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月刊The Lawyers 2013年12月号(第169回)

2. Intellect Wireless, Inc. 対 HTC Corp. 事件

No. 2012-1658 (October 9, 2013)

- 審査過程での不正行為の疑いのある、誤った供述の「治癒」を巡る判決 -

インテレクト(Intellect Wirel-ess, Inc.)対HTC(HTC Corp.)の事件において、CAFCは、地方裁判所がインテレクトの不衡平行為を認定したことを支持した。

インテレクトは、HTCコーポレーション及びHTCアメリカ(まとめて「HTC」)を訴え、非陪審審理の後、地方裁判所は、発明者であるヘンダーソン氏(Mr. Henderson)の不衡平行為を理由に、本件特許は権利行使不可能であると判断した。

CAFCは、不衡平行為を立証するために明確かつ説得的な証拠によって示さなければならないことは、特許権者が(1)特許性に重大な影響を与える情報について間違った説明を行うか省略するかし、かつ(2)PTOを誤解させるか欺く具体的な意図によりそれを行った、ということであると述べた。

テラセンス(Therasense, Inc.)対ベクトン(Becton, Dickinson & Co.)の事件において述べられた基準の下では、例えば虚偽の宣誓供述書を提出するような言語道断の不正行為の積極的な実行に特許権者が関わった場合に、不正行為が重大な影響を持つ。

審査過程において、ヘンダーソン氏は、先行技術文献を克服するためにPTOに対して陳述書を提出した。

両当事者は、陳述書が「クレーム発明は実際に完成しており、1993年6月のミーティング…においてデモンストレーションが行われた」ということを誤って証言しているということについては、合意した。事実、クレーム発明は、実際には完成していなかった。

最初の陳述書の後、出願代理人は、誤った供述を訂正する修正版の陳述書を提出した。しかしながら、地方裁判所は、元の陳述書における誤った供述が実際に撤回され、具体的にPTOの注意を惹き、または完全に訂正されたという証拠は無いと判断した(修正版の陳述書においても、実際の完成に対する言及が依然として1箇所あった)。

従って、地方裁判所は、誤った供述が不衡平行為に関する重大性の条件に該当すると判断した。

控訴審で、インテレクトは、(1)実際の完成を示そうとする事実を省略した修正版の陳述書を出願代理人が提出し、(2)出願人が法上の完成に依拠しているということを出願代理人が審査官に対して説明し、(3)出願人が(実際のではなく)法上の完成に依拠したということを特許発行後に審査官が確認したので、重大性に関する地方裁判所の判断は明らかに誤っていると主張した。

CAFCは、重大性に関するインテレクトの主張を却下し、ヘンダーソン氏の元の陳述書は紛れもなく誤っており、それゆえ、治癒されない限りは重大性を確立するものであると述べた。

CAFCは、審査過程における間違った説明の訂正は公然と行われなければならず、不実のまたは誤解を招く供述が訂正されたことを審査官に伝えることなく単に正確な事実を提供するだけでは不十分であると述べた。

CAFCは、修正版の陳述書は元の陳述書における実際の完成に対する言及が誤っていたことを明示的に述べてはいないので、修正版の陳述書は不正行為を治癒していないと判断したのである。

インテレクトは、出願代理人が、審査官との電話中に実際の完成に関する「誤った」主張について審査官に知らせたと主張した。インテレクトは更に、クレームが許可された後に審査官が出願代理人に対して、審査官は実際の完成には依拠しなかったことを述べたと主張した。

CAFCは、主張に係る会話につき、文書による裏付けや実証が得られている訳ではないので、これらの主張を却下した。それゆえ、元の陳述書における誤った供述についてPTOも公衆も知らされていないので、不正行為は治癒しなかった。

従って、CAFCは、重大性を認定したことについて地方裁判所に明白な誤りはないと判断した。

不衡平行為の故意要件を扱う際に、インテレクトは、ヘンダーソン氏が記録を訂正しようと試みた事実に鑑みれば、欺く意図があったとの推論は合理的でないと主張した。

CAFCは、この主張を却下し、先行技術による拒絶を克服するために実際の完成に関する捏造した例を含む宣誓供述書を提出したことは、欺く意図に関して強力な推論を生じさせると判断した。

CAFCはまた、ヘンダーソン氏が他の特許の審査過程において実際の完成に関する誤った供述を提出していることからも明らかなように、ヘンダーソン氏の詐欺の手口はパターン化されており、この推論を一層強くするということについて、地方裁判所に同意した。

CAFCは、故意に関する地方裁判所の判断は、このパターン化された詐欺の手口に関する追加の事実が無くても支持可能であると述べた。

インテレクトの事件は、テラセンスの基準の下であってさえも、一定の状況下では依然として不衡平行為が現実的な防御であるということを示した。審査過程において何らかの誤った供述が行われた場合、不正行為かもしれないことを適切に「治癒」させるためには、出願人は、訂正版を提出するだけでなく、そのような誤った供述をPTOに対して明示しなければならない。

この判決はまた、審査官との面接中に行われた口頭での供述は、審査過程の記録の一部とするために、文書化してPTOに提出すべきであるということを、再確認させるものとしての役割も持つ。

この判決のポイント

この判決では、審査過程において何らかの誤った供述が行われた場合、不正行為かもしれないことを適切に「治癒」させるためには、出願人は、単に訂正版を提出するだけでは十分ではない。そのような誤った供述をPTOに対して明示した上で訂正しなければならないことが示された。また、この明示は、口頭で行うだけでは不十分であり、実際に行われたやりとりを裏付けるために文書化してPTOに提出する必要があるとことも示された。

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