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月刊The Lawyers 2014年1月号(第170回)

3. Fresenius USA, Inc. 対 Baxter Int’l, Inc. 事件

Nos. 2012-1334, -1335 (November 5, 2013)

- 再審査手続きで無効となった特許は賠償請求能力を喪失すると判断した判決 -

Fresenius USA, Inc.とFresenius Medical Care Holdings, Inc.(以下、まとめて「フレゼニウス」)は、Baxter International, Inc.およびBaxter Healthcare Corp.(以下、まとめて「バクスター」)を相手取り、血液透析器に関する米国特許第5,247,434号(434特許)は無効であり、特許侵害なしとする確認判決訴訟を申し立てた。

バクスターは特許侵害で反訴した。地方裁判所はバクスターの主張を認め、フレゼニウスは控訴した。控訴審において両者は、クレーム解釈、有効性、および適切な救済について争ったが侵害に関しては争点としていなかった。CAFCは地裁判決を一部支持、一部破棄して、新たな賠償額の争点の判断のために事件を地方裁判所に差し戻した。

訴訟は差戻審において継続中であったが、米国特許商標庁(PTO)は434特許の再審査を完了し、434特許クレームの全てを無効と判断した。

PTOの再審査手続きにおける判断はCAFCにより支持された。一方、差戻し審において、地方裁判所は再度フレゼニウスに対し特許侵害の判決を下した。両者は控訴した。

控訴審において、CAFC合議体の多数派は、再審査手続きにおけるPTOによるクレームの無効判断は、係属中の地方裁判所の侵害訴訟を拘束すると判示した。したがって、特許クレームの全てが再審査手続きにおいて無効とされたので、バクスターはもはやフレゼニウスに対する有効な訴因を持たず、侵害判決と賠償額の裁定は無効であり、継続中の訴訟は無意味であると判断した。

したがって、CAFCは申立てを却下し、地方裁判所に訴訟を棄却するよう指示して差し戻した。

ニューマン判事は合議体の意見書に反対し、CAFCの意見書は、行政機関(PTO)が判決に優先し、合衆国憲法第3条の司法制度による判決を無効にすることを認めるものであると主張し、PTOが後に判断したことが連邦裁判所の判決に優先してはならないと意見を述べた。

次にバクスターは、合議体による再ヒアリングと大法廷による再ヒアリングを合わせて申立てた。CAFCは申立てを却下したが、CAFCの4名の判事(レーダー、オマリー、ニューマン、およびウォラク)は申立ての却下に反対し、ダイク、プロスト両判事は却下に賛成した。

ダイク判事は、PTOによって結果的に無効認定された特許に対する侵害による損害賠償による救済が特許権者に認められるべきであるという反対意見に対する裏付けがないと述べた。ダイク判事は、議会および2011年米国発明法によって最近再確認された見解は、侵害による賠償を受ける特許権者の権利は特許が有効であることに基づき認定されると判断した。

判事はさらに、別の侵害訴訟における争点効の目的のために判決は十分に最終的なものかもしれないが、なお、PTOの判断の影響を受けるべきものであるとし、実質的に最終判決が下され、判決の執行を残すのみとなるまでは、特許の有効性に関する別の判決に裁判が拘束されることになるとの見解を示した。

反対する判事らは、多数派による判決は、特許侵害訴訟の解決において地方裁判所を無力化するものであるとして反対した。判事らは反対意見において、特許侵害有りとする地方裁判所による先の判決をPTOが無効にすることは認められるべきではないと、強く主張した。

特に、フレゼニウスを侵害者と認定した判決の後でフレゼニウスの最後の控訴を否認したことで、過去の侵害判決を最終的なものとすべきであったと主張した。

裁判所はバクスターの侵害による損害賠償を受ける権利を阻害することはできない、と理由付けた。反対意見は、判決によりバクスターに付与された侵害の賠償を受ける権利をPTOが無効にすることを可能にすべきではない、と結論付けた。

バクスターによる再ヒアリング申立ての却下は、PTOと裁判所による判断の相互作用によるCAFCの解釈、および三権分立に関する憲法上の争点も浮き彫りにした。CAFC内での見解が分かれたことから、この争点の最高裁による審理が行われる可能性がある。

当面、フレゼニウス判決は、特許弁護士ならびに利害関係者に対し、潜在的にPTOと地方裁判所の手続きに関わるための重大な指針を示すこととなる。事件に対して最終判決が下されていない限り、地方裁判所における侵害訴訟は、裁判中のPTOの判断に影響を受ける可能性がある。

したがって、侵害被疑者によるPTOに対する再審査請求が増える可能性がある一方で、特許権者は地方裁判所における訴訟の簡素化を望むと思われる。

またこの判決は、新米国特許法(AIA)の下でPTOの拡張された役割をCAFCが評価・チェックする議論の一部と思われる。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、再審査手続でPTOが特許を無効にすれば、その特許権者は裁判所に係属中の事件から損害賠償による救済を受けられなくなると判示した。しかしながら、CAFC の判事の間で見解は割れており、最高裁による判断を要することになると思われる。

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