的な供述」に過度に依存したと指摘して、ITCは、モトローラによる発明の自明性の主張も退けた。

ITCは、これらの主張は、566特許のクレームを無効にするために必要な、明確かつ説得力ある証拠のレベルに達していないと理由付けた。

控訴審においてCAFCは、Apple Newtonにより新規性は欠如していないと認定したITCを支持した。証拠に基づいてApple Newtonが「同期コンポーネント」を実際に搭載していたことを「推測することは可能であった」が、CAFCは、モトローラが明確かつ実質的な無効の証拠を提供しなかったと結論付けた。

CAFCはさらに、Apple Newtonの同期機能は「装置が持っている固有なもの」であるので、明確に立証する必要が無かったというモトローラの主張も退けた。モトローラの第一の主張は、566特許が携帯機器上でのコンポーネントの同期を要件としていないように解釈できる、という点であった。

サーバーベースの同期は、クライアントベースの同期とは根本的に異なる、とモトローラが過去に主張していたことを理由に、CAFCはこの主張を拒絶した。

モトローラの第二の主張は、モトローラの専門家証言における「説明なしの単文」に基づいていた。その専門家は、Apple Newtonのマニュアル内に開示されていた同期機能はApple Newtonによるソフトウエアの実行を「必要とする」と証言した。

CAFCは、この証拠は信用するには余りに証拠不十分な推論によるものであり、機器に固有の技術を理由とする新規性欠如は「蓋然性や可能性以上」であることを要件とすると述べた。

CAFCはさらに、クレームされた発明が当業者にとって自明であったことの立証義務をモトローラが果たしていなかったとするITCの認定も支持した。モトローラは、ある先行技術文献により特定のクレームが自明であると主張し意見書を提出していたが、その先行技術の範囲と内容を明示していなかった。代わりにモトローラは、566特許に記述されていた先行技術であるデスクトップベースのPIMに関し、マイクロソフトの専門家が自認したことに依存した。

しかし、ITCは、証拠不十分で推論にすぎない一般的な書面を根拠とするものであるとして、これらの供述書を退けた。CAFCはITCの判断に同意し、説得責任は特許の有効性に反論している当事者側にあると述べた。

モトローラの他の抗弁は、マイクロソフトが関税法の「国内産業要件」のうちの「経済的要件」を満たしていないというものであった。

一般的に関税法第337条は争点となる製品に関する米国内での産業が存在することを立証することを要件としている。「経済的要件」は、特許保護された製品に関し、米国内で実質的に投資がなされていることを立証することにより成立する。

ITCはマイクロソフトが国内産業要件を満たしていたと認定した。ITCは携帯機器のオペレーティングシステムが「経済的要件」を満たしていたと認定した。ITCはオペレーティングシステムが、モトローラが主張したような別個の製品というよりは、携帯機器の一部分であると結論付けた。

CAFCはさらに、マイクロソフトが設備及び装置、労働者雇用及び資本、並びに、研究開発における投資金に関する詳細なリストを提供したと認定した。したがってCAFCはITCの決定を支持した。

モトローラ事件におけるITCの決定は、侵害被疑者は、明確かつ説得力ある証拠により特許の無効理由の立証責任を負うことを教示した。特に自明性の抗弁に依拠する侵害被疑者は、先行技術の範囲及び内容、クレームと先行技術との相違点、及びクレームが先行技術により自明である理由を詳細に説明しなければならない。この決定はさらに、ITCの調査における国内産業要件の「経済的要件」を十分に満たす証拠の種類を明らかにした。

この判決のポイント

この事件は、特許無効の抗弁において、侵害被疑者は明確かつ説得力ある証拠を提出し、無効理由の立証責任を負うことを明らかにした。その証拠から、先行技術の範囲及び内容、クレームと先行技術との相違点、及び自明である理由を詳細に説明しなければならない。

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