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月刊The Lawyers 2014年1月号(第170回)

1. Keurig, Inc. 対 Sturm Foods, Inc. 事件

No. 2013-1072 (October 17, 2013)

- 販売済み特許製品の部品販売と使用方法特許の特許権消尽に関する事件 -

スターム(Sturm Foods, Inc.)は、キューリグ(Keurig, Inc.)のコーヒーメーカーに関する2つの特許、米国特許第7,165,488号(488特許)および米国特許第6,606,938号(938特許)に対する非侵害の略式判決を求める申立てをデラウェア州地方裁判所へ提出した。地方裁判所はこの申立てを認める判決を下し、キューリグは控訴した。

地方裁判所は、スタームの主張を認めた略式判決において、特許の方法クレームに関するキューリグの特許権はキューリグによるコーヒーメーカーの販売によって消尽しており、スタームはこの特許権を侵害しないと判示した。

キューリグは1杯用コーヒーメーカーと、このコーヒーメーカーで使用する飲料カートリッジとを製造・販売する。キューリグはコーヒーメーカーと、この使用方法とを権利範囲に含む488特許および938特許を有する。

キューリグの特許方法は概して、装着済みの飲料カートリッジにコーヒーメーカーによって穴をあけるステップと、カートリッジを通して熱湯を流すステップと、結果として生じた液体を取り出すステップとを有する。

スタームはコーヒーメーカーの製造・販売はしていないが、「Grove Square」というブランド名の下でキューリグのコーヒーメーカー用の飲料カートリッジの製造・販売を行っている。

キューリグは、キューリグのコーヒーメーカーにおけるスタームの飲料カートリッジの使用が488特許および938特許に規定される方法クレームを直接的および間接的に侵害するとしてスタームを提訴した。その際、キューリグはスタームに対して装置クレームの権利行使を何もしなかった。

スタームは、これらの主張に対する抗弁として、キューリグが自身のコーヒーメーカーを販売した時にキューリグの特許権は消尽したと主張し、非侵害の略式判決を求める申し立てを行い、地方裁判所は、Quanta Computer, Inc.対LG Electronics, Inc.事件(533 U.S. 617, 2008)での最高裁判決に基づいてスタームの申し立てを支持した。

この事件で最高裁判所は、特許されていない部品が特許クレームのすべての発明的側面を含み、合理的な非侵害用途を有しないならば、当該部品の販売により方法クレームが消尽すると判断した。地方裁判所は、仮にコーヒーメーカーが特許権を侵害しない方法で使用されうるとしても、キューリグが許可して自身のコーヒーメーカーを最初に販売したことによって、キューリグの争点の特許権は消尽すると判断した。キューリグはCAFCに控訴した。

控訴審において、キューリグは、自身のコーヒーメーカーが方法クレームを侵害しない多くの用途に使用できるので自身の特許権は消尽しないと主張した。キューリグはさらに、消尽はクレーム単位に、装置クレームと方法クレームとは別々の分析で裁決されるべきであると主張した。

スタームは、キューリグが自身のコーヒーメーカーを販売したことによりキューリグの特許権が消尽したので、スタームのカートリッジを用いてキューリグのコーヒーメーカーを使用することは侵害を構成しえないと反論した。

CAFCはスタームを支持し、特許権消尽論により特許製品が正当に販売された後は、当該物品へのすべての特許権が終了することを認めた。CAFCはさらに、特許権者は商品の価格を決定し、商品に対する十分な価値を得ているので、条件を付けずに特許装置を販売したことにより、購入者が特許製品を将来に使用することを制御する特許権者の権利は消尽すると述べた。

CAFCは、キューリグが自身の特許されたコーヒーメーカーを、条件を付けずに販売したので、購入者はキューリグからの異議を受けずに任意の方法でこれを使用する自由な権利を取得したと認めた。従って、488特許および938特許の方法クレームの侵害を主張するキューリグの権利は自身のコーヒーメーカーの最初の許可した販売によって消尽していた。

CAFC合議体の多数派は、特許権消尽がクレーム単位に裁決されなければならないというキューリグの主張を却下した。多数派は、裁判所による特許権消尽の法理は、全体として争点の特許権の消尽に着目しているのであり、争点のクレームを個別に着目しているのではないと述べた。

キューリグはスタームに対して方法クレームだけを権利行使したが、CAFCは、キューリグが装置クレームと方法クレームの両方の保護を求めることを決定したので、これらのクレームが特許権消尽のために一緒に判断されることを意味すると判断した。多数派は、このように判断しなければ、特許権消尽を判断するための効率的な枠組を与えるのが困難になるだろうと述べた。

オマリー判事は結論にのみ賛成し、消尽がクレーム単位に評価されるべきでないという多数派の意見に反対し、この部分が傍論とみなされるべきであり、特許クレームは独立に扱われるべきであるので、特許権消尽はクレーム単位に適用されるべきであると主張した。

この判決のポイント

この事件は、特許品の最初の正当な販売により、使用方法を含む当該物品へのすべての特許権が終了するという従来の原理を確認した。特許権者は消尽の問題を回避するために特許品の使用に関して取りうる制約を検討すべきである。さらに、装置および方法をカバーする特許権は全範囲において特許品の適法な販売で消尽すると考えられる。

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